少女たちの春【隠し言】私たちの24歳

秋 夕紀

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24歳の杏の隠し言

4 過去の恋愛経験を

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 私と夏梅木なつめぎたけるとは、大学4年生の時のゼミで知り合いました。私達は弁護士か検事かの法律家を目指していて、お互いに良き理解者でした。彼には列記とした彼女がいて、私は異性に興味がなく、言わば同士のような関係を保っていました。ゼミの仲間と飲みに行った帰りに、彼の家で飲み直す事もありました。部屋で二人だけになっても、彼は私を女として意識せず、私達は男女の関係にはならなかったのです。
 尊君は大学4年生の11月に予備試験に合格し、司法試験の受験資格を得ていました。5月、7月、10月に1年間かけて行われる予備試験に、現役で合格するのは難しく、現に私は2度失敗していました。そのため、私は大学卒業後に法科大学院に進み、彼は5月の司法試験に初挑戦しましたが不合格でした。

 尊君が2回目の司法試験に臨んだ5月、彼の部屋で慰労会をやりました。私は大学院の2年生で、来年終了したら司法試験を受ける事になっています。
 缶ビールで乾杯してから、アルコールが大分回ってきて、珍しくもお互いの恋愛話になりました。きっかけは、彼の彼女について私が訊いたからです。
「合格発表は9月か、その間は遊べるね。羨ましいよ。彼女とも会えるしね!」
「そうかな?彼女が就職してから、あまり上手く行ってないんだよな。俺は勉強で忙しくて偶にしか会えないし、中途半端な関係が2年続いているから。」
 彼は自分を責めるように語り、彼女に思いをせているようでした。私は話を切り替えるために、彼の過去の恋愛経験について訊いたのです。彼は素直に、高校の時、大学2年の時の初体験、そして今の彼女について一通り語っていました。どうやら彼の恋愛にも、苦い思い出があるようでした。

「さて、今度はあんちゃんの番だよ!」と言われ、私はトイレに立って、話す覚悟を決めました。高2の時の柴嵜しばさき陽介とのキス、京都での初体験について、淡々と語って聞かせました。彼が驚いたのは、私が処女を卒業しているという所でした。
「あっさりと言ったけど、それって彼と初めてしたの?まさか!しかも君から押しかけて行ったの?失礼かもしれないけど、杏ちゃんは処女だと思っていた。」
「本当に失礼だね!処女じゃなくて、お生憎あいにくさま!それから彼とはずっと会わなくて、大学に入った時に訪ねて来た。その時に仕方なくもう1回だけして別れたの。あとは尊君が知っての通り、ずっと空き家のままです。」
 私の話が終わる頃には、彼は酔いつぶれてその場で寝ていました。私が自分の恋愛について話したのは初めてで、思い出しながら語っている内に、寂しい気持ちでいっぱいになりました。寝ている彼を見ていて、自分の気持ちを抑え切れずにキスをしていました。そして気付かれないように部屋を後にしました。
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