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第十七章 原点回帰でキビCんです!

第六話 ついに変態巨人と対決! リルの尊い犠牲によって、目的達成するんですよね…

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「まずは“秘密の村”まで行ってみましょうか?」

「そうですね。ここからでしたら割と近いですし」

 次の日の朝。
 ご飯を手早く済ませてから、私達は出発した。足取りが重い3人のせいで、遅々として進まなかったけど。

「あんた達さぁ……シャキッとしなさいよ! これじゃあ今日中に“秘密の村”に着かないわよ!?」

「ムチャいうなよ! 私達はちょっと前まで正座させられてたん……」

「させられてた……のですか?」

 出た、ヴィーの蛇睨み。

「あ、いや、そういうわけでは……」

「まだ反省が足りないのでしょうか……」

「しました! 目一杯しました! 大変申し訳ありませんでした!」

 立ったまま腹筋運動を黙々とこなすリル。最近、うまくなってきた気がする。

「うう、足が痺れて……歩けません……」

 エイミア……自分のスキルを忘れてない?

「エイミア、|≪蓄電池≫《バッテリーチャージ》の応用で治癒できるんじゃないの?」

 エイミアは呆気にとられた顔をしてから「……忘れてました……」と口を動かし。

「|≪蓄電池≫《バッテリーチャージ》!」

 ばちばちっ!

「よし、もう大丈夫です!」

 無事に回復したようだ。

「……エイミア姉、ズルい。私も治して」

「リジー、ごめんなさい。治癒できるのは自分だけなんです」

 ……リジーも忘れてるわね。

「リジー、あんた呪剣士でしょ? 呪いの反転で治癒できるんじゃないの?」

 リジーも呆気にとられた顔をしてから「……不覚、忘却……」と口を動かし。
 自分の無限の小箱アイテムボックスから血染めの革鎧を取り出し、装備した。

「装着者を即死させる呪いを反転。一気に回復」

 無事に回復したようだ。
 あとはリルだけど……。

「あんたは回復する手段は……ないわね」

「うるっせえ!! サーチだって同じだろが!」

「あら~? それ以前の問題なんですけど~?」

「な、何だよ……」

「私、足が痺れることありませんから」

「うわきったねえええ!!」

「というわけだから。あんただけ・・、我慢して歩きなさい……行くわよ~~」

「「「は~い」」」

「ちょっと待て! こら! 歩くの早いんだよ! ちょっと! 待てっつってんだよおおお!」

 ……だだっ広い荒野に、リルの悲痛な叫び声が、虚しく響く……こともなく風に流されていった……。


「この辺りです」

 3時間ほど歩いた先で、ヴィーは立ち止まった。

「この辺りって……結構アバウトな……」

「半径10m圏内でしたら、何処からでも村に入れるのです。何せ目印もありませんから……」

「……半径10m以内だとしても、よく場所がわかるわね」

「私達は入口からの歩数を数えてますし、太陽の位置で方角を確認してますから」

 歩数と方角で毎回割り出してるわけ!? 用心深いと言うか、手間と言うか……。

「あとはリルだけか……。まだ足が痺れてるのかしら」

 いくら何でも、もう治ってるよね?

「……? サーチ、リルが何か叫んでますよ?」

「……リル姉、叫んでる……と言うよりは悲鳴に近いような……」

 悲鳴? リルが?

「ゴキブリでもいたのかしら……あ、飛び上がった」

 すげえジャンプ力だな!

「ジャンプ……にしては高いですね」

「滞空時間も長いと思われ」

 ……ジャンプじゃないわ!

「変態透明人間に捕まったのよ! みんな、戦闘準備! リルを助けるわよ!」

「「了解!」」
「らじゃ」


「ばっかやろおおおっ! 離せ! 離しやがれ………た、高いニャ! やっぱ離しちゃダメニャアア!」

 何かおもしろいけと口走ってるけど、今は決定的なチャンス!

「ヴィー! 手筈通りお願いね!」

「はい………サーチ、リルも巻き込んでしまいますが……?」

 尊き犠牲でOK!

「構わないわ、やっちゃいなさい!」

「……責任の所在はサーチにありますので。|≪染色≫《ステイニング》!」

 ヴィーの放った聖術が変態透明人間……長いから変態巨人でいいや……を包み込む。無論、リルを巻き込んで。

「うわ、何だこりゃ!? うわっぷ! 冷た!? 一体ニャンニャンニャ!?」

 何もないはずの空間が、次第に赤色に染まっていく……ついでにリルも。

「……うわ、大きい……!」

 エイミアが驚くのもムリはない。変態巨人の全長は……えーっと……ビルの5階くらいかな。
 え? 正確な高さを教えろって? 自分よりデカいヤツのなんか、すぐにわかるかっつーの!

「……あんなモノに私は弄ばれたのですか……!」

 ヴィーが詠唱を始めた。結構ハデな聖術を見舞うつもりみたいね。

「ヴィーの術が完成するまで援護するわよ! エイミアとリジーは遠距離攻撃! 私はリルを助けるわ!」

「わかりました!」
「うぃ!」

 エイミアが電撃を放ち、リジーが炎を吐く。

 ギィアアアアッ!!

 変態巨人は苦悶の声をあげる。

「……意思がないのかしら? 野性丸出しの叫び声……」

 エイミアとリジーの攻撃を避けようとはするけど、反撃をする素振りは見せない。ただ暴れ回るだけだ。

「おかげで接近は……しやすいけどね!」

 変態巨人の足元に着いた私は、|≪偽物≫《イミテーション》の短剣でアキレス腱を斬る。

 ギィイエ!?

 アキレス腱を斬られて、変態巨人はバランスを崩す。

「た、倒れる倒れる地面が迫るニャアアアアア!!」

 あーうるさい。

「わかったわかった! 助けてあげるから待ってなさいよ!!」

 短剣を針に作り変えて、変態巨人の手の甲へ。リルを摘まんでいる指の爪に……! 

 ぶっすぅぅぅっ!

 イギャアアアアアアアアア!!

「見たか! リルお得意の深爪攻撃!」

「元祖はサーチだろが! けど脱出できたぜ!」

 リルが離れたのを見計らって、私も離脱する。

「今よ、ヴィー! 強力なヤツぶち込んでえええっ!」

 奇跡の閃光が煌めき、変態巨人は跡形もなく消滅……。

「そ、そんなあ! まだ詠唱終わってませんよ!」

 ……しなかった。

「じ、時間稼ぎぃぃぃ! 何でもいいから攻撃攻撃ぃ!」

「え? え? ……とりあえず|≪鬼殺≫《バーサーク》!」

 どごおっ!

「舞い狂え、“血塗られた梯子”ブラッディラダー

 がごおっ!

「こうなりゃヤケよ! 未完の秘剣“竹蜻蛉”!」

 ずば! どす! ざくぅ!

「わ、私もか!? ……|≪獣化≫《アーマード》引っ掻き!」

 バリバリ!

「お、お待たせしました! 術が完成しま……した…………けど」

「どうしたの!? 早くぶっ放して!」

「…………あの…………生きてます?」

 へ?

「あ、小さくなってる」

「息……してません」

「脈も……なっしんぐ」

 ……私はヴィーに手を合わせて。

「お願い。回復してやって」

 ヴィーは完成した術を空に放って。

「……凄く消化不良です……」

 ……ごめんなさい。

「それよりさ、私に付いた赤、落ちるのか?」

 ……さあ? 


 リルはヴィーの機嫌が直るまで、赤いままだった。
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