初めての物語【B面】~First Story~

秋 夕紀

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第8章 初めてのときめき

4 愛撫の名残

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 彩海に対して、ちょっと前までは恥ずかしさと罪の意識とで顔も見られなかったのに、愛海は何事もなかったかのように平然と振舞ふるまえるようになっていた。
~愛海~彩海には彼がプレゼントを持って来たと言って、親への口止めをして置いた
   けど、髪は乱れていたし、あんな顔をしていたからばれたかな。

 両親が帰って来て、テレビを見ながら愛海は家族と過ごした。愛海が真斗と付き合っている事は、両親も承知していた。妹は隅に置けないが、両親はいつもと変わらず、今日の真斗との事に何の疑いも持っていないようだった。以前はやはり親の顔を見るのもはばかられた愛海だが、普段通りの態度と会話ができていた。成長したといえば体裁ていさいはいいが、愛海はいやらしい大人の女に自分がなっていくのを感じていた。

 風呂に入ろうと浴室の脱衣所で、愛海はやっと一人になった。衣服を脱いで鏡をのぞくと、胸の上の辺りに赤いシミのようなものを見つけた。何かと思って触ってみて、「真斗が付けたものだ」と愛海は分かった。急に恥ずかしくなり、タオルでそれを隠した。「親に見られたら…。妹にも…」と心配になった。愛海は湯船につかり目を閉じると、真斗の身体の温もりがよみがってきた。
~愛海~真斗の温かい手の感触は、夏の海辺で触れられた時とは明らかに違った。
   それに裸で男の子と抱き合うなんて、今までの自分からは考えられない。彼
   の身体の重みも温かさも、気持ち良かった。人形のようにじっとしているし
   かなかった私だが、しっかりと彼の思いを受け止めていた。彼の求めるもの
   が、さらに先にある事も分かっていたが、まだ心の準備ができない。彼はそ
   れを分かってくれて嬉しかった。彼の欲求を満たす事も、好きな相手ならば
   必要な事に思える。

 愛海の気持ちは、このまま彼の求めるままにそれを受け入れていいのかどうか迷っていた。二人の恋が新たなハードルを超えたのは事実だ。そして、「この後はどうなるのだろう」という不安と期待の入り混じった思いに駆られながら、愛海は風呂から上がった。
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