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第2話 異世界にて
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「……」
雲の隙間から、ちらちらと星が見える。あれ、ここは…。
星が言えるということは、夜なのだろうか。しかし、なぜ星があるのか。 あー、夢かな。勉強中に寝ちゃったんだな、きっと。もう少しだけ。
そんなことを考えながら、彼は静かに目を閉じた。
小鳥のさえずりがどこからともなく聞こえてきて、呼吸をすると済んだ空気が、鼻の中に入ってくる。ゆっくりと目を開けると、青くきれいな空が広がっていた。
「………」
寝返りを打ったとき、希月は、妙に感触がリアルだなと思った。
「ん?ん⁉」
ガバッと起き上がり、あたりを見回す。自分が今いるのはやわらかな草の上、四方八方には大小さまざまな木々が生い茂り、苔むした倒木や岩が頃が転がっている、緑色の世界に囲まれていた。希月はその中の開けた場所にいる。
「は?え?え?え?」
ここは、どこだ?森?俺、川にいたはずじゃ…。
希月は自分がしていたことを思い出そうとした。俺はたしか、図書館に行こうとして、川になんか光ってるものがあって、それに触ったら…。
何が何だかわからずもんもんとしていると急に声が聞こえた。
「あ!いたァっ!」
「わあああああッ!」
あまりにも驚いて叫び声をあげる。
「もー、どこ行ってたの!」
木々の間の向こうから、こちらに向かって歩いてくる人がいる。
「!?」
希月の前に近づいてきたその人は、どうにも人間には見えない。長くゆるいカールの金髪にとがった耳の、まるで妖精のようないでたちの少女。
誰⁉
何も言えずに茫然としていると、目の前の女性は訝しげに首を傾げた。
「どうしたの?」
「姉ちゃん、なんか声が聞こえたけど」
するともう一人、少女と同じ外見をした人物が小走りでやってきた。
「あれ、ここに居たの?みんな探してたんだよ!」
何なんだ、この二人は。明らかに人間ではない。そして、何よりここはどこだ。
希月はなんだか怖くなって逃げようとした。
「待って、なんで逃げるんだよ?」
しかし、少年のほうに体を抑え込まれた。
「あの、やめてください!」
「は?やめてって…勝手にいなくなったのラニだよ」
ラニとは、一体?
「ま、待ってください。人違いです!」
「はあ?」
希月を掴んでいる少年がむっとした声を出す。
「どー見てもラニだろ。とぼけんなよ」
「だから俺ラニって人じゃないです!大体あなたたちは誰なんですか!」
希月が怒ったようにわめくと、二人はキョトンという顔をした。
「何でそんなつまんないウソつくんだよ?」
少年が負けじと答える。
「嘘なんかついてません。俺、やることあるので帰ります」
ごまかしてここから逃げようと思った矢先、金髪の少女が何か思いついたような顔で希月の腕をつかんだ。
「ちょっと、こっちに来て」
連れてこられたのは三人が出会った場所から少しばかり歩いたところにある、小さな泉。
「ねぇ、自分の顔、見てみて」
何かなと思いつつ、少女に言われた通りに鏡のような水面をのぞき込んだ。ハッキリとわかったことがある。
「え?これが俺?」
そこには見慣れた真井希月はおらず、別人が、こちらを見つめている。プラチナアッシュの髪、小ぶりの鼻、紫色の瞳。
「な、何かイケメンになってる…⁉」
頬に両手を当て、つねったり引っ張ったりする。
あんぐりと口を開けて黙ったまま、希月はそこから動けなくなってしまった。
「本当に、あなたはラニじゃないのね」
しばらく希月の様子を見ていた妖精のような少女が、希月に話しかけた。
「私はメレ。こっちは弟のエト。私たち、エルフなの。あなたのことを聞かせて」
雲の隙間から、ちらちらと星が見える。あれ、ここは…。
星が言えるということは、夜なのだろうか。しかし、なぜ星があるのか。 あー、夢かな。勉強中に寝ちゃったんだな、きっと。もう少しだけ。
そんなことを考えながら、彼は静かに目を閉じた。
小鳥のさえずりがどこからともなく聞こえてきて、呼吸をすると済んだ空気が、鼻の中に入ってくる。ゆっくりと目を開けると、青くきれいな空が広がっていた。
「………」
寝返りを打ったとき、希月は、妙に感触がリアルだなと思った。
「ん?ん⁉」
ガバッと起き上がり、あたりを見回す。自分が今いるのはやわらかな草の上、四方八方には大小さまざまな木々が生い茂り、苔むした倒木や岩が頃が転がっている、緑色の世界に囲まれていた。希月はその中の開けた場所にいる。
「は?え?え?え?」
ここは、どこだ?森?俺、川にいたはずじゃ…。
希月は自分がしていたことを思い出そうとした。俺はたしか、図書館に行こうとして、川になんか光ってるものがあって、それに触ったら…。
何が何だかわからずもんもんとしていると急に声が聞こえた。
「あ!いたァっ!」
「わあああああッ!」
あまりにも驚いて叫び声をあげる。
「もー、どこ行ってたの!」
木々の間の向こうから、こちらに向かって歩いてくる人がいる。
「!?」
希月の前に近づいてきたその人は、どうにも人間には見えない。長くゆるいカールの金髪にとがった耳の、まるで妖精のようないでたちの少女。
誰⁉
何も言えずに茫然としていると、目の前の女性は訝しげに首を傾げた。
「どうしたの?」
「姉ちゃん、なんか声が聞こえたけど」
するともう一人、少女と同じ外見をした人物が小走りでやってきた。
「あれ、ここに居たの?みんな探してたんだよ!」
何なんだ、この二人は。明らかに人間ではない。そして、何よりここはどこだ。
希月はなんだか怖くなって逃げようとした。
「待って、なんで逃げるんだよ?」
しかし、少年のほうに体を抑え込まれた。
「あの、やめてください!」
「は?やめてって…勝手にいなくなったのラニだよ」
ラニとは、一体?
「ま、待ってください。人違いです!」
「はあ?」
希月を掴んでいる少年がむっとした声を出す。
「どー見てもラニだろ。とぼけんなよ」
「だから俺ラニって人じゃないです!大体あなたたちは誰なんですか!」
希月が怒ったようにわめくと、二人はキョトンという顔をした。
「何でそんなつまんないウソつくんだよ?」
少年が負けじと答える。
「嘘なんかついてません。俺、やることあるので帰ります」
ごまかしてここから逃げようと思った矢先、金髪の少女が何か思いついたような顔で希月の腕をつかんだ。
「ちょっと、こっちに来て」
連れてこられたのは三人が出会った場所から少しばかり歩いたところにある、小さな泉。
「ねぇ、自分の顔、見てみて」
何かなと思いつつ、少女に言われた通りに鏡のような水面をのぞき込んだ。ハッキリとわかったことがある。
「え?これが俺?」
そこには見慣れた真井希月はおらず、別人が、こちらを見つめている。プラチナアッシュの髪、小ぶりの鼻、紫色の瞳。
「な、何かイケメンになってる…⁉」
頬に両手を当て、つねったり引っ張ったりする。
あんぐりと口を開けて黙ったまま、希月はそこから動けなくなってしまった。
「本当に、あなたはラニじゃないのね」
しばらく希月の様子を見ていた妖精のような少女が、希月に話しかけた。
「私はメレ。こっちは弟のエト。私たち、エルフなの。あなたのことを聞かせて」
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