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[エメル視点続く]

あれからというと…ヴィオは元々男性が苦手だったが俺と婚約してから、大分緩和されていたのにあの事件があってからまたダメになったようだった。

怖い思いをしたんだゆっくりでも改善すればいいが、特にあの時のヴィオの制服を引き裂いた男が髭を生やしていたことから、特に髭の男に怯えるようになった為ゴールディ家と我がブラウン家に仕える全ての男性は髭を綺麗に剃った。

ヴィオを気に入っている我が家の使用人たちは二つ返事で了承した。無精髭を生やす者がいなくなりむしろ身綺麗になってよかったと思う。

私の父に至っては若返ってみえ、若返って見える父に母は喜び、更に私と似た顔だからかヴィオがはしゃぐ程喜んでいた。

「おとう様、凄く素敵です!はぅ、エメル様と同じ顔~かっこいいです~ねぇ、おかあ様!おとう様はお髭がない方が素敵ですよね!」

ヴィオをそれはそれは溺愛と言ってもいいくらい可愛がっている父と母だが……キャッキャと母と父を褒めちぎりうっとり眺める姿にじりっと嫉妬心が湧き上がる、確かに俺のシンプルな顔は父に似ている当たり前なのだが…デレデレとする父にイラッとしていると。

「あら!エメル、嫉妬してるの?ふふふふ、そんな顔してはヴァイオレットに呆れられますよ!あなたの顔が好きってことは当然父であるラウル様の顔もタイプって事なのよ、この顔をかっこいいと言うヴァイオレットの美醜には疑問を否ねないけどね、髭を剃ったラウル様はなかなかに渋くいい感じを出してるわ!惚れ直したわ–ふふふふ」

元々仲がよかった両親は最近では俺たちに感化され人前でも仲良くハグしたりキスするようになった。

「エメル様もおとう様のように歳を重ねたらますます素敵になってしまいますね、これ以上素敵になってしまったら私の心臓持つかしら?」

きっとそんなこと思っているのはヴィオだけだろうが、そう言って抱きついてきたヴィオを抱きしめ返すとあっと言う間に嫉妬心は霧散してデレッ!となってしまう。

男とは単純である。

父と母を交え例の事件の顛末と処分を報告するために応接室に移動した。
お茶とお菓子を用意してもらい使用人には席を外してもらった、当然ヴィオはソファに腰掛けた私の膝の上である。

「エメル様?流石にこれは…隣に座りますのでおろしてくださいませ。」

「ん?問題ないよ!我が家ではヴィオの席は私の膝の上だろ?ね!」

ヴィオが少しでもあの時の恐怖を感じないように横抱きに乗せ抱きしめたまま話すつもりであることを父と母も察してくれていた。

「ヴァイオレット、エメルの言う通り我が家ではエメルに存分に甘えるといいよ。そのほうがエメルも嬉しいだろうしね」

父にそう言われたヴィオは私を見上げてふにゃりと綻んで少し恥ずかしそうに

「おとう様にそう仰っていただけるのでしたら……私もこのままが嬉しいです。エメル様のお膝の上は安心できますので……ではこのままお話聞かせてもらいますね」


それから俺は、ヴィオが怖がらない範囲の話を選び掻い摘んで話をした。

アマリリス王女がアレクサンドル殿下がヴィオに思いを寄せていると勘違いし嫉妬してヴィオを傷つけようとした事、
勘違いであることを第2王子が帰国する前に諭されていたがピンキーニ男爵令嬢に煽られて感情のままあのような事をした事

やはり恐怖が蘇ったのだろう時折震えが伝わってきた。本当なら掻い摘んでさえも話したくないが被害者であるにもかかわらず、王女が処罰されると聞いて心痛めていたからだ。

「王女殿下は…王太子殿下をお慕いしているようでしたから、私には愛しい婚約者がいるので心配されるような事はないとご説明致しましたのに…誤解したままでしたのね、…王太子殿下も真摯に対応なされていたように見えましたのに…」

「…ああ、そうだね、今回のことは残念なすれ違いが原因だったのかもしれないね。」

すれ違いではないがそもそも交わる可能性もないくらいアマリリス王女はひどい性格だったからな。

「私のように王女殿下も気持ちを素直にお伝えしていれば変な誤解をしなくて済みましたのに、気持ちは言葉で伝えなければ態度だけでは分かりませんのに、ね!エメル様!」

伝えたところで余計面倒な事になる可能性があった、態度では誰が見ても好意がからさまだったが、王太子殿下はあえて知らないふりをしていたからね。

「うん、そうだね、私もヴィオに気持ちを伝えてもらっていなければ今こうして幸せなを感じることはできなかったからね、」

「そうですね、私も勇気を出して良かったと思っていますの」

ただし、殿下達に関しては当てはまらないと思うけど、言わないでおこう。

「あの、お二人の婚約は…どうなりますの?」

「元々あちらのゴリ押しによる縁談だったから、今回の事もあるけどそれ以外に横暴な態度と言動が人格的に王太子妃に不適格となって破談となったよ。王女は国に帰り修道院で学び直すそうだよ。王太子殿下の方は神国に1年留学になったんだ。」

「まぁ、お祖母様とお義姉様の祖国にですの?あの国は勤勉で優しい方ばかりでとても素敵な国ですのよ、きっと殿下の糧となりますわ、破談でお寂しい思いしているでしょうから神国は心穏やかに過ごせますので心を癒すには最適の国ですわね。お二人ともいずれは良い方と巡り会えるといいですね。」

「そうだね、いい人と縁が持てるといいね。」

殿下にとって癒すどころかあの国は性に奔放なものにとっては辛い国なのだが、…それゆえ、公爵は罰としてあの国に殿下を送った、実の所、罰というより女性に対する誠実さを学んで欲しいのと、あちらが気にいればだが、神国の第3王女と縁が持てればとの思惑もあるようだ、公爵曰くジュリアス様の奥方の妹姫で姉妹でも容姿は対照的らしい、国王に似た妹姫はエキゾチックな美少女だが上に立つものの品格と目を持っている為未来の王妃に相応しい人格で本当なら是非迎え入れたい姫なのだが、あの国は貞節を徳としているので王太子殿下の心もちと姫の裁量に委ねる事になっている。

アマリリス王女に至っては…生涯修道院から出ることは許されない、それとヴィオには言わないが、悪の頑強であるピンキーニ男爵令嬢はふだんから侍らせていた令息に薬をもり洗脳して金品をねだり、アマリリス王女を言葉巧みに煽り、金を出させごろつきを雇って襲わせた。父親である男爵も娘に客を取らせ金品をせしめていたりと叩くほど埃が出る家だった。

男爵家は取り潰し、男爵は強制労働で被害者に賠償金を払うことに妻と娘は娼館にとの意見も出たが普段からこの2人は娼婦まがいの事をしていたのでそれでは罰にならないと鉱山での労働になった。

「ヴィオ、学園生活も残り少なくなったけど、明日からまたアリスと学園生活を楽しめるはずだよ。」

「ええ、そうね、あと少し…(卒業したら、…エメル様と…結婚できるのね)…ふふ、」

「おや?急に元気が出たね!」

クスクスと楽しそうに笑うヴィオについ目の前に両親がいることを忘れてキスの雨を降らしたら、耳まで真っ赤にさせたヴィオに怒られた…そんなやり取りさえ愛おしい。





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