[完結] 伴侶は自分で選びます。

キャロル

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25 説得

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「どう言う事か、馬鹿な俺にもわかるように説明してくれ!何故だ!どうしてなんだ。」

現在私は大きい方グラシオスに壁ドンならぬソファドンされている。

「ち、近い…これじゃ話しづらいよー。ちょっと離れてくれない?と、隣に座りなよ」

なんとか宥めて隣に座らせて、……さて、どうしようか?困った。お兄様を連れて行くことの許可をもらう事に重点を置いてのお母様へのお願いだったから、正直グラシオスとアイルスの事はアルスト様に丸投げしていた。

この様子ではアイルスは概ね承諾したがグラシオスは納得できなかったようねぇ。うーん。

「兄上と共にここにしばらく居るはずではなかったのか?それがなぜ?兄上と共に東国に行くことになっている?ダンテ侯爵の所ならまだ、我慢もできよう。少し距離があるが会いに行ける。しかし東国となると話は別だ!なぜ東国なんだ!あそこでは会えない所か手紙も個人的には送れずまた国王経由で送らねばならない。それに国内に入られたらリリィの気配すら感じる事ができなくなる。お願いだ…リリィ行かないでくれ…ここに居てくれ」

憤っていた顔から悲痛な顔になる。悲しませたいわけではないけど、……ここにいてくれ…か、私が欲しいのはその言葉じゃない。

「今のは私の居場所ではない!その意味がなぜかわかる?私はこのままここに居てどうするの?何をするの?」

「……。」

やはり、まだ時間が必要ね…。

「その意味がわからないんじゃ、ただここにいても意味がない。東国には私の存在理由がある。必要としてくれてる人がいる。」

「俺もリリィが必要だ!」

「必要?なぜ?何の為に私が必要?まさか。番だからとか子供作る為とか言わないでよね!そんな事がここにいる理由だなんて言うなら、二度とには会わないわ。」

「……。リリィ」

「もう一度、聞くわ!私が望む答えが聞けなければ、予定通りトーヤさんが迎えに来たら東国に戻ります。グラシオス、私が必要な理由は?ここに残る意味は?あなたにとって私は何?」

「………、」

まさかの無言ですか…意地悪したいわけではないんだけど、たった一言でも気持ちを言葉にしてくれれば、……私自身自分に自信がないから、番と言う目に見えない繋がりだけでなく言葉が欲しかった。ねぇ、あなたは私からの言葉は欲しくないの?
あなたにとって私はただの番というただそれだけの存在なの?

私は既に…あなたを………るのに。

「残念だけど、答えられないことが答えよ、今のあなたにとって私がここにいる理由もなければ意味もない(今はまだ)そう言うことよ。でも手紙は書くし、時々ここにくるから、会えるわよ。じゃぁ、元気でね。」

下を向き項垂れるグラシオスを1人部屋に残し私は母の所に兄を迎えに行った。



お母様の所には当然ながらアルスト様が居た。

この2人を見ていると余計に言葉が大事だと思い知らされる。番を持つ種族は2つ竜と狼、どちらにも共通するが総じて言葉が足りない。

番という絶対的な繋がりを持つゆえか、「愛してる?そんなの口にしなくたってわかるだろ?番なんだから?」という考えが多い。そんな訳はない、確かに番という繋がりは絶対だが、繋がりがあるから愛してる?そこは別ではないですか?と言いたい。とかく人族は気持ちを言葉にして欲しい、全てが本音ではない事もああるが気持ちを言葉にすると安心するのは間違いない。何のために言語があると思っている、

“言わなくてもわかるだろ?“

そんなのわかるわけあるか~!

アルスト様はとかく母に愛を囁いている。人前だろうがお構いなしそんなアルスト様に照れながらも嬉しそうな母を見ていると幸せな気分になる。
きっとそんな親の影響か、とにかくアイルスは態度でも言葉でも愛を表現してくる。これが成人してたら私は既に籠絡されているだろう。ただ、まだ子供だから、という線引きが私の中にあってアイルス自身も感じているのとアルスト様の説得もありこちらは納得してくれていた。

「リリィ、もう言ってしまうのね」

「ええ、先ほど通信が入り城の城門前に着いたようで今、待っていてもらってます。」

「そう、寂しいけど、時々会いに来てくれるんでしょ?待っているわ」

「はい、アイルスにも手紙書くし会いにくるから、ちゃんと勉強も稽古も頑張るのよ。」

「…リリィねぇ……リリィもお仕事頑張ってくださいね。必ず会いに来てください。僕が大人になるまで待っててくださいね。リリィ…大好きです。」

「ええ、待ってる。私も大好きよ。」
ぎゅっと抱きついてくるアイルスを抱きしめ返しながら、頬にキスをした。すると

「リリィ、キスはここにお願いします。キスが欲しいです。」

唇を指しにこりと笑う……、あいつグラシオスが言ったんだな、アイルスは妙に感がいいからなぁ (苦笑)
番は公平に扱わないとね。

「いいわよ」

アイルスの頬に手を当て唇にしっかりとキスをした。

「_っつ」

普段は平然とじゃれついたりキスしてくるくせに…ふふ、真っ赤になって…可愛い

「じゃぁ、お兄様いきましょうか…」

「ああ、行こうかリリィ」

私たちはアルスト様の家族に見送られ城を発った。

……グラシオスは見送りには来なかった。
私はアルスト様にグラシオスに少しキツいことを言ったので後の事をお願いしますと言葉を残しツキンと痛む心に蓋をして東国に向かった。
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