少女たちの春【隠し言】私たちの24歳

秋 夕紀

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24歳の花純の隠し事

1 憧れの先輩と

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 高校1年生の時、少しだけ交際していた男子に嫌な思いをさせられて、私の男性に対する不信感に拍車がかかり、警戒心をも抱くようになっていました。大学に入ってからも声を掛けられる事はありましたが、すべて断って恋愛のない2年間を過ごしてきました。好意を持った男性はいない訳ではありませんでしたが、その人には彼女がいて、とても割って入る勇気はありませんでした。
 大学2年生になって、私は教職関係のゼミに入りました。5月の歓迎コンパで、初めてのお酒に酔いつぶれてしまいました。翌朝、見知らぬ部屋のベッドの中で目を覚ました私は、驚いて自分の身体を確認しました。毛布の中の私は下着姿で、辺りを見回すとキッチンに男の影を認めました。
「やっとお目覚めかな?坂上さんがすごい勢いで飲んでたから、心配したよ。」
 男の声に聞き覚えがあって、見るとそこには憧れの先輩の南城なんじょうかおるが立っていました。
「えー、何で?南城先輩がここにいるんですか?」
「何でと言われても、ここは俺の部屋だからね。君が酔いつぶれていたから、俺の部屋へかつぎ込んだんだよ。女の子達は皆帰った後だったから、仕方なくね。」
 あれほど男性に対して警戒心を抱いていた私が、酔って男の部屋で、しかも男のベッドに寝ていた事実に、自分へのいきどおりと恥ずかしさで赤面していました。
「すみませんでした。良かったら、私の服を取ってもらえますか。私は先輩に何かされましたか?それとも私が何かしましたか?」
「何もしてないし、されてないよ。服は君が自分で脱いだんだからね。」
 先輩の追い打ちをかけるような言葉に、立つ瀬がありませんでした。

 彼が作ってくれた朝食を食べ終わる頃には、私は大分落ち着いていました。何もされなかった事を喜ぶべきか、少しだけ落胆している自分もいました。
「南城先輩には、彼女さんがいるんですよね。名前は何でしたっけ?」
「いるよ!学部は違うけど、桐野愛海あいみというのが俺の彼女。堅くて、理屈っぽい所が、何となく坂上さんと似てるな。」
 彼の口振りから、自分に目を向けさせるのは無理だと、私は確信しました。お礼を言って別れ際に、彼が思わぬ事を口にしました。
「そういえば、介抱してる時、君が俺にキスしてきたよ。酔ってて気付いていないみたいだから、一応報告しておくね。」
 私は頭を鈍器で殴られたようなショックを受けました。まさか自分から彼にキスしていたなんて、酒の力を借りての行為とは言え、そんな大胆な行動をした自分が信じられませんでした。私の意識のないファーストキスでした。
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