初めての物語~First Story~

秋 夕紀

文字の大きさ
上 下
22 / 45
第八章 初めてのときめき

3 不安と期待

しおりを挟む
 部屋に入ってセーターと普段のスカートに着替えていると、妹がやってきて、
「真斗君、なかなかいい男だね。今日来るなんて言ってなかったよね。」と鋭い質問を浴びせてきた。私は落ち着いて、
「クリスマスプレゼントを持って、突然来たの。」と答えた。
「そうなんだ、プレゼントか。それでそれから…どうしたの?」という彩海に、「それだけ。」と言って、真斗が来ていた事を親には言わないように口止めした。
「分かっているよ、私もいつかのために…お互い様かな。」余計な事を口にする妹が心配だったが、私は妹をにらんで部屋から追い出した。
 彩海に対して、ちょっと前までは、恥ずかしさと罪の意識とで顔も見られなかったのに、何事もなかったかのように平然と振舞えるようになっていた。成長したといえば体裁ていさいはいいが、私はいやらしい大人の女になっていくのを感じた。

 両親が帰って来て、テレビを見ながら家族と過ごした。真斗と付き合っている事は、両親も承知していた。妹は隅に置けないが、両親はいつもと変わらず、今日の真斗との事に何の疑いも持っていないようだ。以前はやはり親の顔を見るのもはばかられた私だが、普段通りの態度と会話ができていた。
 風呂に入ろうと浴室の脱衣所で、やっと一人になった。セーターを脱いで鏡をのぞくと、胸の上の辺りに赤いシミのようなものを見つけた。何かと思って触ってみて、「真斗が付けたものだ」と分かった。急に恥ずかしくなって、タオルでそれを隠した。「親に見られたらどうしよう。妹にも…」と心配になった。
 湯船につかり目を閉じると、真斗の身体の温もりがよみがえってきた。真斗の温かい手の感触は、夏の海辺で触れられた時とは明らかに違うものだった。人形のようにじっとしているしかなかった自分だが、しっかりと真斗の思いを受け止めていた。真斗の求めるものが、さらに先にある事も分かっていたが、まだ心の準備ができないでいた。真斗はそれを分かってくれて嬉しかった。彼の欲求を満たす事も、好きな相手ならば必要な事に思える。しかし、私の気持ちは、このまま彼の求めるままにそれを受け入れていいのかどうか迷っていた。
 二人の恋が新たなハードルを超えたのは事実だ。そして、「この後はどうなるのだろう」という不安と期待の入り混じった思いに駆られながら、風呂から上がった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

初めての物語【B面】~First Story~

秋 夕紀
恋愛
 臆病で内気な高校2年生の女の子が、初めての交際、デート、キスそして初体験を経ていく中で、成長し大人になっていく物語です。心の結びつきを大切に思う女子と身体の結びつきを求めがちな男子。男女の恋愛観のすれ違いは、時として恋愛関係を崩壊させることになります。  一方で、幼馴染の二人の気持が、恋愛感情に発展するまでの物語が展開されます。|紆余≪うよ≫曲折の末に、初めて結ばれた時の思いを|綴≪つづ≫ります。  全17章の構成です。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

処理中です...