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第4章 梅枝七海(17歳)=白石冬馬(17歳)
§6 救われた思い
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ようやく近隣の商店街に着いたのは6時前だったが、とうに日が暮れていた。七海は安心して、体に無意識に入っていた力を緩めた。
「駐車場に車を入れるから、もう少し待っててね。」と言われ、私はすぐにでも降りたかったが、さすがに「ここで降ります」というのは、今日一日付き合ってくれた彼に失礼だと思い我慢した。
「まだ早いから、もう少し良いよね?近くに高校の時の友だちが働いている店があるから、そこでゆっくりと話をしよう!」
「いえ、ごめんなさい!わたし、門限があるんで、ここで帰ります。今日はありがとうございました。」と礼を尽くして帰ろうとした。すると、彼は私の二の腕をつかんで、説得をし始めた。私は逃れようもなく、引きずられるようにして歩いていると、後ろから、
「梅ちゃん、どうした?その男は誰?」と声を掛けてきたのは、冬馬君だった。その時、「助かった」と思ったのは言うまでもなかった。私は冬馬君に、これまでの経緯を話した。
「来人さんだっけ?無理強いは良くないんじゃないかな?帰りたがってるし、梅ちゃんはまだ高校生だから!確かお父さんは、警察関係者だよね!」
冬馬君は私の方を向いて目配せしてきたが、警察ではなく検察だよと突っ込むのは止めて成行きを見守った。一方の彼は気分を悪くしたらしく、不機嫌そうに捨て台詞めいた言葉を吐いて立ち去った。
「冬馬君、ナイスジョブだよ。助かったよ、ありがとう!」
「駐車場から出て来た梅ちゃんを見つけて、離れた所から見ていたんだけど、何か様子が変だなと思って声を掛けたんだ。」
「良かった!わたし、変な所に連れ込まれていたかもしれない。」
冬馬は七海の顔が青ざめているのに気が付き、落ち着くまで自分の家の寿司屋で休むようにと連れて行った。店に入ると冬馬の両親が、愛想よく出迎えてくれた。同時に彼女だと勘違いされていた。
「冬馬が女の子を連れて来たのは、初めてだから驚いたな。それも可愛らしいお嬢さんで、こんな馬鹿ですがよろしくお願いしますよ!」
「父ちゃん、そんなんじゃないから、余計な事を言わないで!」
彼は照れながら、私を2階の部屋に案内した。母親があわてて付いて来て、お茶を出しながら心配そうに私の顔を見て言った。
「気分が悪いなら、遠慮しないでね!まさか、冬馬が何かしたのかい?」
彼の必死に否定する姿を見て、私は申し訳なく思い、事情を説明して誤解を解いた。母親はそれでも心配そうに、店へと下りて行った。
「ごめんね!迷惑だったよね。冬馬君には、助けられてばかりだね。借りが出来ちゃった。お返しに、何でも聞くよ。でも、変なことは駄目だよ!」
「ほんとに良いの?それじゃ、クリスマスの夜にデートしてよ!」
「うーん、クリスマスか。その日は家の用事があって、駄目なんだよな。ごめん!じゃあさ、初詣デートはどう?」
私は彼を気遣って、お正月にデートする事を約束した。そこへ母親が、握り寿司の差し入れを持って上がって来たのでびっくりした。
「いいわね、初詣にデートするの?冬馬、よかったわね!」と言われ、彼は「立ち聞きするなよ」と怒っていたが、私は赤くなってうつむいていた。
突然の訪問とお寿司のお礼を言って、七海は急いで家に向かいながら、今日一日の事を思い起こしていた。来人とのファーストキスは成り行きとは言え、七海自身もそれを期待していた。彼女自身は、優柔不断の性格からキスを奪われたと思っているが、性格とかものの考え方を超えたものの存在には気付いていなかった。思春期のただ中にいる彼女の心と体は、成長とともに自然と異性を求め初めていた。一方、やさしい冬馬に頼ってしまう自分が許せず、いつまでも甘えている訳にはいかないと考えていた。
「駐車場に車を入れるから、もう少し待っててね。」と言われ、私はすぐにでも降りたかったが、さすがに「ここで降ります」というのは、今日一日付き合ってくれた彼に失礼だと思い我慢した。
「まだ早いから、もう少し良いよね?近くに高校の時の友だちが働いている店があるから、そこでゆっくりと話をしよう!」
「いえ、ごめんなさい!わたし、門限があるんで、ここで帰ります。今日はありがとうございました。」と礼を尽くして帰ろうとした。すると、彼は私の二の腕をつかんで、説得をし始めた。私は逃れようもなく、引きずられるようにして歩いていると、後ろから、
「梅ちゃん、どうした?その男は誰?」と声を掛けてきたのは、冬馬君だった。その時、「助かった」と思ったのは言うまでもなかった。私は冬馬君に、これまでの経緯を話した。
「来人さんだっけ?無理強いは良くないんじゃないかな?帰りたがってるし、梅ちゃんはまだ高校生だから!確かお父さんは、警察関係者だよね!」
冬馬君は私の方を向いて目配せしてきたが、警察ではなく検察だよと突っ込むのは止めて成行きを見守った。一方の彼は気分を悪くしたらしく、不機嫌そうに捨て台詞めいた言葉を吐いて立ち去った。
「冬馬君、ナイスジョブだよ。助かったよ、ありがとう!」
「駐車場から出て来た梅ちゃんを見つけて、離れた所から見ていたんだけど、何か様子が変だなと思って声を掛けたんだ。」
「良かった!わたし、変な所に連れ込まれていたかもしれない。」
冬馬は七海の顔が青ざめているのに気が付き、落ち着くまで自分の家の寿司屋で休むようにと連れて行った。店に入ると冬馬の両親が、愛想よく出迎えてくれた。同時に彼女だと勘違いされていた。
「冬馬が女の子を連れて来たのは、初めてだから驚いたな。それも可愛らしいお嬢さんで、こんな馬鹿ですがよろしくお願いしますよ!」
「父ちゃん、そんなんじゃないから、余計な事を言わないで!」
彼は照れながら、私を2階の部屋に案内した。母親があわてて付いて来て、お茶を出しながら心配そうに私の顔を見て言った。
「気分が悪いなら、遠慮しないでね!まさか、冬馬が何かしたのかい?」
彼の必死に否定する姿を見て、私は申し訳なく思い、事情を説明して誤解を解いた。母親はそれでも心配そうに、店へと下りて行った。
「ごめんね!迷惑だったよね。冬馬君には、助けられてばかりだね。借りが出来ちゃった。お返しに、何でも聞くよ。でも、変なことは駄目だよ!」
「ほんとに良いの?それじゃ、クリスマスの夜にデートしてよ!」
「うーん、クリスマスか。その日は家の用事があって、駄目なんだよな。ごめん!じゃあさ、初詣デートはどう?」
私は彼を気遣って、お正月にデートする事を約束した。そこへ母親が、握り寿司の差し入れを持って上がって来たのでびっくりした。
「いいわね、初詣にデートするの?冬馬、よかったわね!」と言われ、彼は「立ち聞きするなよ」と怒っていたが、私は赤くなってうつむいていた。
突然の訪問とお寿司のお礼を言って、七海は急いで家に向かいながら、今日一日の事を思い起こしていた。来人とのファーストキスは成り行きとは言え、七海自身もそれを期待していた。彼女自身は、優柔不断の性格からキスを奪われたと思っているが、性格とかものの考え方を超えたものの存在には気付いていなかった。思春期のただ中にいる彼女の心と体は、成長とともに自然と異性を求め初めていた。一方、やさしい冬馬に頼ってしまう自分が許せず、いつまでも甘えている訳にはいかないと考えていた。
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