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三十三話 オレオレ。
しおりを挟む一分くらい経つと視界を塞いでいた何かが消えたのを感じ取れた。
それで俺は恐る恐る目をあける。
すると、変わらない視線?
いや……違うぞ? 俺が視線を下げると、人間の子供の小さな手があった。
おぉーこれは成功か?
目の前にある手を握ったり開いたりして、動かしてみると……しっかり動いてくれる。
次いで、右手で左手をつまんでみると柔らかい子供の肌の感触そのものだった。
わぁーちゃんと動いている。それにちゃんと人間の肌の感触……。
俺は手や足を動かしてみるが、動きに問題はなく。
更にはカーペットの上で軽くストレッチしてみても問題はなかった。
すげーこれは完全に人間の体だ。
【変身】によって人間に成れたことに素直に感動を覚えていた。
そうしていると、部屋の扉が開いた。
その扉の向こうにはアリア、そしてリナリーが立っていた。
彼女達は俺の姿を見て……しばらく固まり押し黙る。
「「「……」」」
その沈黙を最小に破ったのはリナリーで、すぐさまアリアの前に出る。そして、スカートに隠している短剣を抜いて臨戦態勢となる。
「アリア様、$$%&$!」
「待って……オレオレ」
俺はリナリーをなだめるために手を前に出して咄嗟に弁解しようと声をだした。
ん? うまく声が出せたな。
やはり人間の体の方が言葉を出しやすいのかもしれん。
いや、今は声が出せたことに感動している場合ではない。リナリーが俺に今にも切りかかって来そうなのが問題である。
「%#$#%者は切ります!」
「オレ……ノヴァ」
「何をふざけている、お前がノヴァ%%$&%$! ノヴァは猫です!」
睨みつけてくるリナリーの肩をアリアがぽんっと手を乗せた。
そして、アリアは一度俺を見て、リナリーに声を掛けた。
「待ってください。リナリー」
「え、あ……」
「&$&$%&$違いますが。$#$#、嘘だったとしても、こんな可愛い子が私に$#$#%#$%#」
「……#%#$。ってアリア様、待ってください!」
アリアはリナリーの静止を振り切って、俺の目の前にまでやってくる。
そして、俺の方がアリアよりも身長の低いために、アリアがしゃがんで俺のおでこに手を当てる。
次いで右手の人差し指に着けていた【ハーネットの指輪】の青色の宝石が淡く光って、俺の頭の中にアリアの言葉が聞こえてくる。
『貴方は本当にノヴァですか?』
『はぁ~俺はノヴァだ。アリアよく気づいてくれた、またリナリーとガチバトルする羽目になるところだったわ』
『あの……なんで、その姿はどうしたんですか?』
『ああ。これは俺の【クラウンズスキル】の中に【変身】ってのがあっただろ? それを試してみてこうなった』
『はぁ。そうだったんですね。良かったです。それにしても……』
アリアはジッと俺の顔を見つめてくる。
あー俺の幼少期をイメージしたので、やっぱり目つきが怖いだろうか?
俺はアリアの視線から逃れるように俯く。
『またすごく可愛くなりましたね』
『あ……?』
『いえ、女の子に思えるほどにすごく可愛らしいです』
『俺が可愛くだと?』
どういうことだろうか?
ちゃんと前世の幼少期……五歳の時の自分をイメージしたはずだ。
俺は生まれた時から目つきが悪かったと聞いていて、覚えている幼少期の姿もちゃんと目つきが悪かった。
ハズなんだが?
俺が首を傾げていると、アリアは少し照れくさそうにしながら笑みをこぼす。そして、俺の頭をワシャワシャと撫でてくれた。
『ふふ、私、ずっと弟や妹がほしかったので……なんだかうれしいです』
『……そうか? まぁ……よかったじゃん? それで一個お願いなんだが』
『はい。なんでしょう?』
『俺に着れそうな服を貸してくれない?』
『服……? あ……ひゃわひゃわひゃわひゃわ!』
アリアは俺の顔から視線を下げていき……俺が何も服を着てないことを見る。
すると、顔を真っ赤にして、その顔を隠しながら後ずさる。
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