少女たちの春【隠し言】私たちの24歳

秋 夕紀

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24歳の花純の隠し事

10 噂を聞いて

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 新学期が始まり、私は担任として新入生を迎えました。今までの授業と部活指導だけの生活と違い、担任の仕事の忙しさに目が回りそうでした。そんな忙しさにかまけて、転任して行った彼とは連絡が途絶えていました。彼も新任校で忙しいのだろうと、そのままにして2週間が経ちました。
 その日は新任の先生方の歓迎会で、新学期早々のお疲れ会でもありました。初めは大人しく座って飲んでいましたが、その内に仲の良いグループが幾つかできていました。私は同僚の女の先生4人と、話し込んでいました。学校の事や生徒の事と話している内に、職員の噂話になりました。
「坂下先生は、交際している男性はいないの?」と養護の先生に突然振られました。臼田先生との事は隠していて、今ここで告白する訳にはいかず、
「ええ、まあ、その内に!」とごまかしました。するともう一人の先生が、
「それなら良かった!てっきり臼田先生と交際しているんだと思ってた。バレー部の副顧問だったから、付き合わされてたんだね。何にもされなかったんだよね!」と意味深な事を言い、他の二人と目配せをしていました。
「えーまあ、臼田先生がどうかしたんですか?」
 私は胸の鼓動が速くなってきて、酔いが急に廻ってきたようでした。
「坂下先生はアンテナが低いから、職員間の事情には疎いんだね。交際してないなら話しても良いよね。」と周りに確認を取っていました。
「あの先生が転任した理由なんだけど、させられたと言った方が正解かな。バレー部で途中退部した女の子がいたでしょ。」
「はい、美沙都みさとちゃんですよね。1月に急に辞めたいって!」
「そう!保健室の私の所に来て悩んでいたから聞いてみると、顧問の先生にエッチな事を言われたり、胸とかお尻に触られたりしたと言うの。私はびっくりして臼田先生に確かめると、当然否定したんだけどね。」と言う養護の先生に続いて、もう一人が後を引き継ぎました。私は固唾かたずを飲んで聞いていました。
「それから、美沙都ちゃんのお母さんが学校に乗り込んできて、事実が明るみになったけど、証拠はないからと公にはせず、転勤をさせられたという事なの。」
 私は目の前が真っ暗になって、気が動転していました。確かに美沙都ちゃんがあの時、私に相談があると言ってきた事がありました。私は忙しさで忘れてしまい、その後退部になったと臼田先生に聞かされた時には、その相談だったのかと気楽に考えていました。
「それに臼田先生は隠していたけど、離婚しているんだよね。それも卒業生の教え子と関係があったらしくて、まあこれは噂で聞いたのだけどね。」
 私は気の遠くなる思いで聞いていましたが、堪えられなくなって、お手洗いに行くと言ってその場を逃れました。「もっと早く教えてくれれば、私は過ちを犯さずに済んだのに」と心の中で呟いていました。しかし、それもこれも、二人の事を隠し続け、誰にも相談しなかった事が悪因であると、自分を攻めるしかありませんでした。どうやって帰って来たのか分かりませんが、気が付くと家に帰っていました。その晩は暗闇の中で一人、彼に対する怒りと自分への嫌悪感で泣き明かしました。
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