少女たちの春[第2部]

秋 夕紀

文字の大きさ
上 下
17 / 27
彼女たちの24歳~鴫野芹菜編~

5 仁朗の誠意にほだされて、関係が進展する

しおりを挟む
 仁朗の仕事が休みの日に二人で買物をして、その帰りに芹菜は家に誘った。母親は出掛けていて、夕食を一緒に食べようという事になっていた。
「ねえ、仁朗。私が2年前に言った事覚えてる?」
「ああ、痩せるってことだよね。あと5キロだけど、ここからが大変だよ。」
「よく頑張ったね!これまでの御ほうびをあげるね!」と芹菜は言って、彼に跳び付きキスをした。彼は呆然と立ち尽くし、真っ赤な顔をしていた。
「び、びっくりした!芹菜がキスしてきて…すごく感激!」
「仁朗の私への気持ちは変わらないんだよね。だから、キスしたの。」
 それから彼は頻繁に芹菜の家に来るようになり、二人は母親の前でも平気でべたべたとするようになっていた。
「あなたたち、仲がいいわね。うらやましいわよ。ねえ、仁朗さんが良ければ、この家に住めば良いじゃない。芹菜はまだ学生だから、結婚はまだだけどね。」
 母親がいきなり切り出してきて、二人は動揺していた。
「ママ、何を言い出すのよ。仁朗さんに失礼だよ。」と言うと、
「お母さんと芹菜ちゃんが良ければ、僕は一緒に住みたいです。」と彼は答えていた。自分から言い出せない不甲斐なさはあるが、それが彼の良い所なのかと思う芹菜であった。

 仁朗が引っ越して来た晩、芹菜は彼の部屋にいた。誠意ある態度で接してくれる彼に対して、どうしても話して置かなければならない事があった。
「仁朗さんは私の過去を知っていて、そんなだらしない私が嫌じゃないの?」
「過去は過去でしかないよ。僕はずっと芹菜ちゃんが好きだった。男に誘われて付いて行く芹菜ちゃんは嫌いだったけど、だまされて汚された芹菜ちゃんが可哀そうで、僕しか救えないと思っていた。今こうして僕のことを思ってくれるだけで幸せだし、これからも好きでいてほしいから。」
 彼の優しい言葉に、芹菜は涙をこらえていた。
「こんな汚い私で良いなら、抱いてほしい!私も仁朗さんが欲しい!」
 芹菜が彼に抱き付いてキスを求めると、彼は包み込むように抱いていた。芹菜にとって、24歳にして初めて知った愛される事、愛する事の喜びであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

処理中です...