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最終章 立松千宙(21歳)=梅枝七海(21歳)

§1出身中学での再会

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 立松千宙は大学4年生になって、自分の進路を決めかねていた。教職に就く事も考えて教職科目を受講しているが、IT関連の仕事にも関心を持っていた。6月には教育実習を控えていて、それが終わってから改めて考えようと思っていた。
 一方、梅枝七海は大卒後の進路を教員志望に絞り、教育実習の準備をしていた。両親は仙台に今は住んでいて、出身高校は静岡、中学校は東京と静岡で、どこで実習をするか悩んだ末、2年間在籍した東京の中学校に依頼した。ただ都心の寮から通うには遠く、ウィークリーマンションを借りる手配もしていた。
 実習当日の朝、打ち合わせで二人は久し振りに顔を合わせた。他に4名が来ていたが二人の目には入らず、紹介されてからの挨拶も上の空だった。控室に案内され、
「七海、久し振り!やっぱり実習をここで受けるんだね。」
「千宙、よろしく!今は無理だけど、後で話しがしたい。」と会話を交わした。
 ほぼ3年ぶりに会う七海は、すっかり大人の女性になっていて、成長していない俺は恥ずかしかった。「やっぱり」なんて言ってしまい、俺が期待していたと思われたかもしれない。確かに、もしかしてという思いをめぐらしていた。

 授業の参観、昼休みの給食、放課後の部活動と忙しく、控室に戻ってからも他の実習生と一緒に授業研究にいそしんだ。実習生の内の4人が同級生で、その一人の田村に、「立松と梅枝は、中学の時に付き合ってたよな!まだ続いてるの?」と冷やかされた。二人は同時に否定したが、心の中ではお互いを思っていた。他の実習生たちが帰るのを見計らって、千宙から声を掛けた。
「やっと二人だけになったね!中学校、懐かしいな。」
「うん、あの頃のいろいろな事を思い出すわ!わたしたち、仲良かったわよね!」と校庭を眺めながら、彼女は感慨深げだった。そこへ、養護教諭の片平かたひら先生が来て、
「あんたたち、元気そうだね!二人で思い出話してるの?それとも、まだお付き合いが続いているの?」と質問攻めに遭った。適当に口裏を合わせてその場をしのぎ、先生も入って懐かしい話で盛り上がった。帰る頃にはすっかり暗くなっていて、当時もこんな風だったと思いながら、帰り道を一緒に歩いた。
「七海はどこに帰るの?まさか寮まで帰るの?」
「さすがにそれはないわよ!近くに賃貸マンションを借りてるの!」
「そうなんだ!どうせなら、家に泊めて上げれば良かったな。」とつぶやくと、彼女は返事をせずに微笑んでいた。

 二人は歩きながら、中学時代の思い出話に夢中だった。しかし、気まずい別れについては一切触れず、その時の事は暗黙の内に封印していた。
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