上 下
4 / 10

先が無いことに、そろそろ気付いた方がいい

しおりを挟む
 はあ、退屈だわ。

 ずぅっと家で勉強か刺繍の練習ばかりなんだもの。飽きちゃったわ。

 ねえ、クロエ。ちょっとお出かけしても大丈夫よね?
 コラスの店で新作のケーキが発売されたらしいのよ。食べに行きたいわ。

 え、駄目?お父様に家から出すなと言われているって?
 ちょっとくらい、外出しても平気だってば。
 もう。お固いわねえクロエは。

 最近は家の中が暗くて、閉じこもっていたら身体が腐りそうよ。
 お父様は怒ってるし、お母様は愚痴ってばかりだし。エドガールお兄様もずっと暗い顔をしてるし。

 お兄様に買い物へ連れて行ってと頼んだら「一人で行け!」って怒鳴られたの。
 何かしら、あの態度!
 
 全部、あのブランシュのせいよ。
 以前は優しいお兄様だったのに、あの女のせいで変わってしまったのだわ。

 だいたい、最初から気に入らなかったのよ。
 貴族学院時代から美人で有名だったらしいけど、あんなの化粧が厚いだけじゃない。
 そう、あと服よ!いっつもデシャンの新作を着てるんだもの。服が綺麗だから、本人も美しく見えるだけじゃない?

 私だってデシャンのドレスが欲しかったのに、お母様が買ってくれなかったのよね。
 それなのに、これ見よがしに着てくるんだもの。ホント、生意気な女!


 私、お兄様やあの女と一緒に夜会へ出席したことがあるでしょう?
 マリウス様もいらっしゃると聞いて、お気に入りのドレスを着ていったのよ。
 ええ、そう。ラガルド侯爵家のマリウス様。

 だけどマリウス様は私が話しかけても全然相手してくれなくて、ブランシュにばかり話しかけるのよ。しかも何だか顔を赤らめてるの。
 失礼しちゃう!

 きっとあの女がマリウス様へ色目を使ったに違いないわ。お兄様という婚約者がいるのに!
 マリウス様もマリウス様よ。婚約者のいる女性へ親しげにするなんて……。幻滅したわ。
 
 え?いいのよ、もう。マリウス様なんて、こっちから願い下げよ。

 
 でね、腹が立ったから、あの女とお兄様が会う日に邪魔をしてやったの!
 収穫祭の日だったかしら。行きたいってワザと駄々をこねて。
 思った通り、お兄様は私の方を優先してくれたわ。ブランシュはさぞ悔しかったでしょうねえ。ふふふ。
 
 あとね、 レオノール叔母様にブランシュのことを話したの。
 我が儘であばずれだって。
 え、嘘は良くない?嘘じゃないわ。ちょっと話を盛っただけよ。ちょっとだけ。

 叔母様はそんな女がエドガールちゃんの婚約者なんて!と憤慨なさってたわ。あの方、お兄様が大のお気に入りだものね。

 お茶会の日、ブランシュはレオノール叔母様に散々説教されていたわね。萎れたあの女の姿といったら!今思い出しても笑っちゃう。

 ええ?それでお兄様が婚約を解消されたのだろうって?

 そんなの、私のせいじゃないでしょ。二人の間のことだもの。
 私の知ったことじゃないわ。

 そりゃあ婚約解消なんて、外聞は悪いけど。我が家は由緒正しいヴィトリー伯爵家だし、お兄様は良い人だもの。すぐに新しい婚約者が見つかるわよ。
 
 ブランシュは馬鹿なことをしたものね。お兄様みたいな優良物件を逃すなんて。
 きっと、ロクな縁談が来ないわよ。
 そのうち、どっかの年寄りの後妻にでも嫁がされるんじゃないかしら。いい気味だわ。


 そうそう、縁談といえば……。

 同級生のマリリーズとオティリーは婚約が決まったらしいの。まあマリリーズは侯爵令嬢だから、爵位に群がる男が多いんだろうけど。オティリーなんて子爵家じゃない。
 あの子、見た目も地味だし。そんな女に先を越されるなんて、ちょっと腹が立つわ。
 
 私もいい加減、相手を決めないとね。
 こないだダロンド伯爵令息と顔合わせしたけど、なかなか婚約の申し込みが来ないのよ。
 
 何をモタモタしているのかしら。
 私みたいな美人、放っといたらすぐに新しい求婚が来るのに……。

 まあいいわ。それなら他の相手を探すだけだもの。
 他の令息からも釣書が来てるでしょう?

 え、来てない?一個も?
 
 嘘でしょう?何かの間違いで、届いてないだけじゃないかしら。
 一度、お父様に確認して貰わなきゃ。
 
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

私だけが赤の他人

有沢真尋
恋愛
 私は母の不倫により、愛人との間に生まれた不義の子だ。  この家で、私だけが赤の他人。そんな私に、家族は優しくしてくれるけれど……。 (他サイトにも公開しています)

[完結]本当にバカね

シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。 この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。 貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。 入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。 私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

なにひとつ、まちがっていない。

いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。 それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。 ――なにもかもを間違えた。 そう後悔する自分の将来の姿が。 Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの? A 作者もそこまで考えていません。  どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。

夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話

束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。 クライヴには想い人がいるという噂があった。 それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。 晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。

やめてくれないか?ですって?それは私のセリフです。

あおくん
恋愛
公爵令嬢のエリザベートはとても優秀な女性だった。 そして彼女の婚約者も真面目な性格の王子だった。だけど王子の初めての恋に2人の関係は崩れ去る。 貴族意識高めの主人公による、詰問ストーリーです。 設定に関しては、ゆるゆる設定でふわっと進みます。

処理中です...