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第11話 黄川田肇(21歳)の日記=梅枝七海(19歳)
<6月8日>七海を部屋に招く
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★肇★今日、七海さんが家に来た。女の子と交際経験のない僕は、女子を部屋に呼ぶのをためらったが、彼女は男一人の部屋を訪れる事に何の屈託もなかった。ゲームを教えるのが目的だったが、どう応対すれば良いのか全く見当が付かなかった。
七海さんとはこれまでに映画を観たり、食事をしたりして何度か会っていた。4月からは僕の勤めていた学習塾を紹介し、中学生相手の国語講師として勤めている。僕たちは先輩と後輩の関係であり、友だち関係にあった。彼女には彼氏がいたらしく、別れた経緯について相談された事があった。誤解が誤解を生んで別れる事になったようで、根拠は乏しいが、最後の一線は越えていないと読んでいた。彼女には生娘でいてほしいという願望を、勝手に抱いていた。僕は純潔主義という訳ではないが、結婚する女性には処女を求めていた。周囲の男女が何の疑問も持たずに、恋人とは肉体関係になるのが当然という価値観で行動しているのが理解できなかった。
雨がひどく降る中、彼女はびしょ濡れになってやって来た。着替えのTシャツを貸すと、大き過ぎてワンピースのようで下着が透けて見えた。彼女は気に掛ける風でもなく、コーヒーを飲みながら本棚に関心を示していた。僕が三島由紀夫に傾倒している事から、その作品について語り合った。中でも『潮騒』の純愛を貫き通す姿について、彼女に時代が違うと一蹴された。
ゲームを初めてしばらくすると、彼女は居眠りをし始めた。僕にもたれかかり、無防備な様をさらしていた。僕は落ち着かなかったが、意識をゲームに集中させていた。髪の毛の甘いシャンプーの香りと、かすかに触れる胸の膨らみに、僕の下半身は興奮していた。しかし、いい加減な気持ちで彼女に手を出す事は、僕の信条に反する。彼女にはいずれ、結婚を前提にした交際を申し込むつもりでいる。★★★
肇と七海は時々会って交流を深めていたが、七海の気持ちはあくまでも男友だちの域を出なかった。一方、肇は初めて会ったその日から、彼女を好きな気持ちを変わらずに持ち続けていた。だが、告白する術も知らず、七海を見守っていた。
☆七海☆肇さんの部屋に行ってみたくて、ゲームを口実に押し掛けた。彼は女の子と付き合った事がないと言っていたが、確かに部屋は殺風景で女の気配はなかった。雨でワンピースが濡れてTシャツを借りたが、彼は着替える所をちらっと盗み見ていた。☆☆☆
七海が部屋でまず目に留めたのは、本棚の三島由紀夫コレクションだった。そして、北村透谷の『処女の純潔を論ず』という茶色くなった古本で、純愛だとか純潔だとかを口にする肇の信条を垣間見た気がした。
☆七海☆肇さんと文学の話になって、彼の考え方や信条に偏りがあると思った。特に女性に対して、純潔つまりバージンを求めているのだと分かった。私は高校の時、赤西先輩と純愛について議論した事を思い出したが、今は丸っきり逆の立場にあった。ただ、肇さんの考え方を理解してるがゆえ、こうして二人切りでも安心していた。☆☆☆
七海はゲームに飽きて肇にもたれかかり、Tシャツの裾がめくれ上がっているのも気にせずに居眠りをしていた。肇は彼女のあられもない姿に動揺していたが、一人でゲームに夢中になっている振りをしていた。
☆七海☆彼にもたれて寝てしまい、私のだらしなさをさらけ出してしまった。Tシャツの裾からパンティが見えそうで、彼の腕に胸を押し付けていたようだ。それでも何もなかったかのように振舞っている彼に、性衝動はないのかと心配になった。☆☆☆
肇は七海に対して好意以上の思いを抱いていたが、結婚を視野に入れた恋愛関係を想定していた。純潔を求めるならば、自分もそうしなければと考えていた。
七海さんとはこれまでに映画を観たり、食事をしたりして何度か会っていた。4月からは僕の勤めていた学習塾を紹介し、中学生相手の国語講師として勤めている。僕たちは先輩と後輩の関係であり、友だち関係にあった。彼女には彼氏がいたらしく、別れた経緯について相談された事があった。誤解が誤解を生んで別れる事になったようで、根拠は乏しいが、最後の一線は越えていないと読んでいた。彼女には生娘でいてほしいという願望を、勝手に抱いていた。僕は純潔主義という訳ではないが、結婚する女性には処女を求めていた。周囲の男女が何の疑問も持たずに、恋人とは肉体関係になるのが当然という価値観で行動しているのが理解できなかった。
雨がひどく降る中、彼女はびしょ濡れになってやって来た。着替えのTシャツを貸すと、大き過ぎてワンピースのようで下着が透けて見えた。彼女は気に掛ける風でもなく、コーヒーを飲みながら本棚に関心を示していた。僕が三島由紀夫に傾倒している事から、その作品について語り合った。中でも『潮騒』の純愛を貫き通す姿について、彼女に時代が違うと一蹴された。
ゲームを初めてしばらくすると、彼女は居眠りをし始めた。僕にもたれかかり、無防備な様をさらしていた。僕は落ち着かなかったが、意識をゲームに集中させていた。髪の毛の甘いシャンプーの香りと、かすかに触れる胸の膨らみに、僕の下半身は興奮していた。しかし、いい加減な気持ちで彼女に手を出す事は、僕の信条に反する。彼女にはいずれ、結婚を前提にした交際を申し込むつもりでいる。★★★
肇と七海は時々会って交流を深めていたが、七海の気持ちはあくまでも男友だちの域を出なかった。一方、肇は初めて会ったその日から、彼女を好きな気持ちを変わらずに持ち続けていた。だが、告白する術も知らず、七海を見守っていた。
☆七海☆肇さんの部屋に行ってみたくて、ゲームを口実に押し掛けた。彼は女の子と付き合った事がないと言っていたが、確かに部屋は殺風景で女の気配はなかった。雨でワンピースが濡れてTシャツを借りたが、彼は着替える所をちらっと盗み見ていた。☆☆☆
七海が部屋でまず目に留めたのは、本棚の三島由紀夫コレクションだった。そして、北村透谷の『処女の純潔を論ず』という茶色くなった古本で、純愛だとか純潔だとかを口にする肇の信条を垣間見た気がした。
☆七海☆肇さんと文学の話になって、彼の考え方や信条に偏りがあると思った。特に女性に対して、純潔つまりバージンを求めているのだと分かった。私は高校の時、赤西先輩と純愛について議論した事を思い出したが、今は丸っきり逆の立場にあった。ただ、肇さんの考え方を理解してるがゆえ、こうして二人切りでも安心していた。☆☆☆
七海はゲームに飽きて肇にもたれかかり、Tシャツの裾がめくれ上がっているのも気にせずに居眠りをしていた。肇は彼女のあられもない姿に動揺していたが、一人でゲームに夢中になっている振りをしていた。
☆七海☆彼にもたれて寝てしまい、私のだらしなさをさらけ出してしまった。Tシャツの裾からパンティが見えそうで、彼の腕に胸を押し付けていたようだ。それでも何もなかったかのように振舞っている彼に、性衝動はないのかと心配になった。☆☆☆
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