初めての物語~First Story~

秋 夕紀

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第十三章 初めての不信

2 変わるこころ

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 雨風はすっかり止んで、青空さえ見えていた。しかし、私の心は曇ったままだった。傘を置いてきてしまったと気付いたが、引き返す気にはなれなかった。
 しょんぼりと歩いていると、こちらに自転車で来る茜と出会った。
「あれ、愛海。どうしたの?しょんぼりして。それにワンピースが少し濡れているみたいだよ。」私は黙って、下を向いていた。
「真斗の所に来ていたんだね。真斗と別れがつらくて、元気ないのかな?」茜の一方的な問い掛けに、また涙が出そうになった。茜は私の様子が普通ではないと思ったらしく、茜の家に連れて行ってくれた。
 家に入ると、茜は温かいココアを入れてくれた。私は茜の顔をまともに見る事ができず、うなだれていると、茜は私の事を察して話し出した。
「言いたくない事は言わなくていいからね。ただ気になるのは、真斗の様子が最近おかしいのよ。部活を引退してから、例の藤森達とつるんで遊んでいるみたい。梨沙が妊娠したって噂も、藤森が相手だったみたいで、とんでもない奴と真斗は付き合っているんだよ。だから、愛海にも、何か迷惑が掛かっているんじゃないかと心配なの。」私はどきっとした。茜が言う事が本当なら、真斗の変化にうなずける所がある。
「茜の言う通り、最近真斗が変わったみたいで怖いの。今日だって…。」
「真斗を紹介したのは私だし、責任を感じる。愛海が付き合い出してからは、余計な事は言わないようにしていたけど、今の愛海を見ていると心配だよ。」私は茜から納得のいく情報を得て、彼女の思いやりに感謝していた。
 茜は大学合格を目指して、塾に通って本格的に勉強に励んでいるらしい。
今日、茜と会って話ができて良かったと思った。

 家に帰ると、母親が待ち構えていた。
「真斗君とはどういうお付き合いをしているの?男の子に振り回されて、自分が見えていないんじゃないの。高校生がキスしたり、それ以上の事をしたりしてはいけないとは言わないわ。だけど、今愛海がしなければいけない事は何か、よく考えてね。」母の言葉には説得力があった。母は私と真斗が何をしているか、私がもう処女でない事も知っているに違いない。何もかも知っていて、私が自分で気が付くのを待っているのだ。それなのに、私は親に嘘を付いて、ばれない様に誤魔化ごまかして、申し訳なく思った。
「分かった。真斗とは少し距離を置いて、大学に行けるように頑張るよ。」
母はそれ以上何も言わなかった。私は恋愛にあこがれ振り回されていた。いや、恋愛におぼれてしまったのは、誰のせいでもなく自分自身だと思う。以前のように真斗と会っていても、将来の事とか学校の事とかを話さなくなっていた。それよりも、真斗だけでなく私もだが、欲望を満足させる事を優先し、本来望んでいた恋愛とはかけ離れてしまった。真斗との事は少し冷静になって、考えてみた方が良いようだ。今は私も勉強に打ち込むべき時で、恋愛はその後でも構わない。真斗の事は嫌いになった訳でもないが、真斗にもその事を分かってもらえるように話してみようと思った。
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