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第五章 山道鍛練でEは無理かな?

第十三話 マーシャンは実は冷静沈着に先を見透して行動できる凄腕冒険者だった!…なわけないですよね…

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“八つの絶望”ディスペア・オブ・エイトの一つ、樹木の迷宮闇深き森ディープフォレスト
 世界各地にあるダンジョンの中でも比較的新しくできたダンジョンだ。
 普通時間をかけて成長するダンジョンではあるが、闇深き森ディープフォレストは異質だ。この森はある日突然・・・・・ダンジョン化したのだ。
 元々は緑深き森ディープフォレストと呼ばれる豊かな森林地帯で、エルフの王族と称されるハイエルフの都があったことで知られていた。
…なぜ豊かな恵みをもたらしていた緑深き森ディープフォレストが、瘴気を吐き出しモンスターを生み出す闇深き森ディープフォレストへと変貌したのか?生まれたばかりのダンジョンがなぜ“八つの絶望”ディスペア・オブ・エイトの一つとなり得るほど大規模なのか?
…未だに謎とされている。


 「…ていうのが闇深き森ディープフォレストのあらましかな」

 「…よく知ってますね」

 「ああ…ビキニアーマーと巨乳と温泉しか頭にないと思ってぐぼおっ!」

 「…あんた人をなんだと思ってんのよ…」

 私の膝を鳩尾に受けてリルは地面でのたうち回っている。

 「サーチの一撃も酷い気がします」

 「…この間マーシャン相手にスキル≪撲殺≫を発動したのはどこの誰だっけ?」

こらエイミア。吹けない口笛吹いて誤魔化すな。


 私達はマーシャンを追って闇深き森ディープフォレストへと向かっている。
ギリギリで乗れた乗合馬車で近くまで来て…あとは歩いて3日ほど。
 私達が歩く周りもだんだんと木が増えてきた。
あと…半日くらいだと思う。
…正直ねぇ…普通の森と闇深き森ディープフォレストとの境目・・がわかんないのよねぇ…。

 「リル…変なこと聞くけど…」

 「聞きたいことはわかるけど…無理無理わかる訳ないだろ…」

…ですよね。

 「ここから4㎞ほど先に結界に似たせいでんきを感じます。これって違いますか?」

 意外な伏兵がいたー!
 妖○アンテナがピコピコと指し示している。けっこう強力な反応らしい。

 「この辺りに村は無いはずだな…距離的にいって間違いないだろ」

 良かった…これで準備もしやすい。
…ん?

 「ちょっと待って。エイミア、何で一回目にきたときは気がつかなかったの?」

 「…そう言えばそうだな」

エイミアは少し困った顔をしながら。

 「たぶんですけど…マーシャンが影響してるかと…」

 「でも一回目のときもマーシャンもいたわよね?」

 「…あのときから…様子がおかしかったです…」

…そうだ。
なぜか急に単独行動しだしたり…妙にテンションのアップダウンが激しかったり…。

 「あの時に私達をわざと闇深き森ディープフォレストへ誘導した…?」

 「そうだな…マーシャンが何をしたいのかはわかんねえが…」

…マーシャンが何をしていたのか…。

 「…そうだ。そうでした。マーシャンは何か拾い集めてました!」

 拾い集めてた?

 「えっと…」

エイミアは地面を探って石を拾いあげた。

 「確かこれと同じものを」

 「何これ?」

 「ちょっと見せてみろ…クンクン」

リルが匂いを嗅ぐとものすごく嫌な顔をした。

 「うわっ!これ魔瘴石だぞ!?」

 魔瘴石?

 「簡単に言えば瘴気を発する石ですね」

 瘴気を…?

 「ねえ…もしマーシャンが闇深き森ディープフォレストに入れば…存在からして目立つよね?」

 「そうだな。あれだけ瘴気が漂っている森だ。ハイエルフの聖なる気は目立つさ…あっ!」

 「もしかして魔瘴石を集めてた理由がそれなら…」

 「ああ。私達と一回目にここに来た理由はそれだな」

 「あの~…?」

 一人わかってない子がいた!

 「…いい?マーシャンはたぶん闇深き森ディープフォレストを一人で攻略しようとしてる。ここまではいい?」

エイミアが頷く。

 「だけど森のモンスターは強敵揃いなうえハイエルフの聖なる気は瘴気だらけの闇深き森ディープフォレストでは目立つ。下手すればダンジョンコアへたどり着く前に力尽きてしまいかねない」

…まだわかんないかな?

 「…だったらどうすればいいか?出来るだけ力を温存すればいい。つまりはモンスターと遭遇しにくくなればいいのよ」

エイミアの頭上に電球が灯る。やっとわかったか。

 「なるほど!魔瘴石を集めて自分の周りに瘴気を発生させて…」

 「森の中を目立たずに移動する…ていうわけよ」

まさに「木を隠すには森の中」てやつね。

 「でも…私達もマーシャンを見つけにくいってことですよね?」

あー…。

 「そうか…そうよね。どうしよう…」

…まさかここで詰むとは…。

 「心配すんな。まったく問題ない」

またもや意外な伏兵がいたー!

 「マーシャンの匂いは完全に判別できる」

 「さすがニャンコ獣人はみゃっ!」

 「ニャンコ言うな!」

…ごめんなさい。

 「どちらにせよ…問題は解決!頑張ってマーシャン追うわよ!」

 「「おー!」」


こうして。
マーシャンを追跡すること二日。

ついに。
マーシャンを発見し、行動を開始した。



あとで露見することではあるが。
 当然、マーシャンがそんな小難しいことを考えて行動するわけがない。
…お互いの盛大な勘違いが後の悲劇へと繋がる…。


ほとんどマーシャンの悲劇だけど。
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