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三十七話 王立ロードグラム魔法学園。
しおりを挟む『もうすぐ着きますよ』
リナリーが俺に視線を向けて声を掛けてくる。
今、俺は猫の姿でリナリーに抱えられて、人ごみの中を歩いていた。
だいぶ言葉がわかるようになってきたのだが、猫の姿では言葉を話すが難しいのでリナリーが付けている【ハーネットの指輪】を通して意志疎通できるようにしていた。
アリアの屋敷で住み始めて二カ月経った今日この日にリナリーと出掛けているのはアリアが通っている王立ロードグラム魔法学園にて祭りじゃなくて……。
えっと、えっと、そうだ、年に一度のピオニール競技会という魔法の技術を競う催しが行われるからである。
『前方に見える。あの一際高い建物が王立ロードグラム魔法学園ですよ』
リナリーに言われた通り前方に視線を向ける。すると、まわりの建物よりも大きく、広い敷地に古びた建物が建てられていた。
アレが王立ロードグラム魔法学園か……。
建物はまわりの建物と同様に赤い煉瓦を使用しているようだが、赤は赤でも微妙に色合いが違い。
そして、建築様式も異なっていることから建てられた時代が違うのではないだろうか?
そんな疑問はあったが、俺を抱えたリナリーは魔法学園校門のところで紙に名前を記入して魔法学園の敷地に入っていった。
魔法学園の敷地に入ると外からでは分からなかったが左右がシンメトリーなっている大きな校舎が見ることができた。
ただ、少し残念なのは今日がピオニール競技会であり、校門のところから校舎前あたりにまでずらっと屋台が並んでいることで……シンメトリーで美しい彫刻などが施されている歴史ある校舎の全貌を見ることができなかった。
残念に思うところもあるが、俺は目の前にずらっと並ぶ屋台に視線を向けて気を取り直す。
屋台から流れてくる香りは暴力的にいい匂いだった。
その匂いは二時間ほど前に朝食を食べたというのにもうお腹がすいたと感じるレベルだった。
『リナリー、アレ食べたい!』
俺はリナリーを見上げ、右前脚で一つの屋台を指し示す。
『う……待ってください。アリア様と校門のところで待ち合わせをしているのです』
『ん? そうなのか?』
俺とリナリーがそんな会話をしていると、誰かが近寄ってきた。
アリアともう一人……ピンク色の髪の女性が一緒にいた。
ちなみに、アリアと同じくそのピンク色の髪の女性も魔法学園のエンブレムが刺繍されている紺色のローブを身に纏っているので魔法学園の生徒であることが分かった。
「ふう。お待たせしました」
「アリア。君は、もっと体力つけた方がいいよ? 校舎をちょっと歩いただけでへとへとじゃないか」
「う……このくらいなら、ゆっくり歩けば大丈夫なんですが……」
疲れた様子のアリアを見て、ピンク色の髪の女の子は呆れているようだった。
アリアの友達だろうか? 仲がよさそうである。
「あ、それより。ちょっと、リナリー、ノヴァをいいです?」
「はい、大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
アリアはリナリーに抱えられていた俺を受け取り抱きかかえる。
すると、俺の姿がピンク色の髪の女の子……プラムに見えるようにした。
プラムはボイッシュな顔立ちでショートボムにしているピンク色の髪が似合っていた。
身長はアリアよりも二から三十センチほど大きく百六十センチくらいだろうか? リナリーより拳一つ分くらい低い。
「プラムさん、プラムさん、この子が見せたかったウチのノヴァです」
「……」
「……えっと、プラムさん?」
「か、可愛い……ちょっと撫でていいなか?」
プラムは問いかけるのとほぼ同時に手を伸ばして、アリアに抱えられた俺の頭を撫ではじめた。
「もう、私が答える前にもう撫ではじめているではないですか」
「あ、ごめん。それにしても……このもふもふで%#%#%$#さらさらな%$#%#……素晴らしいよ。アリアがずっと触っていたくなると言っていた意味が分かる」
……うむ、だいぶ言葉が分かるようになったとはいえ、時々何言っているのか分からない言葉が出てくるな。
それにしてもプラムって子の撫で方はなかなか上手いな。
すごく気持ちいい。
自然とゴロゴロと喉がなってしまう。
もしかしたら、家で犬や猫でも飼っているのかも知れない。
「そうでしょう。そうでしょう」
「アリア、その子……ちょっと抱きかかえても?」
「あ、どうでしょう?」
アリアから俺に視線が送られたので、俺は小さくうなずいてみせた。
すると、アリアは俺の脇の辺りをグイッと持ち上げてプラムの前にもっていく。
「大丈夫みたいです。はいどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
プラムはアリアから俺を受け取ると、そのまま俺を抱きしめて背中のあたりのもふ毛に顔をボフンっと埋めた。
まさか、いきなり顔をもふ毛に突っ込まれるとは思っていなく驚いた。
ただ、アリアやリナリーもたまにやることで自体は慣れていて跳ね除けたりはしなかった。
それから、プラムに頬ずりされたり、撫でられたりとされるがままであった。
ただ、校門の前と言う場所なので、行きかう人達の注目を集めて恥ずかしくはあった。
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