普通の新婚生活が送りたい。

キャロル

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1章 巡りあい

20 [逸話]ルーナとゼノ

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****ルーナ****

私の娘ルーナは月の女神である次代の月の女神候補として妹のヘラと祈りの舞の稽古に勤しんでいた。天界人には寿命という概念が無い、不老でも不死でもないがただ肉体寿命が長いその為、神の御使い、天使族で7000年、女神男神で10000~15000年と言われ神族は誕生して10000年程経つと力が弱まり自ら役割を次代に継承し魂だけの存在となる。

故に魂のまま浄化の空間に残り生涯、転生を待つ魂の浄化者となるか、消滅するかの2択で転生する事はない。

それ故に長い生を持つ為、子ができても2~3人、しかも子が生まれる場合必ず次代の継承者、女神候補の女が1人その後は全て男が生まれるはずが、なぜか娘が2人生まれてしまった。もちろんどちらも愛しい娘だ!本来10000年の時を経て代変わりをするが、7000年目になり娘達も誕生して150年(見た目は16歳)成人したので早めに継承準備に入った。

本人達の希望もあるだろうが2人に同じく修行させた。継承する方がイアベトスの伴侶となり次代へと繋ぐ事が決まった。
素質は明らかにルーナの方がある、だが、元々女神ではなく仕える側となりたいと言っていたルーナはヘラがイアベトスに思いを寄せている事を知り、身を引くべく修行する事をやめてしまった。その頃天界から中界に時々降りていたルーナはゼノと出会ってしまった。


****ゼノ****

俺は力が全ての魔界を統治する魔王だった。

力が全ての魔界だが代々俺の一族は魔力が圧倒的に多かった為、世襲ではなかった魔国も我が一族が王族となっていた。
見た目は人間と同じむしろ眉目秀麗なものが多くその容姿を使い中界の人間達の醜い欲を刺激し、それを糧として生きている、時々起こる国同士の諍いは主に魔界のものが意図的に介入し起こしている。

人間同士が争い、奪い憎しみ殺し合う、その時に発する黒いオーラが何より我らの力となり糧となる。直接手を下す必要は無いほんの少しだけ囁き力と金を貸すだけ。人間はなんとよく深く愚か!

愚かな人間を見飽た頃、さて!どちらの国を廃そうか?と、両方とも廃そうかと、思案しながら歩いていた。そんな時1人の少女に出会った。美しい容姿に美しい魂眩しいぐらいに輝いていた。

ほんの少しでも黒い心があれば、漬け込み助長させることができるが、彼女には全くなかった。故に興味が沸いてしまった。必死に目の前の怪我人を介抱し、治療する彼女に怪我人を装い近づいた。

すると、彼女は、

「ダメですよ!ここは、自分で、治せない方たちを治療する場です。あなたは治癒魔法が使えるでしょ!」とニコリと笑い

「さあ、暇ならあなたも手伝って!せっかくの力使わないとね!」と強引に手を引き手伝わされた。

「この俺に指図するか!」
と言えば

「え~指図なんかしませんよ!この人達の傷なんか、簡単に治せちゃうでしょう?クス、できないなんて、そんなことないですよね~」

気がつけばすっかり少女に乗せられ治療が済むどころか戦いまで収束してしまっていた。

その場を去ろうとした少女につい俺は、

「俺はゼノ、お前は名は何という?」
と、聞いていた。今まで、女に自ら名乗ったことも名を聞いた事もないのに。

「ルーナ、今日は手伝ってくれて、ありがとう。」
と言い去って行った。

それから、何度か中界に出向きルーナを探していた。が何処を探しても見つからなかった。この頃すでにルーナに惹かれていたんだろう、次に会えたのはそれから、200年経っていた。そこで初めてルーナが中界の人間じゃないことに気がついた。
それからの俺は必死にルーナを口説いた。それはもう必死に、念願叶い俺の思いを受け入れてもらい、初めて愛を知り怖さを知った。

ルーナの愛を失う事を。

俺とルーナは対極の世界に生きるものだ。2人で話し合いお互いの世界を捨て中界で生きようと決めた。
その代償が寿命。ルーナの10000年程ある時間が残り1000年になってしまった。
それでもルーナは
「短くなってしまったけど、私にとってゼノとの1000年は天界での10000年以上の価値がある。1日でも1時間でもあなたと共に生きることに価値がある。」と言ってくれた。

俺は魔界の王を強引にNo2に譲渡し俺たちを邪魔したり危害を加えたら魔界を滅ぼすと釘を刺しルーナと共に中界の森の奥で静かに暮らしていた。

俺達は幸せだった。あの日まで、

俺以外の4天王と呼ばれる4人は力が拮抗していたがルーナと暮らして700年を過ぎた頃から、魔界で諍いが始まりそれが中界にも影響を及ぼし、あちこちで戦争が始まった。そんな、1度だけ手を貸して欲しいと魔界より使者が来た。

1度だけだと言い、王城に向かうが途中結界に異変を感じ急ぎ戻ったら、ルーナの姿が見えなかった。争った後があるから攫われたようだった。すぐ追跡すると魔王城に 気配を感じ急いで王城に向かった。城に着くと首謀者が、ガン首揃えて待っていた。

「よくぞ!お戻りなられた、わが王よ!」

「ふざけたことを、ミノタロス!ルナはどこだ!」

「あのものは王にふさわしくありません、」

「お前が、決めることではない!もう一度聞く!ルーナは何処だ」
魔力で威圧すると、ガタガタ震え出す、

「あ、あのものは夫と名乗る天族と共に、、、」
ブルブルと震えながら、俺の後ろを指さした。

「ここだよ!君が中々ルーナから離れてくれないからルーナを探せず苦労しちゃたよ~や~っと離れてくれて、ルーナを探知できた。僕の妻になるはずだったんだ!返してもらよ。さぁ、魔王ゼノ選択肢をやろう、お前が、魔王に戻りルーナを俺に返すか、断って、ルーナと共に死ぬか!どうする?お前が魔王に戻ればルーナは殺さない!」
ルーナを後ろ手に縛りナイフを首に向けていた。

「卑怯よ!イアベトス!死んでもあなたなんかの者にならない!」
ルーナはイアベトスの足を踏みつけ怯んだところで逃げ出しこちらに走ってきた。そのルーナ目掛けてイアベトスは持っていたナイフを投げた。ザクっとルーナの方に刺さった。

「ハハハ、僕から逃げるなんて、ひどいなぁ、思わず刺しちゃったじゃないか~そのナイフには特別な毒が仕込んである。7日後の死ぬ、解毒は僕しかできないよ。欲しくなったら、呼んで。僕の者にならないなら死ぬがいい」

と言い放ち消えた。

意識が途絶えるルーナ腕に抱き、俺は、怒りで魂が震えたのを感じた。(あゝ、これが怒りの感情か)

その場にルーナを横たえ、強力な結界を施した。

「俺たちの安寧を邪魔するなと、邪魔だてするようなら滅ぼすと言ったはずだ!言葉通りにしてやろう」
強大な魔力の前に赦しを乞う者、逃げ出す者、容赦なく殲滅した。
あっという間に魔界そのものが消え去った。




ルーナを連れ2人の住む森に帰った。

穏やかな2人だけの時間が過ぎていった。

余命後り1日、ルーナは
「ゼノ、私はとても幸せな時間を過ごせてるから、後悔はない、あなたと出会えて良かった。愛してるゼノ。あなたが天命を終えて、また、出会えるといいわね、フフフ」

「ルーナの居ない世界で生きていても意味はない、価値もない。」

「だめよ!生きて、きっと、私と巡り会えたように、また、素敵な人に巡り会えるかもしれないでしょ。」

「ルーナ以外いらないルーナじゃなきゃ嫌だ」

「困った人ね。」
だんだん弱まるルーナに
「ルーナ、お願いがある。俺欲しい物があるんだ」

「なぁに、私にあげられる物なら、何でもあげるわよ」

だんだんと力が無くなっていく手を額に当てながら

「ルーナ、ルーナの永遠の時間と永遠の愛を頂戴」

「フフ、私の愛と時は既に貴方だけのものよ!私は永遠にゼノを愛してるわ」

「なら、次の生でも巡り会えるように結んでも言い?」

「え!ええ、そんなことできるの?おとぎ話見たいね。」

そんな綺麗なものじゃない執着じみた呪いなのにと無邪気に笑うルーナにチクリと胸が痛んだ。俺のせいで本来の長かった寿命を減らし更に命を失う事になった。でもどうしても手放せないんだ。どうしても……。



ルーナに残された時間も残り僅かとなり、儀式を始めることにした。

お互いが真に愛し合ってなければ成功しない、しかも来世で清い体で巡り会い繋がり魔力交換して完了する2段階儀式。次の転生は発動者である俺しか記憶を持って転生しないから、必ずルーナを見つけ儀式を完了させなければ!成功すれば未来永劫転生してもお互いに記憶を引き継ぐことになる魂の腕輪が装着される。1度装着されたら転生は同じ世界の同じ世代に転生し、生まれた時から腕輪があるので当然記憶付きとなる。

必ず見つける!


そして、お互いの魂を一部交換して俺の全魔力を注ぎ魔法陣を展開させ発動させた。
魔法陣の消滅と共にルーナと共に生を終えた。


2度目の転生を待ち侘びて……。愛するルーナとの未来を……。







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