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四十一話 はーじーまーるーよー。
しおりを挟む戦闘部門の決勝も表彰式も終わった。
そして、少しの準備時間の後。
円形闘技場の舞台にマイクを持った若い女性がスタスタと歩いてきた。
そして、円形闘技場の舞台の中央に立つと、一度咳払いをして持っていたマイクに向かって声を発した。
『ようこそ! 暇人ども! ピオニール競技会のメインイベントである実技部門の競技が始ーまーるーよ!』
「「「おおおおおおおおお!」」」
マイクを持った女性が声を発すると、観客が熱狂の声を上げていた。
その観客の声に驚いた俺が周りを見ると、いつの間にやら円形闘技場の観客席には立ち見客が出るほどに人が集まっている。
『ふふふ、毎年……毎年、ほんと飽きないよなぁ。暇人ども! 進行はこのワンダが務めさせてもらう。それで競技説明する前に言っておきたい。賭け事はほどほどにな! 特にガリバー先生、生活費には手を出すなよ!』
「!!」
「「「ハハハ」」」
マイク持った女性……ワンダがマイクを持っていない手をバッと上げて観客席の方を指さした。
そして、観客からは笑い声が上がった。
ワンダが指さした方向には、紙を丸めて持っていた茶髪の男性……おそらくガリバーが居た。
そのガリバーは視線が集まって、見るからに動揺した様子だった。
『ふふ、では、競技説明を始めよう』
してやったりとした様子のワンダから実技部門の競技説明が始まることになった。
実技部門の競技は二つに分かれていて……。
最初に出場者全員で三方向から順番に発射されるフリスビーを魔法で破壊する射撃競技。
そして、その射撃競技でより多くフリスビーを破壊することのできた上位者三名が最終競技へと進む。
その最終競技について直前に明かされると言う競技に挑んで勝者を決めるのだとか。
簡単な競技説明が終わると、ワンダの紹介で出場者が円形闘技場の舞台に上がった。
出場者は見た感じ十五人くらいだった。
アリアは周りの出場者に比べて一際小さてすぐに見つけることができた。
出場者の顔見せが終わると事前に順番が決まっていたのか、赤茶色の髪の男子生徒が一人残された。
『ファイヤーボール!』
何かピンマイク的な何かを付いているのだろうか?
赤茶色の髪の男子生徒と思われる声が聞こえてきた。
その声とともに赤茶色の髪の男子生徒は手を上に突き出した。
すると、上空に野球ボールサイズの火の玉が十個ほど浮かび上がった。
『おぉ……すごいな』
『確かになかなか』
フリスビーが三方向から発射されると赤茶色の髪の男子生徒は火の玉を操作してぶつけ、フリスビーを破壊していく。
たまにフリスビーを破壊し損ねることもあるが、素人の俺から見ても魔法をうまく扱えているように見えた。
『これは魔法使いぽいな。うまく扱えているじゃん。これ使えるなら、戦闘部門でも戦えるんじゃないのか? さっき、魔法出すのに時間がかかるって言っていたが、結構早く発動してなかったか?』
『そうですね。彼はリック・ファン・ブレンダー。代々優秀な魔法使いを排出しているブレンダー伯爵家の嫡男ですからね』
『ブレンダー伯爵家が何か関係しているのか?』
『先ほど、私が説明したのは普通の魔法使いについての話です。彼は魔法使いの中でもさらにエリートなんですよ』
『ふーん。せっかく魔法があるのに魔法使いぽく見えるの人はあまり居ないんだな……あ?』
リックが操作していた火の玉が観客席の方に飛んできた。それが目に入った俺はバッと起き上がった。
すると、リナリーが俺の頭の上にぽんと手を乗せた。
『ふふ、大丈夫ですよ』
『本当か? アレ、あの火の玉、小さいとはいえ当たったらかなり痛いぞ?』
『大丈夫。見ていてください』
火の玉は観客席に入ってくる直前で、バシュンっと音をたて消えた。
一瞬、透明な壁が表れて、その壁に火の玉が阻まれたようにみえた。
それから、リックが発射されたフリスビーを破壊し終えて、ワンダが再びマイクを持って姿を現した。
『リック・ファン・ブレンダー。素晴らしい炎属性の魔法であった! 先生はすごくうれしいぞ! それで、競技の結果だが……五十枚発射されたフリスビーの内で破壊したのは三十四枚だ! 誇っていい記録である!』
『……っ』
……先生だったんだ。
俺はワンダが先生だったことに内心驚いていたのが、視線をリックの方に向ける。
リックはワンダに褒められたと言うに表情には悔しさがにじみ出ているようだった。
『では、次の出場者に行こうかな! 次は……』
ワンダもリックが悔しそうであったことに気付いていただろうが、リックの背中を押して舞台からはけていく。
それに入れ替わるように、次の出場者が舞台に上がってきて競技が再開した。
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