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第6章 梅枝七海(18歳)=立松千宙(18歳)

§5深まる思い

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 七海は朝食を用意して、千宙と弟の寿朗としろうを起こした。千宙と目を合わせるのが恥ずかしく、よそよそしくしているのを寿朗に指摘された。
「姉ちゃんたち、何かあったの?二人とも眠そうだし、あまりしゃべらないし!」
 私は真っ赤になっているのに気付いて、あわててお茶を入れに席を立った。千宙はというと、隠そうという気もないらしく見え見えの態度だった。その雰囲気にいたたまれず、話題を変えるために彼を海に誘った。

 用意のない千宙に寿朗の水着を貸し、七海は高校の時に買ったワンピースの水着を持って出掛けた。電車の中で七海は、ついさっきまでの事を思い出していた。
「トシちゃんに、ばれたかな?千宙君は、全然隠そうとしないんだから!」
「多分、気が付いていると思うよ!同じ家の中だもの、変に隠しても仕方ないよ。」
「千宙は今日帰っちゃうんでしょ!わたしは弟の顔が見れないわよ!」と言う私に、「早く東京に戻って来いよ!」と言ってくれた。
七海は千宙君から千宙と呼ぶようになっていて、より親密さを増していた。

 海は真夏のにぎわいで、二人はビーチの場所取りにてこずった。パラソルを借りて水着に着替え、七海は恥ずかしそうにしながら千宙の元にやって来た。すると、
「うわー!七海、スタイル良いね!」が彼の第一声だった。
「どういたしまして!昔のやせっぽちなわたしと、違うと言いたいんでしょ!」
 私は照れ隠しにそう言って、彼の熱い視線を受けていた。
「女の子の成長には、驚くね!胸とかお尻とか…。」
「ばか!何よ、おっさんみたいな事を言って、嫌いになるよ!」
「ごめんなさい!つい気が緩んで、デリカシーのない事を言ってしまいました。」
 私は本気で怒っている訳ではなく、彼の悪い癖だなと思っていた。
「そう言えば、キスしている時に、わたしの胸を触ってなかった?」
「えーと、それは手の位置が丁度ちょうど当たったというか、触ったというか…。」
「どさくさまぎれに触ったって事ね!まあ、千宙なら嫌じゃなかったけどね!」

 二人は明け方までの事に触れるのを避けていたが、自然と話しがそっちに向いていた。海の中でたわむれ、砂浜で話に夢中になって帰る時間が迫っていた。中学の時に行ったプールでは遠慮がちだった触れ合いも、昨夜のキスをきっかけに大胆になっていた。
 家に帰ると寿朗は出掛けていて、私は彼を自分の部屋に連れて行った。私の帰ってほしくないという気持ちを察し、彼は火照ほてった体をやさしく抱き締めてくれた。
「ずっと、このままでいたい!離れたくない!」と言うのに対して、
「俺も離したくないけど、もう帰らなくちゃ!」という彼の言葉に目が覚めた。このまま彼が求めてきたら、私はためらう事なく彼を受け入れていたのに、彼は狼にはならなかった。止めのないキスに見切りをつけ、静岡駅まで見送りに出掛けた。
「じゃあ、東京で待ってるから。ご両親によろしく!」
「ご両親には内緒だよ!わたしも直ぐに戻るから、忙しいみたいだけど会ってね!」

 二人のお互いを思いやる気持ちは、せきを切ったように熱くたぎっていた。
家に帰った七海は、早々に東京へ戻る準備をした。弟の寿朗は口裏合わせに協力的で、自分の友だちが泊まりに来たと両親に言った。
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