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第九章 初めての嫉妬
2 初詣での嫉妬
しおりを挟む ローズは冨岡と時間を過ごしたいと願いながらも、冨岡が目標に向かって行動していることを悟り、最大限の遠慮を見せたのだ。
それがお茶をしている数分間だけ、時間をもらうというもの。まさか彼女が我儘な令嬢などと言われていたなんて思えない。いや、元々他人に気を配ることの出来る子だったのだろう。
それでも両親に構ってもらいたい、という想いがローズを我儘な令嬢へと変貌させていた。
素直だが素直ではなく、思慮深さゆえに直情的な子なのである。
冨岡はそんなローズに対し、まるで姪っ子でもできたかのように思い、微笑んだ。
「ははっ、それじゃあ俺が持ってきたお茶を淹れますので、一杯だけお付き合いください。いいですか、ローズ」
冨岡が言うとローズは、嬉しそうに表情を緩ませてから、それを察されないように唇を尖らせる。
「し、仕方ないわね、トミーは。この国の未来を担う公爵令嬢の時間は安くないのよ。せっかくなら楽しませてもらえるかしら」
どこか演技がかったローズの口調に合わせて、冨岡はわざとらしく胸に手を当てて頭を下げた。
「仰せのままに」
そのまま冨岡は自分の持ってきた紅茶を淹れようと、ダルクに目線を向ける。しかしいつの間にか、ダルクは湯を用意し、紅茶を淹れていた。その手際は、紅茶好きと自称する富岡ですら舌を巻くほどであり、口を出す余地などなかった。
用意された紅茶に口を付けながら、ローズはスキップをするような声で冨岡に話しかける。
「ところでトミー。聞きたいことがあるのだけれど」
「何ですか?」
「その、庶民の方々は恋愛の末に婚姻の契りを結ぶのよね?」
「お見合いとかもありますけど、恋愛結婚も多いでしょうね。少なくとも俺の国ではほとんどそうでした」
そう答えてから冨岡は、ローズの言葉を深く読み解いた。わざわざ『庶民は』と言うくらいなのだから、貴族は違うのだろう。おおよそ想像はしていたが、やはり貴族は家のために結婚するものらしい。
そしてそれはローズも同じだ。公爵家令嬢ともなれば、それなりに位の高い貴族と婚姻を結ぶことになる。
だとしたら、今の答えは考えが足りなさすぎた。一瞬で反省し、ダルクに目を向ける冨岡だが、令嬢に対して過保護である執事は穏やかな表情で立っている。
問題なかったのだろうか、と考えながら冨岡はローズに視線を戻した。すると彼女は、少し考えてから幾つか段階を飛ばした言葉を放つ。
「トミーは男妾になるつもりはない?」
「ブフッ」
まさか幼いローズの口からそんな言葉を聞くとは思っておらず、冨岡は紅茶を吐き出してしまった。
自分の口を拭いながら、恐る恐る問いかける。
「な、何を言ってるんですか、ローズ。お、男め・・・・・・いやいや、そんな言葉どこで学ぶんですか」
「あら、知らないの? 私の趣味は読書なのよ? 最近、暇を持て余したご婦人の中で流行っている小説があるの。熱烈な恋の物語よ。家のための婚姻を定められた令嬢と、立場を持たない庶民の男。二人は秘密の恋をするの」
それがお茶をしている数分間だけ、時間をもらうというもの。まさか彼女が我儘な令嬢などと言われていたなんて思えない。いや、元々他人に気を配ることの出来る子だったのだろう。
それでも両親に構ってもらいたい、という想いがローズを我儘な令嬢へと変貌させていた。
素直だが素直ではなく、思慮深さゆえに直情的な子なのである。
冨岡はそんなローズに対し、まるで姪っ子でもできたかのように思い、微笑んだ。
「ははっ、それじゃあ俺が持ってきたお茶を淹れますので、一杯だけお付き合いください。いいですか、ローズ」
冨岡が言うとローズは、嬉しそうに表情を緩ませてから、それを察されないように唇を尖らせる。
「し、仕方ないわね、トミーは。この国の未来を担う公爵令嬢の時間は安くないのよ。せっかくなら楽しませてもらえるかしら」
どこか演技がかったローズの口調に合わせて、冨岡はわざとらしく胸に手を当てて頭を下げた。
「仰せのままに」
そのまま冨岡は自分の持ってきた紅茶を淹れようと、ダルクに目線を向ける。しかしいつの間にか、ダルクは湯を用意し、紅茶を淹れていた。その手際は、紅茶好きと自称する富岡ですら舌を巻くほどであり、口を出す余地などなかった。
用意された紅茶に口を付けながら、ローズはスキップをするような声で冨岡に話しかける。
「ところでトミー。聞きたいことがあるのだけれど」
「何ですか?」
「その、庶民の方々は恋愛の末に婚姻の契りを結ぶのよね?」
「お見合いとかもありますけど、恋愛結婚も多いでしょうね。少なくとも俺の国ではほとんどそうでした」
そう答えてから冨岡は、ローズの言葉を深く読み解いた。わざわざ『庶民は』と言うくらいなのだから、貴族は違うのだろう。おおよそ想像はしていたが、やはり貴族は家のために結婚するものらしい。
そしてそれはローズも同じだ。公爵家令嬢ともなれば、それなりに位の高い貴族と婚姻を結ぶことになる。
だとしたら、今の答えは考えが足りなさすぎた。一瞬で反省し、ダルクに目を向ける冨岡だが、令嬢に対して過保護である執事は穏やかな表情で立っている。
問題なかったのだろうか、と考えながら冨岡はローズに視線を戻した。すると彼女は、少し考えてから幾つか段階を飛ばした言葉を放つ。
「トミーは男妾になるつもりはない?」
「ブフッ」
まさか幼いローズの口からそんな言葉を聞くとは思っておらず、冨岡は紅茶を吐き出してしまった。
自分の口を拭いながら、恐る恐る問いかける。
「な、何を言ってるんですか、ローズ。お、男め・・・・・・いやいや、そんな言葉どこで学ぶんですか」
「あら、知らないの? 私の趣味は読書なのよ? 最近、暇を持て余したご婦人の中で流行っている小説があるの。熱烈な恋の物語よ。家のための婚姻を定められた令嬢と、立場を持たない庶民の男。二人は秘密の恋をするの」
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