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16 侵入者

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ルビーとの生活は枯れ気味の私の心に癒しと潤いを与えてくれた。絡み合った糸が解れて行くように心が軽くなっていった。スベスベもふもふの効果は敵面…その極上の手触りに無意識で撫でてしまう。

いつもは厄介な依頼が多くて面倒な方だが、今回ばかりは心の底から感謝しています。
国王様じいさんありがとう!)

トーヤさんがギルドの依頼で暫く東国を留守にしているので、ルビーが私の相棒として、店に出勤しています。

このイケワン(世間の皆様には大型ワンコに見えるらしい。つい最近まで抱っこできる程愛らしかったが今ではかなり大きくなった、まだまだ大きくなるらしい。)世の多くの女性を魅了しホストとして売上に大きく貢献してくれています。

そんなルビーとの日々は凝り固まった私の心を少しずつ解してくれていた。今ではすっかり元気を取り戻し、魔道具作りに性を出している。そんな穏やかな私の生活を送っていたある日…。


『ルビー、これを国王様に届けてくれる?急ぎの品らしいの、出来次第届けるように頼まれちゃって、お願いできる?』

『マカセロ…』

『じゃぁ、お願いね…戻ったら、一緒におやつにしましょう、ルビーが戻るまでにはこの仕事も終わらせておくわ』

『オオ、イッテクル』

ルビーが店を出たあと、暫くして…来客を知らせるドアの鐘が鳴った。

__カラン__

「いらっしゃいま……せ……あなたは、?……」

「お久しぶりです。姫様。姫様が中々私の思惑通りに動いてくれないので、こうして馳せ参じましたよ。…私があれ程……あんなに言い聞かせましたのに、……残念です。憎むべき相手に簡単に心許してしまうなんて、番とは難儀な者ですね~その力があればあんな奴ら簡単に滅ぼせるのに、…さっさと王弟アルストを始末してくれればいいものを、せっかく私がクインズ国王リリィの父を……やはり貴女は私が育てるべきでしたね…ククク、ちょっと目を離した隙にグラント王国の騎士団長の手に渡ってしまった。おかげで、かなり予定が狂ってしまいましたよ。20年前姫様が両翼の紋様を持って生まれてから少しずつ貴女にかけていた呪術もあの2人の番のせいで弱まり、…なぜか完全に解けてしまっているではありませんか。全く余計なことを、私の長年の計画がパーですよ!」

計画?呪術?な、何を言っているの?どういうこと?……解呪されてる?もしかしてルビー?

「…長年?20年前?一体どういうこと?貴女はかつての母の専属執事で私の世話係だったでしょ、なのに、…計画?どういうこと?まさかあなたなの?父と兄を……、王弟じゃないの?なら、なぜ?父の命を奪っのが王弟じゃないなら、王弟が謝罪した時、母は否定しなかった。」

「ああ、でもクインズ国王に手を下したのは私ではありませんよ。確かに貴女のお父上がお母上に手を挙げて王弟が怒っていたのは事実ですけどね、実際、手を下したのは他でもない幻術で貴女の兄に化けた私の部下ですよ。ですが、お母上はご自分を庇い愛する息子が父親を手にかけたと思ったんでしょう、息子を逃し死んだ事にしたんです。その事実を知られないために、番であるお母上の心を守る為に。それが正しいとは思えませんが、あえて王弟は悪者になったんでしょうね~くだらない正義感で、でもまぁ、その行動も計画通りでしたが、ククク……ああ、ちなみに王子あにの安否は今後の姫次第ですよ。」

「…計画ってどういうこと?あなた目的は何?」

「目的?分かりませんか?散々言い聞かせたでしょ、クインズ王国とレイ王国の破滅と混乱ですよ。私は貴女のお父上も獣人もどちらも憎い、彼らは私から愛しい人を簡単に奪っていくんですよ。私から獣人は母を奪い、貴女の父と王弟は私の愛するマリア様を奪った。彼女は私の者になるはずだったのに、せっかく魅了薬でクインズ王ををマリア様から引き離したのに、まさか王弟の番になるなんて、もう少しで手に入るはずだったのに!……せめて姫には当初の計画通り番である獣人2人に廃人になってもらうべく協力してもらいましょうか?魔力では流石の私も敵いませんから、魔力制御の魔道具をつけてもらいますよ。大人しく着いてきてもらいましょ、兄上の為にね。」

……今はコイツの話が本当か判断するすべはない。どうしよう。本当に兄が生きていたのなら、私のように呪術によって恨みを植え付けられているかもしれないが、どうすればいいの?念話でトーヤさんに伝わるといいけどちょっと遠い微かに届いたかな、ルビーには届いて既にこっちに向かってるけど、…間に合うかどうか、最悪間に合わなくても、ルビーなら私を見つけてくれるかもしれない、魔力を封じられても剣さえ手に入ればなんとかできる、なんとかしなくちゃ。グラシオスとアルストは巻き込みたくない。

「考えてる時間はありませんよ!さぁ早くつけてください。」

「わ、わかった…わ」

ルビーは…間に合わなかったわね。

魔道具をつけた瞬間、どこかに転移していた。




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