初めての物語【B面】~First Story~

秋 夕紀

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第3章 初めての動揺

3 火照る心

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 昼食をって寝転んでいると、藤森と梨沙の姿が見えなかった。しばらくしても帰って来ないので、愛海は真斗に問い掛けた。
「ねえ、あの二人どこへ行ったのかな?トイレに行きながら見てくるね。」真斗は関心がなさそうにまだ眠っていた。愛海は一人でトイレまで歩き、辺りをキョロキョロしていると、海の家の陰に見覚えのある色の水着を着た二人を見つけた。声を掛けようと近付くと、二人は水着のまま抱き合っていた。
~愛海~やばいよ!こんな所で、身体をくっつけてキスしている。しかも藤森君の手
   は梨沙のお尻に触っているし…。

 真斗にどうだったかかれたが、「どこにもいなかった」と嘘を付いた。しばらくして二人は、何事もなかったかのように帰って来た。そのあと、また海に入ってしばらく泳いでから帰りの支度をした。日も傾いてきて、騒がしかった砂浜は静けさを取り戻しつつあった。
 帰りの電車の中で、愛海は真斗の肩に頭をもたせ掛けて眠っていた。海の喧騒けんそうと波の音が脳裡のうりかすめ、真斗とのたわむれを思い浮かべながら、心地よい眠りの中にいた。
 愛海が目を覚ますと、真斗の手が愛海の肩に置かれていた。真斗の手は肩から髪の毛に移り、優しく髪の毛をでながら、
「前に1回逃げられているから、どうしようかと迷っていたんだけど、今日はいいよね。」愛海は公園での事を、あの後謝っていた。周囲に人がいる恥ずかしさと、真斗の手の温かさとで胸の鼓動は高鳴っていた。そして、海岸での藤森君と梨沙の姿が、愛海の目の奥でちらついていた。
~愛海~あの二人、何にもなかったみたいにしている。私は、真斗に肩を抱かれて
   いるだけで恥ずかしいのに。

 電車を乗り換えると混雑していて、愛海と真斗は指と指をからめ、恋人つなぎをして立っていた。楽しかった1日は、あっという間に過ぎて行った。
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