66 / 357
第五章 山道鍛練でEは無理かな?
第十三話 マーシャンは実は冷静沈着に先を見透して行動できる凄腕冒険者だった!…なわけないですよね…
しおりを挟む
“八つの絶望”の一つ、樹木の迷宮闇深き森。
世界各地にあるダンジョンの中でも比較的新しくできたダンジョンだ。
普通時間をかけて成長するダンジョンではあるが、闇深き森は異質だ。この森はある日突然ダンジョン化したのだ。
元々は緑深き森と呼ばれる豊かな森林地帯で、エルフの王族と称されるハイエルフの都があったことで知られていた。
…なぜ豊かな恵みをもたらしていた緑深き森が、瘴気を吐き出しモンスターを生み出す闇深き森へと変貌したのか?生まれたばかりのダンジョンがなぜ“八つの絶望”の一つとなり得るほど大規模なのか?
…未だに謎とされている。
「…ていうのが闇深き森のあらましかな」
「…よく知ってますね」
「ああ…ビキニアーマーと巨乳と温泉しか頭にないと思ってぐぼおっ!」
「…あんた人をなんだと思ってんのよ…」
私の膝を鳩尾に受けてリルは地面でのたうち回っている。
「サーチの一撃も酷い気がします」
「…この間マーシャン相手にスキル≪撲殺≫を発動したのはどこの誰だっけ?」
こらエイミア。吹けない口笛吹いて誤魔化すな。
私達はマーシャンを追って闇深き森へと向かっている。
ギリギリで乗れた乗合馬車で近くまで来て…あとは歩いて3日ほど。
私達が歩く周りもだんだんと木が増えてきた。
あと…半日くらいだと思う。
…正直ねぇ…普通の森と闇深き森との境目がわかんないのよねぇ…。
「リル…変なこと聞くけど…」
「聞きたいことはわかるけど…無理無理わかる訳ないだろ…」
…ですよね。
「ここから4㎞ほど先に結界に似たせいでんきを感じます。これって違いますか?」
意外な伏兵がいたー!
妖○アンテナがピコピコと指し示している。けっこう強力な反応らしい。
「この辺りに村は無いはずだな…距離的にいって間違いないだろ」
良かった…これで準備もしやすい。
…ん?
「ちょっと待って。エイミア、何で一回目にきたときは気がつかなかったの?」
「…そう言えばそうだな」
エイミアは少し困った顔をしながら。
「たぶんですけど…マーシャンが影響してるかと…」
「でも一回目のときもマーシャンもいたわよね?」
「…あのときから…様子がおかしかったです…」
…そうだ。
なぜか急に単独行動しだしたり…妙にテンションのアップダウンが激しかったり…。
「あの時に私達をわざと闇深き森へ誘導した…?」
「そうだな…マーシャンが何をしたいのかはわかんねえが…」
…マーシャンが何をしていたのか…。
「…そうだ。そうでした。マーシャンは何か拾い集めてました!」
拾い集めてた?
「えっと…」
エイミアは地面を探って石を拾いあげた。
「確かこれと同じものを」
「何これ?」
「ちょっと見せてみろ…クンクン」
リルが匂いを嗅ぐとものすごく嫌な顔をした。
「うわっ!これ魔瘴石だぞ!?」
魔瘴石?
「簡単に言えば瘴気を発する石ですね」
瘴気を…?
「ねえ…もしマーシャンが闇深き森に入れば…存在からして目立つよね?」
「そうだな。あれだけ瘴気が漂っている森だ。ハイエルフの聖なる気は目立つさ…あっ!」
「もしかして魔瘴石を集めてた理由がそれなら…」
「ああ。私達と一回目にここに来た理由はそれだな」
「あの~…?」
一人わかってない子がいた!
「…いい?マーシャンはたぶん闇深き森を一人で攻略しようとしてる。ここまではいい?」
エイミアが頷く。
「だけど森のモンスターは強敵揃いなうえハイエルフの聖なる気は瘴気だらけの闇深き森では目立つ。下手すればダンジョンコアへたどり着く前に力尽きてしまいかねない」
…まだわかんないかな?
「…だったらどうすればいいか?出来るだけ力を温存すればいい。つまりはモンスターと遭遇しにくくなればいいのよ」
エイミアの頭上に電球が灯る。やっとわかったか。
「なるほど!魔瘴石を集めて自分の周りに瘴気を発生させて…」
「森の中を目立たずに移動する…ていうわけよ」
まさに「木を隠すには森の中」てやつね。
「でも…私達もマーシャンを見つけにくいってことですよね?」
あー…。
「そうか…そうよね。どうしよう…」
…まさかここで詰むとは…。
「心配すんな。まったく問題ない」
またもや意外な伏兵がいたー!
「マーシャンの匂いは完全に判別できる」
「さすがニャンコ獣人はみゃっ!」
「ニャンコ言うな!」
…ごめんなさい。
「どちらにせよ…問題は解決!頑張ってマーシャン追うわよ!」
「「おー!」」
こうして。
マーシャンを追跡すること二日。
ついに。
マーシャンを発見し、行動を開始した。
あとで露見することではあるが。
当然、マーシャンがそんな小難しいことを考えて行動するわけがない。
…お互いの盛大な勘違いが後の悲劇へと繋がる…。
ほとんどマーシャンの悲劇だけど。
世界各地にあるダンジョンの中でも比較的新しくできたダンジョンだ。
普通時間をかけて成長するダンジョンではあるが、闇深き森は異質だ。この森はある日突然ダンジョン化したのだ。
元々は緑深き森と呼ばれる豊かな森林地帯で、エルフの王族と称されるハイエルフの都があったことで知られていた。
…なぜ豊かな恵みをもたらしていた緑深き森が、瘴気を吐き出しモンスターを生み出す闇深き森へと変貌したのか?生まれたばかりのダンジョンがなぜ“八つの絶望”の一つとなり得るほど大規模なのか?
…未だに謎とされている。
「…ていうのが闇深き森のあらましかな」
「…よく知ってますね」
「ああ…ビキニアーマーと巨乳と温泉しか頭にないと思ってぐぼおっ!」
「…あんた人をなんだと思ってんのよ…」
私の膝を鳩尾に受けてリルは地面でのたうち回っている。
「サーチの一撃も酷い気がします」
「…この間マーシャン相手にスキル≪撲殺≫を発動したのはどこの誰だっけ?」
こらエイミア。吹けない口笛吹いて誤魔化すな。
私達はマーシャンを追って闇深き森へと向かっている。
ギリギリで乗れた乗合馬車で近くまで来て…あとは歩いて3日ほど。
私達が歩く周りもだんだんと木が増えてきた。
あと…半日くらいだと思う。
…正直ねぇ…普通の森と闇深き森との境目がわかんないのよねぇ…。
「リル…変なこと聞くけど…」
「聞きたいことはわかるけど…無理無理わかる訳ないだろ…」
…ですよね。
「ここから4㎞ほど先に結界に似たせいでんきを感じます。これって違いますか?」
意外な伏兵がいたー!
妖○アンテナがピコピコと指し示している。けっこう強力な反応らしい。
「この辺りに村は無いはずだな…距離的にいって間違いないだろ」
良かった…これで準備もしやすい。
…ん?
「ちょっと待って。エイミア、何で一回目にきたときは気がつかなかったの?」
「…そう言えばそうだな」
エイミアは少し困った顔をしながら。
「たぶんですけど…マーシャンが影響してるかと…」
「でも一回目のときもマーシャンもいたわよね?」
「…あのときから…様子がおかしかったです…」
…そうだ。
なぜか急に単独行動しだしたり…妙にテンションのアップダウンが激しかったり…。
「あの時に私達をわざと闇深き森へ誘導した…?」
「そうだな…マーシャンが何をしたいのかはわかんねえが…」
…マーシャンが何をしていたのか…。
「…そうだ。そうでした。マーシャンは何か拾い集めてました!」
拾い集めてた?
「えっと…」
エイミアは地面を探って石を拾いあげた。
「確かこれと同じものを」
「何これ?」
「ちょっと見せてみろ…クンクン」
リルが匂いを嗅ぐとものすごく嫌な顔をした。
「うわっ!これ魔瘴石だぞ!?」
魔瘴石?
「簡単に言えば瘴気を発する石ですね」
瘴気を…?
「ねえ…もしマーシャンが闇深き森に入れば…存在からして目立つよね?」
「そうだな。あれだけ瘴気が漂っている森だ。ハイエルフの聖なる気は目立つさ…あっ!」
「もしかして魔瘴石を集めてた理由がそれなら…」
「ああ。私達と一回目にここに来た理由はそれだな」
「あの~…?」
一人わかってない子がいた!
「…いい?マーシャンはたぶん闇深き森を一人で攻略しようとしてる。ここまではいい?」
エイミアが頷く。
「だけど森のモンスターは強敵揃いなうえハイエルフの聖なる気は瘴気だらけの闇深き森では目立つ。下手すればダンジョンコアへたどり着く前に力尽きてしまいかねない」
…まだわかんないかな?
「…だったらどうすればいいか?出来るだけ力を温存すればいい。つまりはモンスターと遭遇しにくくなればいいのよ」
エイミアの頭上に電球が灯る。やっとわかったか。
「なるほど!魔瘴石を集めて自分の周りに瘴気を発生させて…」
「森の中を目立たずに移動する…ていうわけよ」
まさに「木を隠すには森の中」てやつね。
「でも…私達もマーシャンを見つけにくいってことですよね?」
あー…。
「そうか…そうよね。どうしよう…」
…まさかここで詰むとは…。
「心配すんな。まったく問題ない」
またもや意外な伏兵がいたー!
「マーシャンの匂いは完全に判別できる」
「さすがニャンコ獣人はみゃっ!」
「ニャンコ言うな!」
…ごめんなさい。
「どちらにせよ…問題は解決!頑張ってマーシャン追うわよ!」
「「おー!」」
こうして。
マーシャンを追跡すること二日。
ついに。
マーシャンを発見し、行動を開始した。
あとで露見することではあるが。
当然、マーシャンがそんな小難しいことを考えて行動するわけがない。
…お互いの盛大な勘違いが後の悲劇へと繋がる…。
ほとんどマーシャンの悲劇だけど。
0
お気に入りに追加
192
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
そして乙女ゲームは始まらなかった
お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。
一体私は何をしたらいいのでしょうか?
【完結】番を監禁して早5年、愚かな獣王はようやく運命を知る
紺
恋愛
獣人国の王バレインは明日の婚儀に胸踊らせていた。相手は長年愛し合った美しい獣人の恋人、信頼する家臣たちに祝われながらある女の存在を思い出す。
父が他国より勝手に連れてきた自称"番(つがい)"である少女。
5年間、古びた離れに監禁していた彼女に最後の別れでも伝えようと出向くと、そこには誰よりも美しく成長した番が待ち構えていた。
基本ざまぁ対象目線。ほんのり恋愛。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。
だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。
それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。
王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!?
けれど、そこには……。
※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる