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二十五話 クラウンズスキル。
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アリアは教会を出て、馬車に乗ってからもずっと考え事をしているようで、一言も話しかけてくることはなかった。
ただ、屋敷についてすぐにアリアの自室に入った。そして、普段かけていない部屋のカギをパチンとかけた。
『どうしたんだ? アリア?』
『いえ』
多く語らぬままにアリアは本棚に仕舞ってあった本を一冊持って、一人掛けのソファに座った。
そして、俺もアリアが座った一人掛けのソファの空いたスペースに滑り込むように座る。
『この本……この本は多くのスキルの一覧が記載されています。そして、大まかな扱い方まで』
『あぁ前に言っていたスキルの本な』
『はい、例えばノヴァの持っていたスキルの内【斬撃】【肉体強化】は取得難度Aのところに記載があります』
アリアはスキルの本を開き、羅列されている文字の一文をなぞって見せてくれる。
まぁー俺に読むことはできないんだけど。
おそらく、俺が持っていたスキル【斬撃】【肉体強化】のことが記載されているのだろう。
『取得難度Aってのは難しいということ?』
『はい。とても難しいです。両スキルともに取得には先天的に生まれ持ってくる場合を除くと。普通なら長く厳しい習練がいります』
『へぇー俺は先天的に生まれもっていたのかな? 習練とやらはこっちの世界に来てやった覚えはないし?』
『そうですね。ノヴァが先天的に持って生まれた可能性も十分あります。ただノヴァの場合、黒い狼やリナリーと戦っていますよね』
『ん? それがどうした?』
『ふふ、強敵との死闘の果てに得ることあるというのも聞いたことがあります』
『強敵との死闘……? あぁ! そういえば、黒い狼を倒したときに……なんかスキルがどうたらって声が聞こえたような?』
『なるほど、その聞こえてきた声というのは私達が『天の声』と呼んでいるものだと思われます』
『へー『天の声』ねぇ。なんか綺麗な声だったような? 気絶する寸前でよく思い出せないな』
俺が『天の声』がどんなことを言っていたか思い出そうしていた時だった。
不意にアリアはスキルが乗っているという本をパタンと閉じる。
『それでここからが話の本題です』
『へ? ここからが本題?』
アリアに視線を向けると、俺を見ていた。
そのアリアのあまりに真剣な表情だったので俺は戸惑う。
アリアはスキルの本の表紙をなぞりながら、俺の疑問に対して答える。
『はい、ノヴァのスキルなのですが、【定変者(さだめをかえるもの)】【火炎龍】【変身】【斬撃】【肉体強化】【巨大化】【食育】の七つがありました。その内、五つ……【定変者(さだめをかえるもの)】【火炎龍】【変身】【巨大化】【食育】はこのスキルが書かれた本に記載がないモノなんです』
『え? それはどういうこと?』
『この本に載っていないスキルというのは……そう言ったスキルのことを誰がそう呼び始めたのかは知りませんが【クラウンズスキル】と呼ばれるのです』
『【クラウンズスキル】?』
『はい……【クラウンズスキル】はなんかしらの理由があって公表されなかったスキルです。その理由は大まかに二つあると思います。一つ目はあまりに異端すぎて危険すぎるスキルである場合、二つ目は誰も取得していなかったスキルを初めて取得した場合などあります……今回問題となるのはもちろん前者です』
『……』
『つまり、異端すぎて危険すぎるスキル……力を持つものは迫害の対象に成り得ると言うことです。私はもう知ってしまっているのでどうしようもありませんが……あまり人には伝えない方がいいです』
『あぁ……そうだな。それはよくわかっている』
『……』
『……』
『ただ……私だけノヴァのスキルを知ってしまって不平等ですね。……私も一つ秘密をノヴァに教えることにしましょう』
『アリアの秘密?』
『はい……このことはリナリーしか知らない秘密です。他言無用でお願いしますね』
『わかった』
アリアはしーっと口元に人差し指を当ててニコリと笑った。対して俺は小さく頷いた。
『……実は、私も【聖光】という【クラウンズスキル】を持っているんです』
『【聖光】? あ……もしかして、それがあったからアリアはスキルについて詳しかったんだな?』
『それはあります』
『……それにしても【聖光】という【クラウンズスキル】というのがあるんだな。それはどんな効果なんだ?』
『んー他に持っている方を知らないので何とも言いにくいのですが……おそらく、常時発動型で聖属性の魔法効果を上昇させるんだと思います』
『そうか、確かに他に持っている人を知らないから効果を検証することも難しいのか』
『はい、そうです。ただ、一つだけ言えるは……私が王国……いや世界でも指折りの聖女と言われているのは【聖光】という【クラウンズスキル】を持っているからだと思っています』
『世界……? それはすごいな』
『はい、すごいです。私の身に余る力だと思っています。ただ、これからが本題です。ノヴァには私が一つでも身に余ると思っている【クラウンズスキル】を五つも所有しているんです。もちろん【クラウンズスキル】の中にも優劣はあるでしょうが。それでも、これほどの【クラウンズスキル】を持って生まれたノヴァには何か天から定めを与えられたものだとしか思えません』
一旦言葉を切ると、アリアはまっすぐ俺を見据えて問いかけてきた。
『……貴方は何になるんですか?』
アリアは教会を出て、馬車に乗ってからもずっと考え事をしているようで、一言も話しかけてくることはなかった。
ただ、屋敷についてすぐにアリアの自室に入った。そして、普段かけていない部屋のカギをパチンとかけた。
『どうしたんだ? アリア?』
『いえ』
多く語らぬままにアリアは本棚に仕舞ってあった本を一冊持って、一人掛けのソファに座った。
そして、俺もアリアが座った一人掛けのソファの空いたスペースに滑り込むように座る。
『この本……この本は多くのスキルの一覧が記載されています。そして、大まかな扱い方まで』
『あぁ前に言っていたスキルの本な』
『はい、例えばノヴァの持っていたスキルの内【斬撃】【肉体強化】は取得難度Aのところに記載があります』
アリアはスキルの本を開き、羅列されている文字の一文をなぞって見せてくれる。
まぁー俺に読むことはできないんだけど。
おそらく、俺が持っていたスキル【斬撃】【肉体強化】のことが記載されているのだろう。
『取得難度Aってのは難しいということ?』
『はい。とても難しいです。両スキルともに取得には先天的に生まれ持ってくる場合を除くと。普通なら長く厳しい習練がいります』
『へぇー俺は先天的に生まれもっていたのかな? 習練とやらはこっちの世界に来てやった覚えはないし?』
『そうですね。ノヴァが先天的に持って生まれた可能性も十分あります。ただノヴァの場合、黒い狼やリナリーと戦っていますよね』
『ん? それがどうした?』
『ふふ、強敵との死闘の果てに得ることあるというのも聞いたことがあります』
『強敵との死闘……? あぁ! そういえば、黒い狼を倒したときに……なんかスキルがどうたらって声が聞こえたような?』
『なるほど、その聞こえてきた声というのは私達が『天の声』と呼んでいるものだと思われます』
『へー『天の声』ねぇ。なんか綺麗な声だったような? 気絶する寸前でよく思い出せないな』
俺が『天の声』がどんなことを言っていたか思い出そうしていた時だった。
不意にアリアはスキルが乗っているという本をパタンと閉じる。
『それでここからが話の本題です』
『へ? ここからが本題?』
アリアに視線を向けると、俺を見ていた。
そのアリアのあまりに真剣な表情だったので俺は戸惑う。
アリアはスキルの本の表紙をなぞりながら、俺の疑問に対して答える。
『はい、ノヴァのスキルなのですが、【定変者(さだめをかえるもの)】【火炎龍】【変身】【斬撃】【肉体強化】【巨大化】【食育】の七つがありました。その内、五つ……【定変者(さだめをかえるもの)】【火炎龍】【変身】【巨大化】【食育】はこのスキルが書かれた本に記載がないモノなんです』
『え? それはどういうこと?』
『この本に載っていないスキルというのは……そう言ったスキルのことを誰がそう呼び始めたのかは知りませんが【クラウンズスキル】と呼ばれるのです』
『【クラウンズスキル】?』
『はい……【クラウンズスキル】はなんかしらの理由があって公表されなかったスキルです。その理由は大まかに二つあると思います。一つ目はあまりに異端すぎて危険すぎるスキルである場合、二つ目は誰も取得していなかったスキルを初めて取得した場合などあります……今回問題となるのはもちろん前者です』
『……』
『つまり、異端すぎて危険すぎるスキル……力を持つものは迫害の対象に成り得ると言うことです。私はもう知ってしまっているのでどうしようもありませんが……あまり人には伝えない方がいいです』
『あぁ……そうだな。それはよくわかっている』
『……』
『……』
『ただ……私だけノヴァのスキルを知ってしまって不平等ですね。……私も一つ秘密をノヴァに教えることにしましょう』
『アリアの秘密?』
『はい……このことはリナリーしか知らない秘密です。他言無用でお願いしますね』
『わかった』
アリアはしーっと口元に人差し指を当ててニコリと笑った。対して俺は小さく頷いた。
『……実は、私も【聖光】という【クラウンズスキル】を持っているんです』
『【聖光】? あ……もしかして、それがあったからアリアはスキルについて詳しかったんだな?』
『それはあります』
『……それにしても【聖光】という【クラウンズスキル】というのがあるんだな。それはどんな効果なんだ?』
『んー他に持っている方を知らないので何とも言いにくいのですが……おそらく、常時発動型で聖属性の魔法効果を上昇させるんだと思います』
『そうか、確かに他に持っている人を知らないから効果を検証することも難しいのか』
『はい、そうです。ただ、一つだけ言えるは……私が王国……いや世界でも指折りの聖女と言われているのは【聖光】という【クラウンズスキル】を持っているからだと思っています』
『世界……? それはすごいな』
『はい、すごいです。私の身に余る力だと思っています。ただ、これからが本題です。ノヴァには私が一つでも身に余ると思っている【クラウンズスキル】を五つも所有しているんです。もちろん【クラウンズスキル】の中にも優劣はあるでしょうが。それでも、これほどの【クラウンズスキル】を持って生まれたノヴァには何か天から定めを与えられたものだとしか思えません』
一旦言葉を切ると、アリアはまっすぐ俺を見据えて問いかけてきた。
『……貴方は何になるんですか?』
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