[完結] 伴侶は自分で選びます。

キャロル

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20 攫われたリリィ 続続続

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私は兄の姿を見てどう切り抜けるか考えていると突如体に痺れを感じ意識が遠のいた。

次に目覚めた時には体がはりつけにされていた。

「やっと目が覚めたんですね。もうすぐ姫様の番がここに来るでしょう。クククク」

「あなた、…何をする気なの?これじゃぁ話が違うじゃない!」

「何も違いませんよ。計画通りですよ。流石に竜族とまともに戦う程愚かではありませんからね。ふふ、目の前で傷つけてあげるんですよ!選ばせてあげるんですよ、あなたの命か王太子ご自身の命か、当然ご自分の命を犠牲にあなたを助けようとするんでしょうが、絶命直前に王太子の目の前でお嬢様の命を奪って差し上げますよ。」

そういって私の服を胸元から縦に切り裂いた。

「ほう、番にあって紋様が変化したんですね、とても美しい、これが初代竜王の紋様……」

また、意識が遠のいた……。





ドォーーンと物凄い音とグォァアーーと咆哮が聞こえ目を覚ますと、…体が動かない…手足をはりつけられていたんだった。

そうだ!服が切りつけられ、…よかった、辛うじて胸が…隠れてる?…なんて呑気に恥じてる場合じゃない!

激しい咆哮が神殿中に鳴り響き大気が震える

何?…あれは…グラシオス?……半竜化?…している…嘘!どうしてここに?頭にハテナマークだらけで困惑していたら、

『リリィ…タスケル…マリョク…カイホウ…スル…』

『ルビー?ルビー!来てくれたんだね!ありがとう…』

『トーヤモイル…リュウ…アバレテル…アイダニ…リリィ…タスケル』

う、うん、聞きたいことはたくさんあるが、とりあえず、魔力制御解除してもらって、グラシオスを鎮めないと神殿が崩壊するわ。

『…うん…ありがと』

アイツはグラシオスが助けに来るところまでは計算だったらしい。流石にいきなり半竜化したグラシオスが突入するとは思わなかった見たいね。突然攻撃されて、対話するまもなく防御するので手一杯でおそらく、私を傷つけると脅し、グラシオスを無抵抗にしたかったようだが、今のグラシオスには話は通じないというより聞こえないと言った方が正しいかも。

竜族は特に嫉妬深いから、私の肌を晒したのは悪手だったわね。

「リリィ、無事で何よりだが、ほら、これ着ろ。そんで、そろそろ、あれグラシオスをなんとかしてくれ、アレはやばい!俺では無理だ。これ以上は収集できなくなる。」

トーヤさんは上着を貸してくれた。そういえば、半裸だった…ははは。

「トーヤさんも来てくれたんだ、ありがとう。グラシオス止めてくるから、そこの水晶の中にいるお兄様をよろしく」

「え?は?兄?…まじか……よくわからんが、おお、守っとくよ」

私は兄をトーヤさんに任せ、グラシオスの元に行き、半死状態のアイツを引き剥がし…意識をこちらに向けるため大きな声で名前を呼んだ。

「グラシオス!グラシオス、私を見て!」

一瞬ピクリと反応し、動きを止めたが、また、アイツのところに行こうとした。これ以上やったら、死んでしまう。アイツのしたことは許せないが、死んで欲しいわけではない。罪はきちんと生きて償って欲しい。

「グラシオス!もういいの、ありがとう。」

グラシオスは怒りで自我を失いつつも私の声に反応してくれたことが素直に嬉しくて思いっきり飛びつき自らキスをした。
強張ってたグラシオスの体がみるみる緩み私を抱きしめ返し竜化がとけ、顔を綻ばせ何度も啄むようにキスをしてきたが、頑張ったご褒美だと思い好きにさせていたら……調子に乗って舌を入れてきたところで鳩尾に一発お見舞いしてやった。

「うぐっ!ひどいよ!リリィ、……あ!その上着トーヤのだろ?俺のに替えて欲しい。」

酷いのはお前だ!助けにきてくれたご褒美だと思いギャラリーがいるのに羞恥心を我慢していたのに、

「わかったから、とりあえず離して!もう充分満足したでしょ、……来てくれて、嬉しかった。」

竜化で一部背中が破けたグラシオスの上着を羽織り、(トーヤさんの上着の方がよかったが)胸元隠れてるから良いことにした。着替えた後、……ご満悦のグラシオスだが抱っこはやめる気がないらしい。

「おい!お前ら、イチャつくのは後にしろ!!…リリィ、アイツはカイン様に任せたから、東国預かりで裁きを受けてもらうことにした。それで、……これの説明してくれ。」

「別にいちゃついてたわけじゃ、……ナイ……、ケド…コホン!これは私の兄です。本物の」

「本物?叔父上アルストの話ではその、リリィの父上を…」

「違いますよ。父を刺したのは兄ではありませんよ」

「「え?どういうこと?」」

「当時、父を刺したのは幻術で兄の姿になっていたアイツの部下です。母が自分の子が父親を殺めたと世間に知られこれ以上心痛めぬようにアルスト様が罪を被ることも私が父の仇と恨みを助長させることも全て計算でした。兄は本能的に身の危険を感じ特殊魔法を発動させて、身を護ったようでかなり高度な防御魔法だけど、おそらくルビーなら解除できると思う。ただ、15年時が止まったままだったから、これから兄をどうするか、母とも相談しなければならないんだけど、私よりは当時の容姿のままの母が説明した方が兄も受け入れやすいと思うから、……このままレイ王国に運んで向こうで解除しようと思うの。どうかな?グラシオス」

「もちろん!いいに決まってる。」

「よかった、ありがとう。また暫く王城にお世話になるけど、私毎日ルビーと一緒に寝てるの、向こうでも一緒にねられるように国王にルビーの滞在許可ももらってくれる?」

「……滞在はもちろん許可されるが、……ルビーと寝る?……同室は…嫌だがどうしてもと言うなら…いいが……そいつ雄だろ?…一緒のベットは…承服しかねる……」

ムッとした顔しなくても……雄って、フェンリルだよ?そこも嫉妬の対象?

「…リリィ、竜族は獣人の中でとびきり嫉妬深い、今後のお前のために言っておく、ルビーは別室にしろ。ルビーはお前が近くにいれば隣の部屋で問題ないはずだ。なっ、悪いことは言わない、俺のアドバイスを素直に聞いとけ!」

「…わかった。」

「グラシオス、ルビーは隣の部屋で休んでもらう」

『ルビーとなりの部屋でいい?』
『…イイヨ…ボクモ…ベツガ…イイト…オモウ…トーヤトオナジ…オモウ』
『そう?なの?』

ルビーと別でいいとグラシオスに言うと嬉しそうにルビーにはいい寝具を用意すると笑顔で言われた。

………。

トーヤさんは報告のため東国に向かい、私は兄をグラシオスに持たせレイ王国に向かった。
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