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第8章 梅枝七海(19歳)=黄川田肇(21歳)
§5消極的な彼
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4月になって、七海は中学生を対象にした学習塾でアルバイトを始めた。肇が2年間教えていた塾で、教職志望だという七海に講師を勧めた。最初は戸惑う事もあったが、肇のサポートもあって直ぐに慣れ、生徒からも評判が良かった。
「今日は初めてのバイト代が入ったので、食事を御馳走させてください。」
「駄目だよ、年下の女の子におごらせる訳にはいかないよ。」
「女子だとか後輩だとか、それって肇さんの嫌いな蔑視じゃないですか?」
私はお礼がしたくて、彼の理屈を押し退けて食事に誘った。
「肇さんは就活をしないんですか?もう決まってるとか?」
「ああ、卒業したら北海道に帰るつもりだから。親が洞爺湖でペンションをやってて、それを継ぐ事になっている。だから、大学は東京で好きにして良いと言われた。」
「へー、北海道か。行った事がないから、行ってみたいな!洞爺湖ってどの辺りですか?」と訊くと、簡単な地図を描いて詳しく教えてくれた。
「夏休みに帰る予定だから、一緒に行く?泊まる所は心配ないから。」
「ホントに?迷惑じゃないですか?行きたい!」
彼にしては思い切った誘いで、私は何も考えずにはしゃいでいた。
肇は学習塾を5月いっぱいで辞め、七海とその送別会の後を過ごしていた。お互いに告白し合った仲ではなく、先輩と後輩、男女の友だち関係を保っていた。
「肇さんがいなくなると、寂しいな!いつも助けられてたから。」
「七海さんは、もう誰の助けもいらないくらいだよ!塾は辞めるけど、これからもこうして会ってほしいな!」と消極的に言う彼に、私は少しイラついた。
「会ってほしいな、じゃなくて会おうでしょ!そんな遠慮をしてたら、女の子は愛想を尽かして離れていきますよ!もっと積極的にならなくては…。」
私ははっぱを掛けたつもりでいたが、彼にはその意図が通じていなかった。
肇がゲーム好きだという事は、七海は会話をする中で自ずと知れた。その話をする時はいつになく熱く、彼女も引き込まれて興味を抱くようになった。
「わたしも、ゲームやってみたいな。誰かと対戦するんでしょ!」
「うん、そうだけど、ゲーム機がないと駄目だし、最初は難しいよ!」
「なら、教えてください!これから、肇さんの家に行くというのはどうですか?」
私の思い付きの発言に、彼はためらっていた。
「僕の家に?女の子が?ダメだよ、何かあったら困るでしょ!」
「何かって?肇さんでも、そんな事を考えるんだ。平気ですよ、信用してるから!」
私は二人切りになっても、何も起こらないと確信していた。何だかんだと言う彼を根気よく説き伏せ、昼間ならばという条件で行く事になった。
「今日は初めてのバイト代が入ったので、食事を御馳走させてください。」
「駄目だよ、年下の女の子におごらせる訳にはいかないよ。」
「女子だとか後輩だとか、それって肇さんの嫌いな蔑視じゃないですか?」
私はお礼がしたくて、彼の理屈を押し退けて食事に誘った。
「肇さんは就活をしないんですか?もう決まってるとか?」
「ああ、卒業したら北海道に帰るつもりだから。親が洞爺湖でペンションをやってて、それを継ぐ事になっている。だから、大学は東京で好きにして良いと言われた。」
「へー、北海道か。行った事がないから、行ってみたいな!洞爺湖ってどの辺りですか?」と訊くと、簡単な地図を描いて詳しく教えてくれた。
「夏休みに帰る予定だから、一緒に行く?泊まる所は心配ないから。」
「ホントに?迷惑じゃないですか?行きたい!」
彼にしては思い切った誘いで、私は何も考えずにはしゃいでいた。
肇は学習塾を5月いっぱいで辞め、七海とその送別会の後を過ごしていた。お互いに告白し合った仲ではなく、先輩と後輩、男女の友だち関係を保っていた。
「肇さんがいなくなると、寂しいな!いつも助けられてたから。」
「七海さんは、もう誰の助けもいらないくらいだよ!塾は辞めるけど、これからもこうして会ってほしいな!」と消極的に言う彼に、私は少しイラついた。
「会ってほしいな、じゃなくて会おうでしょ!そんな遠慮をしてたら、女の子は愛想を尽かして離れていきますよ!もっと積極的にならなくては…。」
私ははっぱを掛けたつもりでいたが、彼にはその意図が通じていなかった。
肇がゲーム好きだという事は、七海は会話をする中で自ずと知れた。その話をする時はいつになく熱く、彼女も引き込まれて興味を抱くようになった。
「わたしも、ゲームやってみたいな。誰かと対戦するんでしょ!」
「うん、そうだけど、ゲーム機がないと駄目だし、最初は難しいよ!」
「なら、教えてください!これから、肇さんの家に行くというのはどうですか?」
私の思い付きの発言に、彼はためらっていた。
「僕の家に?女の子が?ダメだよ、何かあったら困るでしょ!」
「何かって?肇さんでも、そんな事を考えるんだ。平気ですよ、信用してるから!」
私は二人切りになっても、何も起こらないと確信していた。何だかんだと言う彼を根気よく説き伏せ、昼間ならばという条件で行く事になった。
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