神様の気遣いで転生したら聖女のペットに……。明日からは自立のため頑張って働こうと思う。

太陽クレハ

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五十六話 ペラート草。

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 挑戦するにあたって、まず土の違いを知りたいと思って、リナリーにお願いしサンプルとして魔物が住まう領域の土をいくつか手に入れてもらった。

 そして、手に入れた魔物が住まう領域の土を観察した。

 正直、そこら辺の土との違いが全く分からなかった。

 魔物が住まう領域の土であるのだから、プラムの推察通り魔物の血肉などが養分となっている?

 だとすると、人工的に作り出すには魔物を入手して検証してみる必要がでてくる。

 またリナリーにお願いして魔物を手に入れてもらうと言うのも面倒に思えてしまった。

 それによくよく考えるとプラムの推察と同じことをしても遅いよな。

 もはや最初の壁で面倒になってしまって諦めそうだったが……。

 せっかくリナリーに魔物が住まう領域の土を採取してもらったので……ペラート草を栽培してみた。

 ペラート草は論文通りに魔物が住まう領域の土で栽培することができた。

 栽培が成功したペラート草を見ていて、疑問を抱いたのだ。

 魔物の血肉などが養分となって土に含まれているのだとしたら、リナリーがサンプルとして採取してくれていた場所すべてで魔物が死んでいた?

 あり得なくもないが、小さな疑問となった。

 そこで他の要因があるのではと考え始めた。

 まず俺は魔物の領域とそうでない場所がどう違うのか考えてみたのだ。

 魔物の領域とはつまり魔物が住んでいる場所である。

 魔物はマナが空気中に多く含まれる場所を好んで住み着くようなことをアリアが言っていた。

 だとすると、土にもマナが染み込んでいて、それでペラート草が栽培することに重要な要素ではないのか? 

 そう考えた俺は実際に普通の土(花壇の土)でペラート草を育ててみることにしたのだが……。

 見切り発車してみたものの、よくよく考えると……どうやって土にマナを染み込ませることが出来るのか具体的どうやればいいのか分からなかった。

 考えた末に……とりあえず、一日に三回ほど無駄に多い俺のマナでペラート草を育てる植木鉢ごと包んでやることにした。

 なんとなく見切り発車したにも関わらず結果から言うと最上であった。

 俺の仮説であるマナを含んだ土がペラート草の成長を促すと言うのは見当違いという訳ではなった。

 ただ、一日に三回植木鉢ごとに大量のマナで包むのは非効率的過ぎて、実用性が全くない。

 てか、そもそもマナを大量に使える人間が居ないとリナリーから突っ込みを食らってしまった。

 そこからはマナの消費量を軽減する改良を考え試行錯誤したが……結局、うまく行かなかった。

 それで、プラムがアリアの屋敷に遊びに来た時に相談してみたのだ。

 相談したら、プラムに素晴らしい試験の成功例だと驚かれた……。

 プラムも論文に掛かれていた魔物の血肉を土に混ぜて人工的に魔物領域の土を再現できないか試験を繰り返していたようだがうまく行っていなかったようだ。

 まぁ互いにうまく行っていなかったこともあって……成功に対する利益を半々にしての共同研究にしないかとプラムの方から持ち掛けられて、俺が承諾した。

 それからさらにいくつかの検証を繰り返す中で魔物から排出される魔石を土に混ぜ込むことで、効率的に土へとマナを吸収させることが出来ることが分かった。

 今は魔石の配合を変えた肥料をいくつも作って、それを普通の土に混ぜて、ペラート草の成長具合を見ながら実用レベルの人工的に魔物領域の土が再現できないか検討している最中なのだ。

 実は、あともう少しで実用化できそうなところまで来ていたりする。

 プラムが一つの植木鉢を手に取って、言葉をかけてきた。

『この植木鉢のペラート草はかなり成長速度早いね』

『あぁ……それはプラムが持ってきてくれた肥料を使ったものだな』

『えっと、B-1ね……確か魔石を細かく砕きと魔物の血、乾燥した草葉を混ぜて押し固めた肥料だった』

『うむ、検証結果からすると魔物の血を少量加えた方が良いようだな』

『んーそうだね。次は今回の検証結果を受けて魔物の種類を変えて見たりして新たな肥料を作ろうか。今回は魔石の削り方をいろいろ変えてみた肥料を持ってきたよ』

 プラムは背負っていた魔法学園のバックから巾着袋をいくつか取り出して地面に置くと、開いて見せてくれた。

 巾着袋の中にはチョコボールサイズの白い塊が入っていた。その白い塊こそがプラムが調合してくれた肥料である。

『ん? マナは込めてあるのか?』

『あぁ、こっちのはね。僕やアリアクラス……人間の中で上位のマナ量を保有している者でもマナを込めるのに足りているのか? それと、マナを込める人によって効果が異なったりするのか? それらの検証をしてみようと思ってね』

『あぁなるほどな。俺以外に魔力供給できる人が居れば……この肥料は多く生産できるな』

『ふふ、そういうことだよ。後々のことを考えてね。最終的には中級の魔法二、三回分のマナの量で出来ないかなぁーとか思っているんだけど。そしたら、すごいことになるよね?』

 プラムはアリアへと視線を向けて問いかける。

 アリアは口元に手を当て答えた。

『正直、世の中がどのように転がるのか見当もつきませんよ』

『ふ、そうだな。しかも、肥料の調合を知っている俺達の選択次第で……変わる』

 アリアの答えを聞いた、俺は小さく笑って頷いた。

『ふふ、一番儲かるのは何だろうか? ……一段階目として肥料の存在は隠しつつ、僕が父から農地を買い取って、そこで希少な薬草を密かに栽培して売りさばく。そして、もし肥料の存在がバレたら……二段階目として調合などを伏せて肥料自体を高額で売りさばく……って言う手順が儲かるかな?』

『おぉ。それは凄そうだ』

 プラムの今後の金儲けのプランを聞いた俺は驚きの声を漏らして、肥料からプラムに視線を向ける。

 金稼ぎするとか言いつつ、どうやって売り出していくかまでは考えていなかったなー。

 それにして儲かりそうな販売方法だな。

 プラムには商才もあるのだろか?

『そうだろ?』

『んー』

 プラムはドヤ顔で胸を張って見せる。対して、アリアは少し渋い表情になった。

『ん? アリア、どうした?』

『いえ、医療に携わっている私としては肥料が完成しさまざまな希少な薬草の養殖ができるようになったら……すぐにでも安定して安く手に入るようになればいいと思うところなんですが』

『まぁ……その考えも間違えないな。そうだ、薬師を抱え込んで多く作った薬草で薬を作って独自に安く売り出すのはどうかな?』

 アリアの意見を聞いて、俺は咄嗟にあることが浮かんで言葉にする。

『それも……アリだね。高い薬草をそのまま売るのではなく薬にして売ろうって話か……安定的に大量に薬草が手に入る設備ができるとなると……そっちの方が良いかも知れない。うんうん、素晴らしいな……ノヴァ、君は頭がいいな』

 プラムは感心したような表情で褒めてくれた。

 俺としてはスーパーとかで売っている余った食材で作った調理惣菜が頭に浮かんで口にしただけだと言うことは黙っていようと思う。

 それから日が沈むまで、今後どうして行くかについて俺とプラム、アリアの三人で話し込むことになったのだった。

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