10 / 10
妻の言うことには、従っておいた方がいい
しおりを挟む
ああ……今日のブランシュは輝くばかりの美しさだな。
カロリーヌも勿論美しかったが、今の彼女はそれ以上だ。まるで現世に降臨した女神のようじゃないか。
いかんな。どうも最近、涙脆くて。
なに、歳だと?
そんなことは無いと言いたいところだが、娘が二人とも嫁いだのだ。我々はもう年寄りだな。ははは。
それにしても見ろ、あの嬉しそうな笑顔……。この縁談がまとまって本当に良かった。マリウス君ならきっと娘を幸せにしてくれる。
ヴィトリーの連中か?それなら心配ない。奴らは我が家への侵入行為で取り調べの真っ最中だから、ここへ来る暇はないだろう。
あの調子だと結婚式にも押しかけて騒ぎを起こしそうだからな。わざと泳がせておいて、昨日のタイミングで衛兵に捕らえて貰ったのだ。マリウス君の発案でね。
しかし……本当に親子そろって傍迷惑な連中だ。
今となっては、なぜヴィトリーの若造と婚約など結ばせてしまったのか、後悔してもし足りない。
ヴィトリー伯爵は有能な人物だが、優秀な男であっても良き夫、良き父親になれるというわけではないのだな。
妻子を切り捨てるならば、伯爵には救いの道を用意しても良いと宰相閣下は仰っていたが。
うん?いや、そんなに甘い方ではないよ。使い捨ての駒としてならば、使い道もあるだろうという話さ。
それにどっちにしろ、伯爵にそのつもりは無いらしい。ならばあの悪妻と共に沈んでいって貰うほか無いな。
だから言っただろうって?ああ、分かった分かった。俺が悪かったよ。
君は最初から、あの婚約に反対していたものな。
女性にしか分からないカンというやつか?君の言うことに耳を傾けるべきだった。
機嫌を直してくれ。
娘の新しい門出なんだ。母親の君が、そんな仏頂面でどうする。今は娘の晴れ姿に集中しようじゃないか。
……おや、カロリーヌも泣いているようだ。勝気なあの娘が涙を流すとは珍しい。
カロリーヌもブランシュの事で心を痛めていたからな。感慨はひとしおなのだろう。
今回の件ではカロリーヌもよく立ち回ってくれた。まだまだ小娘だと思っていたが、いつの間にか次期伯爵夫人として申し分ない淑女になっていたんだなあ。婿に来てくれたクロード君も優秀だし、この分だと早めに跡目を譲っても良さそうだ。
そうしたら二人でゆっくりしようじゃないか。
うんうん、旅行もいいな。君の好きなところへ連れて行くよ。
ああ、いや。詫びというわけでは……。
まあいいか。君の希望に従うよ。その方がきっと、間違いがないだろうからな。
カロリーヌも勿論美しかったが、今の彼女はそれ以上だ。まるで現世に降臨した女神のようじゃないか。
いかんな。どうも最近、涙脆くて。
なに、歳だと?
そんなことは無いと言いたいところだが、娘が二人とも嫁いだのだ。我々はもう年寄りだな。ははは。
それにしても見ろ、あの嬉しそうな笑顔……。この縁談がまとまって本当に良かった。マリウス君ならきっと娘を幸せにしてくれる。
ヴィトリーの連中か?それなら心配ない。奴らは我が家への侵入行為で取り調べの真っ最中だから、ここへ来る暇はないだろう。
あの調子だと結婚式にも押しかけて騒ぎを起こしそうだからな。わざと泳がせておいて、昨日のタイミングで衛兵に捕らえて貰ったのだ。マリウス君の発案でね。
しかし……本当に親子そろって傍迷惑な連中だ。
今となっては、なぜヴィトリーの若造と婚約など結ばせてしまったのか、後悔してもし足りない。
ヴィトリー伯爵は有能な人物だが、優秀な男であっても良き夫、良き父親になれるというわけではないのだな。
妻子を切り捨てるならば、伯爵には救いの道を用意しても良いと宰相閣下は仰っていたが。
うん?いや、そんなに甘い方ではないよ。使い捨ての駒としてならば、使い道もあるだろうという話さ。
それにどっちにしろ、伯爵にそのつもりは無いらしい。ならばあの悪妻と共に沈んでいって貰うほか無いな。
だから言っただろうって?ああ、分かった分かった。俺が悪かったよ。
君は最初から、あの婚約に反対していたものな。
女性にしか分からないカンというやつか?君の言うことに耳を傾けるべきだった。
機嫌を直してくれ。
娘の新しい門出なんだ。母親の君が、そんな仏頂面でどうする。今は娘の晴れ姿に集中しようじゃないか。
……おや、カロリーヌも泣いているようだ。勝気なあの娘が涙を流すとは珍しい。
カロリーヌもブランシュの事で心を痛めていたからな。感慨はひとしおなのだろう。
今回の件ではカロリーヌもよく立ち回ってくれた。まだまだ小娘だと思っていたが、いつの間にか次期伯爵夫人として申し分ない淑女になっていたんだなあ。婿に来てくれたクロード君も優秀だし、この分だと早めに跡目を譲っても良さそうだ。
そうしたら二人でゆっくりしようじゃないか。
うんうん、旅行もいいな。君の好きなところへ連れて行くよ。
ああ、いや。詫びというわけでは……。
まあいいか。君の希望に従うよ。その方がきっと、間違いがないだろうからな。
1,878
お気に入りに追加
1,270
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(8件)
あなたにおすすめの小説

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話
ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。
完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

痛みは教えてくれない
河原巽
恋愛
王立警護団に勤めるエレノアは四ヶ月前に異動してきたマグラに冷たく当たられている。顔を合わせれば舌打ちされたり、「邪魔」だと罵られたり。嫌われていることを自覚しているが、好きな職場での仲間とは仲良くしたかった。そんなある日の出来事。
マグラ視点の「触れても伝わらない」というお話も公開中です。
別サイトにも掲載しております。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

番(つがい)はいりません
にいるず
恋愛
私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。
本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。

見えるものしか見ないから
mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。
第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……


義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
とても面白かったです。
全てが別視点!?になってて、とても新鮮で、最初から最後まで楽しめました。(途中で別視点になってる作品はありますが、今回のように一話ずつ別視点になってるのは初めてだと思います!)
先生の作品は初めてなので、今から他の作品も覗きます。面白い作品、ありがとうございました。
ご感想ありがとうございます。
語り口調かつ視点替えは、自分も初めての試みでした。楽しんで頂けたのなら嬉しいです!
語り口調のお話って凄く感情が乗ってより読んでいて楽しいですが、また内容もこれまた楽しくてあっという間に読んじゃいました!また遊びに来ます。
ご感想ありがとうございます。
語り口調は自分でも驚くほど書きやすくて、筆がノリノリでした。
他の作品も気軽に読んで頂ければ嬉しいです!
大好きです😊
サクサク読めて面白い。
アホ姉妹と母親に嘘八百吹き込まれてブランシュを貶めた親戚たち、特に説教したと言う大叔母にもザマァを。
晩年にザマァは応えますね。
アホな家族を持つ伯爵家当主はマトモなのか?
ご感想ありがとうございます。
伯爵は一見マトモな人物に見えるのですが、家のことを妻に任せっぱなしだったダメ旦那です。
大叔母はヴィトリー伯爵家の親戚なので、ちゃんと(?)没落しました(^^
面白いと言って頂けて嬉しいです!