初めての物語~First Story~

秋 夕紀

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第八章 初めてのときめき

1 Xmasの計画

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 期末テストも終わり、もうすぐ冬休みになる。クリスマスもあるし、初詣にも行きたい。真斗と一緒に過ごすためにはどうすればいいか、私は考えていた。クリスマスイブは家族そろって過ごすが、クリスマスの日に両親は外へ出掛けるのが恒例になっている。妹の彩海も、確か友だちの家に行くと言っていた。
 真斗を家に呼ぶのはこの日しかないと思い、計画を立てた。真斗には地図を描いて渡して、自転車で来てもらう事にした。一緒に歩いている所を見られるとまずいと思ったからだ。両親が出掛ける時間と、彩海が何時に帰って来るかを確認した。母は昼頃に家を出て、父と待ち合わせをするようだ。彩海は夕方には帰って来ると言っていたので、あまり遅くならないようにしなくてはいけない。

 クリスマスの当日、計画通りに皆が出掛けて行った。私は、リボンの付いたブラウスにカーディガン、ミニのフレアスカートに着替え、大分伸びた髪の毛をポニーテールに結んで真斗を待った。自転車が家の前で停まる音がしたので、玄関に迎えに出た。真斗にはケーキを頼んであったのでそれを受け取り、リビングのソファーに腰掛け、紅茶を入れて二人でケーキを食べた。チョコレートとイチゴのショートケーキで、半分ずつ分け合って食べた。真斗からはペンダントをプレゼントにもらい、私からはキーホルダーを渡した。話が途絶えたので、「私の部屋に行こうか。」と私から真斗を誘い、2階の部屋に案内した。

「わー!女の子っぽいな。俺の部屋とは違うよな。ぬいぐるみもあるし…」
「恥ずかしいから、あまりキョロキョロと見ないでね。」真斗をベッドに座らせ、私もその横に腰掛けた。すると真斗が、
「俺の部屋に来た時、アルバム見せたから、今日は愛海のアルバムを見せて!」と言ってきた。予想はしていたので、用意はしておいた。アルバムを一緒に見ながら、
「愛海は小さい頃から、あまり変わらないね。」と真斗は、微妙な事を言った。
「何それ、成長してないってこと?こんなに大きくなったよ。」と腰に手を当て、胸をらせて訴えた。真斗はニヤニヤしながら、アルバムをめくっていった。
「あれ、この子だれ?愛海より、大きいよね。」真斗が見つけたのは、島本瑛士が小学5年生、私が3年生の時の写真だ。少し気まずい思いもあったが、
「あーそれはお兄ちゃん。小さい頃に勉強を教わったり、遊んだりしていたの。」
「へぇ、愛海の初恋の人?かっこいいよね。」真斗が核心を突いてきたが、何とか誤魔化して、「飲み物を持って来る」と言ってその場を外した。
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