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第一章 花嫁試験編
閑話 侯爵令嬢の企み
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「痛っ!そこは打ち身になっているから触らないで!」
「申し訳ありません、お嬢様」
デルフィーヌの侍女、アメリ―は主人の足をマッサージしている所であった。今日の乗馬試験で負けたらしい主人はすこぶる機嫌が悪い。こういう時はちょっとしたミスでも叱られてしまう。メアリーは細心の注意を払ってマッサージを続ける。
「全く……すべてあの女のせいですわ」
デルフィーヌの言う”あの女”とはアレクサンドラ・デュヴィラール侯爵令嬢のことだ。女学院時代から何かと張り合っていた彼女の悪口を、主人からは再三聞かされてきた。小生意気でいけ好かない、いい子ぶっている等々。
花嫁候補の侍女たちから仕入れた情報では、特に悪評はなく、何事もソツなくこなす優秀なご令嬢と聞いている。だからこそ、デルフィーヌは気に喰わないのかもしれない。
「あの女さえいなければ、とっくに私が王妃に決まっていたはずなのよ。他の花嫁候補なんて私の足元にも及ばないのだもの」
「まだ試験は途中です。お嬢様ならいずれ首位におなりあそばしますよ」
「そんなことは分かってるのよ!でも、このままじゃ腹の虫が収まらないわ」
何を言っても無駄なようだ。アメリ―は主人を宥めるのは諦め、黙々とマッサージに勤しんだ。
「そういえば、来週の試験は確か……」
湯気が見えそうなくらいぷんぷんと怒りをまき散らしていたデルフィーヌだが、何やら思いついたらしい。今度はにんまりとした笑みを浮かべている。
「すぐにお父様に連絡を取って頂戴」
「かしこまりました」
悪い顔になってますね、と心の中で呟いてメアリーは言われた通り、通話用魔石の準備をする。主人の機嫌が良くなってくれるならそれに越したことは無いのだ。
「申し訳ありません、お嬢様」
デルフィーヌの侍女、アメリ―は主人の足をマッサージしている所であった。今日の乗馬試験で負けたらしい主人はすこぶる機嫌が悪い。こういう時はちょっとしたミスでも叱られてしまう。メアリーは細心の注意を払ってマッサージを続ける。
「全く……すべてあの女のせいですわ」
デルフィーヌの言う”あの女”とはアレクサンドラ・デュヴィラール侯爵令嬢のことだ。女学院時代から何かと張り合っていた彼女の悪口を、主人からは再三聞かされてきた。小生意気でいけ好かない、いい子ぶっている等々。
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何を言っても無駄なようだ。アメリ―は主人を宥めるのは諦め、黙々とマッサージに勤しんだ。
「そういえば、来週の試験は確か……」
湯気が見えそうなくらいぷんぷんと怒りをまき散らしていたデルフィーヌだが、何やら思いついたらしい。今度はにんまりとした笑みを浮かべている。
「すぐにお父様に連絡を取って頂戴」
「かしこまりました」
悪い顔になってますね、と心の中で呟いてメアリーは言われた通り、通話用魔石の準備をする。主人の機嫌が良くなってくれるならそれに越したことは無いのだ。
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