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最終章 立松千宙(21歳)=梅枝七海(21歳)
§3二人の思い
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千宙が七海を家に呼んだのは相談を受けるためだけではなく、3年前に生じたわだかまりを一掃するのが目的だった。二人が結ばれるはずの大切な日に、千宙は大学で知り合った秋庭二奈のストーカー事件に巻き込まれた。その日の七海との約束を反故にして二奈に付き添った結果、心にずれが生じて別れる事になった。そのずれを正そうと、今まであえて避けていたが、腹をくくって話し合う事にした。
「あのさ、あの時の事だけど、七海との約束を破ったのは本当に悪かったと思ってる。七海なら分かってもらえると見くびっていて、二人にとっての大切な時間を踏みにじってしまった事は今でも反省してる。」と話すと、彼女は辛そうな顔を隠し切れずに聞いていた。少しの沈黙の後、彼女が話し始めた。
「思い出したくはないけど、このままじゃいけないよね!わたし、あの日は一大決心をして千宙に会いに行ったの。女の子の覚悟がどんなものか、男の千宙には分かるはずもないけど、あの時は本当に忌々しかった。だって、他の女の子のために尽くす千宙を目の当たりにして、わたしは逃げるしかなかったんだもの。言い訳を聞こうともしなかったわたしも悪いけど、甘く見られていたのが口惜しかったの!」
彼女は途中から涙ぐみ、あの時の気持ちを訴えていた。俺は見せ掛けの反省ではなく、心の底から後悔している事を伝えた。
七海は千宙の思いをくみ取り、胸が熱く高鳴っていた。あの時に戻りたいという思いと、自分自身の稚拙な行動を改めたいという思いに駆られていた。千宙に裏切られて自棄になった七海は、インカレの飲み会で醜態をさらし、黄川田肇に抱きかかえられて寮に戻った。そこを千宙に目撃され、新たな誤解が生じて別れの決定打になった。その後黄川田とはいろいろあったが、取りあえずその時の事を弁明した。
「今度は、わたしの番だね!千宙が誤解してた男の人だけど、本当に何でもないよ!あの時、自棄になっていたのは事実で、どうなってもいいやと思って飲み会に行ったの。それを止めてくれたのが彼で、男友だちとして付き合ってはいたけど、恋愛の対象にはならなかったし、男女の関係にはならなかった。信じてくれる?」
「七海の言う事を、今は信じられるよ!あの時は思考が停止していて、何も信じられなくなっていた。七海の投げやりな性格と、俺のねじけた性格が傷口をどんどん広げていった。どんなに好きでも、心の繋がりは壊れやすいものだと痛感した。」
俺たちは無言のまま、数分間を過ごした。頭の中では、今後の事を考えていた。
七海が千宙の母親にお礼を言って帰ろうとした時には、夜の10時を廻っていた。千宙が送って行くと言うのを断るいわれもなく、マンションの近くまで来ていた。道中で柊絵美里の話題になり、七海の早とちりだったと納得した。
「ねぇ、わたしたち、やり直せないかな?」と七海が口火を切った。
「うん、俺もそれを言おうとしてた!」と俺は相槌を打った。
「ここが今住んでる所。寄って行って欲しいけど、ブレーキが効かなくなりそうだから、今日はここで、さよならしよ!立松先生の御意見は?」
「そうだね、来週は研究授業もあるし、終わったらゆっくり会えるよね!」と言って帰るつもりだったが、七海の気持ちを確かめるためにキスを求めた。
二人はマンションの物陰で抱き合い、3年ぶりに唇を交わし合った。一度消えた火は、あっという間に再燃していた。七海の言ったブレーキは効いたものの、歯がゆさの残る別れであった。
「あのさ、あの時の事だけど、七海との約束を破ったのは本当に悪かったと思ってる。七海なら分かってもらえると見くびっていて、二人にとっての大切な時間を踏みにじってしまった事は今でも反省してる。」と話すと、彼女は辛そうな顔を隠し切れずに聞いていた。少しの沈黙の後、彼女が話し始めた。
「思い出したくはないけど、このままじゃいけないよね!わたし、あの日は一大決心をして千宙に会いに行ったの。女の子の覚悟がどんなものか、男の千宙には分かるはずもないけど、あの時は本当に忌々しかった。だって、他の女の子のために尽くす千宙を目の当たりにして、わたしは逃げるしかなかったんだもの。言い訳を聞こうともしなかったわたしも悪いけど、甘く見られていたのが口惜しかったの!」
彼女は途中から涙ぐみ、あの時の気持ちを訴えていた。俺は見せ掛けの反省ではなく、心の底から後悔している事を伝えた。
七海は千宙の思いをくみ取り、胸が熱く高鳴っていた。あの時に戻りたいという思いと、自分自身の稚拙な行動を改めたいという思いに駆られていた。千宙に裏切られて自棄になった七海は、インカレの飲み会で醜態をさらし、黄川田肇に抱きかかえられて寮に戻った。そこを千宙に目撃され、新たな誤解が生じて別れの決定打になった。その後黄川田とはいろいろあったが、取りあえずその時の事を弁明した。
「今度は、わたしの番だね!千宙が誤解してた男の人だけど、本当に何でもないよ!あの時、自棄になっていたのは事実で、どうなってもいいやと思って飲み会に行ったの。それを止めてくれたのが彼で、男友だちとして付き合ってはいたけど、恋愛の対象にはならなかったし、男女の関係にはならなかった。信じてくれる?」
「七海の言う事を、今は信じられるよ!あの時は思考が停止していて、何も信じられなくなっていた。七海の投げやりな性格と、俺のねじけた性格が傷口をどんどん広げていった。どんなに好きでも、心の繋がりは壊れやすいものだと痛感した。」
俺たちは無言のまま、数分間を過ごした。頭の中では、今後の事を考えていた。
七海が千宙の母親にお礼を言って帰ろうとした時には、夜の10時を廻っていた。千宙が送って行くと言うのを断るいわれもなく、マンションの近くまで来ていた。道中で柊絵美里の話題になり、七海の早とちりだったと納得した。
「ねぇ、わたしたち、やり直せないかな?」と七海が口火を切った。
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「ここが今住んでる所。寄って行って欲しいけど、ブレーキが効かなくなりそうだから、今日はここで、さよならしよ!立松先生の御意見は?」
「そうだね、来週は研究授業もあるし、終わったらゆっくり会えるよね!」と言って帰るつもりだったが、七海の気持ちを確かめるためにキスを求めた。
二人はマンションの物陰で抱き合い、3年ぶりに唇を交わし合った。一度消えた火は、あっという間に再燃していた。七海の言ったブレーキは効いたものの、歯がゆさの残る別れであった。
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