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第十六章 冷たくて寒くてCになっちゃう…

第十四話 エイミアが私達のために犠牲になり……キミの瞳がオーシャンビュー☆ ……なんですよね…

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「ようこそグラツへ。大変に良いモノを見せてもらぶっ!」

「我らはあなた方を歓迎しますぞ! ピンクばんざーぶごっ!?」

「げへへへ……お嬢ちゃん、今夜おぢさんとイヤらしいはべらっしゃ!!」

「ふーっ、ふーっ、ふー……」

「エイミア、どーどー。殴ってもいいけど殺しちゃダメよ? 最後のヤツは別にいいけど」

「はい」

 めこっ!

「ぎゃあああああああっ! ……ぶくぶくぶく」

 あ、股間を押さえたまま泡吹いちゃった。

「エイミア、ブーツをよーく消毒しときなさいよ」

「当然です! ヴィー、|≪浄化≫《ピュリファイ》!」

「え!? あ、はい!」

 ……さすがのヴィーも今の・・エイミアには逆らわないほうがいい、と判断したらしい。急いで聖術をかけた。

「なあ、私達はどこに連れていかれてるんだろうな?」

 ……リルの疑問ももっともだ。
 結界の上での騒動のあと、私達は町の入口を教えてもらった。すぐ近くに雪のトンネルがあって、その先が町の門だったのだ。その部分だけ結界に穴が空けられて、出入りができるようにしてあった。
 その穴を抜けると、エイミアのパンチラを喜ぶ群衆の万歳が起き (エイミアが全員黒焦げにした)、さらに先に警備隊が現れて……ただいま連行中、というわけだ。

「何で私達が捕まらなくちゃならないのよ!」

「捕まって当たり前だ! どれだけ罪のない市民をシバき倒したと思ってるんだ!」

「いや、全員迷惑防止条例違反でしょ……」

「その前にお前らの公然わいせつ罪だろうが!」

「バッカじゃないの!? 見せたくて見せたわけじゃないわよ!」

「だからといって、釘棍棒で殴り倒していい理由じゃないだろ! 完全な傷害罪だよ!」

 うぐ……! それを言われると……!
 仕方ない。この手は使いたくなかったけど……!

「なら! 公然わいせつ罪も釘棍棒での傷害罪も、この娘がぜ~んぶ1人でやったことです!」

 そう言ってエイミアを指差した。

「!! サ、サーチ!?」

「本当か!? ならお前だけ・・逮捕だ!」

「そ、そんな……! ちょっとサーチ!」

「じゃあ私達は無罪放免ってことで! 失礼しま~す……」

「サーチ! 助けてくださいよおおおっ!」

 ……口笛を吹いて誤魔化す。

「ほら、行くぞ! 事情は警備隊の待機所でたっぷり聞かせてもらうぞ!」

 さよーなら、エイミア! あんたの犠牲はムダにしないわああっ!
 ……と考えつつ、手を振って見送った。

「サ、サーチぃぃぃっ! 覚えてなさいよおおおっ!!」

「……一番最初に現れるザコが、逃げながら言う捨てゼリフと同じね」

「……サーチ、お前……つくづくひでぇヤツだな……」
「いつか罰が当たると思われ」
「でも、そんな冷酷なサーチも素敵……」

 ……ヴィーの反応は、さらっと流しとこ。

「まずはギルドへ行きましょうか。氷河の城壁アイスキャッスルの詳しい情報を集めないと……」

 エイミアの貴重な犠牲をムダにしてはならない。

「……言っとくが、エイミアが怒っても……私達は知らねえからな」

「わ、わかってるわよ」

 ちっ。全員巻き込もうと思ってたのに。

「どうせお前のことだから、私達を巻き込んで自分への風当たりを弱くしよう……とか企んでると思ってな」

 鋭い。
 まあ落ち着いたら、ちゃんと迎えに行くわよ。


「……ん? あんたらは、結界の上にいた……」

 私達がギルドに入ると、受付に座っていた海賊みたいなおっさんが反応した。

「そうだけど……実は氷河の城壁アイスキャッスルの情報が欲しくて」

氷河の城壁アイスキャッスルの? ……あ、もしかして、あんたらが船の底抜きボトム・フォールアウトか?」

 お? 私達のパーティ、ちょっと有名になってきた?

「そうだけど……」

「ほう、そうか。あんたらが“八つの絶望”ディスペア・オブ・エイトばかりを攻略して回ってる、という超物好き・・・・の……」

 パーティまるごと、変わり者扱いされてるのかよ!

「はいはい、モノ好きで変わり者パーティですよ!」

「わっははは、そう膨れるな! それだけ名前が知れ渡っているということだ! 実際にAクラスパーティでも二の足を踏む“八つの絶望”ディスペア・オブ・エイトを2つも攻略しているのだ! 胸を張るがいい、胸を!」

 ……このおっさんが「胸を張れ! 胸を!」 って言うと、セクハラにしか聞こえないのはなんでだろう。

「……それで? 氷河の城壁アイスキャッスルの情報はあるの? ないの?」

「あるぞ。少し前にAクラスパーティが氷河の城壁アイスキャッスルに行ってきてな。その時に書いた『今年の氷河の城壁アイスキャッスルの傾向と対策』を売っている」

「……何なのよ、その入試の問題集みたいなヤツは……」

「にゅーし?」

「あ、何でもないです……リル、メモるな! あ、何でもないです。おほほほ……」

 あーめんどくさい。

「と、とにかく! 1冊売っていただけませんか?」


 とりあえず『今年の氷河の城壁アイスキャッスルの傾向と対策』ってのを買ってみたけど……。

「……薄いな!」

 銀貨3枚払った対価がこれかよ! めっちゃぼったくられた気分だわ!

「まあ買ったんだから読むしかねえだろ」

 そう言ってリルが本を手に取って読み始めた。うちのパーティのマッパーだから、リルが把握してくれれば一番いいか。
 ……と、思ってたんだけど……。

「……うっがあああああ! 何だこれ!? 全然わかんねえよ!」

 そう言って本をリジーに投げた。

「どれどれ……パス」

 リジーは1ページもめくらないうちに、ヴィーにバトンタッチした。早いな。

「? ……そんなに難しいのですか?」

 そう言って何ページかめくるヴィー。読み進むにつれ、ヴィーの眉間のシワが深くなっていく。

「……これは……難しいとかいう問題ではないですね……。感情の問題と言いましょうか」

 感情の問題?

「ちょっと見せて」

「……どうぞ」

 ……なぜか異様にヴィーが疲れてるように見えるけど……?
 どれどれ……。

 ペラ……

『はあ~い☆ 世界的に超有名な、Aクラスパーティの虹の極光レインボーサンシャインが! と・く・べ・つ・に……キミたちに教えてあげちゃう』

 パタンッ!

「……確かに感情の問題ね……」

 何よこの虹の極光レインボーサンシャインって……。

「先まで読んでみましたが……上から目線の解説と、異様にキラキラした文章が目に痛いと言いましょうか……」

 あ、ヴィーがちょっとイラついてる。

「はあああ……仕方ない、腰を据えてやりますか……」

 えーっと何々……『キミの瞳がオーシャンビュー☆』 ……破りたい。


 その頃。
 エイミアは警備隊待機所の独房内で、必死に身体を擦っていた。

「サーチぃぃぃっ! 絶対に許さないんだから!」

 バチ……バチバチ……
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