初めての物語~First Story~

秋 夕紀

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第八章 初めてのときめき

3 不安と期待

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 部屋に入ってセーターと普段のスカートに着替えていると、妹がやってきて、
「真斗君、なかなかいい男だね。今日来るなんて言ってなかったよね。」と鋭い質問を浴びせてきた。私は落ち着いて、
「クリスマスプレゼントを持って、突然来たの。」と答えた。
「そうなんだ、プレゼントか。それでそれから…どうしたの?」という彩海に、「それだけ。」と言って、真斗が来ていた事を親には言わないように口止めした。
「分かっているよ、私もいつかのために…お互い様かな。」余計な事を口にする妹が心配だったが、私は妹をにらんで部屋から追い出した。
 彩海に対して、ちょっと前までは、恥ずかしさと罪の意識とで顔も見られなかったのに、何事もなかったかのように平然と振舞えるようになっていた。成長したといえば体裁ていさいはいいが、私はいやらしい大人の女になっていくのを感じた。

 両親が帰って来て、テレビを見ながら家族と過ごした。真斗と付き合っている事は、両親も承知していた。妹は隅に置けないが、両親はいつもと変わらず、今日の真斗との事に何の疑いも持っていないようだ。以前はやはり親の顔を見るのもはばかられた私だが、普段通りの態度と会話ができていた。
 風呂に入ろうと浴室の脱衣所で、やっと一人になった。セーターを脱いで鏡をのぞくと、胸の上の辺りに赤いシミのようなものを見つけた。何かと思って触ってみて、「真斗が付けたものだ」と分かった。急に恥ずかしくなって、タオルでそれを隠した。「親に見られたらどうしよう。妹にも…」と心配になった。
 湯船につかり目を閉じると、真斗の身体の温もりがよみがえってきた。真斗の温かい手の感触は、夏の海辺で触れられた時とは明らかに違うものだった。人形のようにじっとしているしかなかった自分だが、しっかりと真斗の思いを受け止めていた。真斗の求めるものが、さらに先にある事も分かっていたが、まだ心の準備ができないでいた。真斗はそれを分かってくれて嬉しかった。彼の欲求を満たす事も、好きな相手ならば必要な事に思える。しかし、私の気持ちは、このまま彼の求めるままにそれを受け入れていいのかどうか迷っていた。
 二人の恋が新たなハードルを超えたのは事実だ。そして、「この後はどうなるのだろう」という不安と期待の入り混じった思いに駆られながら、風呂から上がった。
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