初めての物語~First Story~

秋 夕紀

文字の大きさ
上 下
25 / 45
第十章 初めての体験

1 高ぶる気持ち

しおりを挟む
 冬休みはあっという間に過ぎた。これから本格的に寒さが増してくる。セーラー服は風通しが良過ぎて、冬には不向きだ。上から指定のセーターを着て、これもまた指定のコートを身に着けて、私は新学期の始まる学校へと向かった。
 学校に着くと、茜や修学旅行で同じ班だった美樹と七瀬が出迎えてくれた。始業式が始まるまで、クリスマスはどうだったか、冬休みをどう過ごしたかとか、話が盛り上がった。何となく茜が寂しそうなのが気になっていた。真斗との進展具合は、言い出せないでいた。

 午前中で放課になり、真斗と学校帰りに駅前のカラオケ店に入った。二人きりになれる場所と言ったら、ここしか考え付かず制服で初めて入った。コートを脱いで曲を見ていると、真斗が飲み物を持って入ってきた。しばらくは話をしながら、合間に歌を歌った。
 1時間が経過した頃、真斗が「我慢できない」と言って私に抱き着いてきた。
「駄目だよ、真斗。見られるよ。」私の制止も聞かず、真斗は唇を重ねてきた。駄々だだっ子をあやすように、私は真斗の頭をでていた。
 延長を知らせる電話に平常心に戻り、延長はせず二人でカラオケ店を出た。

 真斗も私も、部活動は休まずに出席し、時間がある時に会っていた。会った時は、どうしても帰りが遅くなってしまい、母親にとがめられる事もあった。ただ困っているのは、二人だけになれる場所だった。公園は寒過ぎて30分といられないし、その都度つどカラオケに行かれる訳がない。
 公園で寒さをこらえて抱き合っていると、知らないおじさんに見つかり、怒鳴られた事もあった。バレンタインの日にはチョコレートを渡そうと、前の晩に連絡すると、昼休みにテニス部の部室に呼び出された。乱雑な男くさい部室の中で、真斗が抱いてこようとしたがさすがに無理だった。

 卒業式が終わって皆が帰った後、真斗と空き教室でキスをしていた。寒さしのぎにはなったが、学校という場所では真斗が望むような展開には到らなかった。そこへ茜が廊下を通りかかったので、あわてて真斗から離れて呼び止めた。
「茜、どうしたの?泣いているの?」
「あっ、愛海か、真斗も一緒なんだね。また後で話すよ。」と茜は言って去っていった。
 後から聞いた話では、倉橋英之と正式に別れたという。倉橋先輩は東京の大学に進学が決まり、茜も喜んでいたが、連絡が取れず会う事ができなかったと言っていた。有耶無耶うやむやになったままでいるのが嫌で、卒業式の後に茜から声を掛けたらしい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

初めての物語【B面】~First Story~

秋 夕紀
恋愛
 臆病で内気な高校2年生の女の子が、初めての交際、デート、キスそして初体験を経ていく中で、成長し大人になっていく物語です。心の結びつきを大切に思う女子と身体の結びつきを求めがちな男子。男女の恋愛観のすれ違いは、時として恋愛関係を崩壊させることになります。  一方で、幼馴染の二人の気持が、恋愛感情に発展するまでの物語が展開されます。|紆余≪うよ≫曲折の末に、初めて結ばれた時の思いを|綴≪つづ≫ります。  全17章の構成です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...