神様の気遣いで転生したら聖女のペットに……。明日からは自立のため頑張って働こうと思う。

太陽クレハ

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四十七話 居なくなる。

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『ヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒキヒ』

 ディレークの独特な笑い声が俺と……たぶんアリアの頭の中にも響いた。

『な……』

『!? ……何なんだ?』

 突然、頭の中にディレークの独特な笑い声が響いたことにアリアと俺は目を見開いて……驚く。

 そして、互いに驚きの声を漏らしていた。

『ヒキヒキ……あー笑いすぎましたわ。すんまへん。それで……それ【ハーネットの指輪】でしゃろ? ちなみにその指輪は密談するためのもんちゃんやで? 会話するためのもんや音波を拾うスキルがあったら、割り込むことも簡単やで?』

『『……』』

 ディレークの言葉を聞いて、俺とアリアは黙ってしまった。

 ただ、ディレークの言葉は続いた。

『それとな。ここにはメイドさんと岩の爺ちゃんを含めておっかない奴がおるな。けど、あんまり期待しない方がええで? あと数分はここにはこれんように眷属を調節してんねん。弱っているアリアの嬢ちゃんならワイでもいけるかとおもったんやが。誤算やったわ……予想よりも猫ちゃんが強かった。やで……もう切り札使わせてもらいますわ』

 切り札と聞いて俺は嫌な予感が当たったことに、内心舌打ちをする。

 ディレークは俺達を見ながら笑みを深め、パチンと指を鳴らしてみせた。

 すると、黒い煙がディレークの横の辺りに出現した。

 数秒後、黒い煙が消え去って表れたのは……見るからに高価そうな赤のワンピースを身に着けた、金色の髪の女性だった。

 その金髪の女性は手足を鎖で繋がれていて……目と口が布で覆われて「んーんー」とうめき声を上げている。

 なんだ?

 彼女が切り札なのか?

 少なくともディレークよりは脅威を感じることはないんだが?

 何か彼女にはあると言うのか?

 俺が疑念を持ちながら、ディレークの方を警戒していると……。

 隣にいたアリアから声が聞こえてきた。

『まさか……あの方はマチルダ様?』

『アリア? あの女性を知っているのか?』

『いえ、目と口が隠れていますから確証はできませんが……おそらく、彼女は私と同じ聖女のマチルダ……マチルダ・ファン・シルベス様かと』

『聖女がなんだ? なんで、アイツに捕まっている?』

『わ……私にもそれは』

 俺の疑問にアリアも困惑したように言葉を濁した。

 そうしていると、ディレークがパチパチと手を叩きだした。

『その通りやで。それにしても、アリアの嬢ちゃんは頭いいんやな。まだ数えるほどしかあったことないんやないか? マナも大量にもっとって頭脳優秀や……ヒキヒキ、この子とは大違いやな。あ……けどな、けどな、この子な……すごい嬢ちゃんのこと嫉妬しとったんやで? 知っとった? ヒキヒキ、近くで見てて無様で滑稽やったでー。まぁー精神誘導もちょこっと加えたりしたんやけど』

 ディレークが一人で長々と話し出したことはよくわからなかった。

 しかし、あざ笑うようにしていた語り口調に俺は耐えられなくなって、ディレークの言葉を遮った。

『……何を言っている? いや、そんなことより……その子をどうするんだ!』

『どうするか……やて?』

 俺の問いかけに、ディレークは口元を三日月のように歪めて……懐から黒い結晶が付いたナイフを金髪の女性の胸元に突き刺した。

『『な……』』

「っつ!【ファイヤーボール】」

 ずっと蚊帳の外に居たワンダであったが、女性が刺されたのを見ると、一番にディレークへと火属性の魔法である【ファイヤーボール】を唱えた。

【ファイヤーボール】は文字通り、火の玉を形成して相手に放つ魔法。

 ワンダが手を前に突き出すと手の平から三つほどの火の玉が形成されて、即座にディレークへと発射された。

 しかし、ワンダが放った火の玉はディレークに着弾することはなかった。

 ディレークは上空に飛び上がって躱してしまったのだ。

「ヒキヒキ、危ないなー。やけどしたらどうすんねん」

「その子に何をした! 悪魔!」

 ワンダが飛び上がっていくディレークに向かって声を張り上げた。

「何ってこの子が望んだことやで? ワイは願い事を叶えてやっただけですやん。まぁ……やけど、召喚した悪魔とはちゃんと契約を結ぶべきやったなーマチルダさん」

「何を……」

「まぁもういいですわ。ワイはこれで。ほな、さいなら……もう会うことはないやろ」

 ディレークはその場にいた俺達を見回して行儀よくお辞儀した。

 そして、また黒い煙がディレークの全身をつつみ、十秒後黒い煙が晴れるとディレークは忽然と居なくなっていた。



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