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第十六章 冷たくて寒くてCになっちゃう…

第十話 スノードラゴンの素材でウハウハ! 一気に財政が潤ったのに……! なぜ温泉が……ですよね…

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 私が警戒しながらスノードラゴンに近づく。

「|≪聖火の加護≫《ホーリー・ファイアベール》!」

 ヴィーが念のために、私に対氷属性の聖術をかけてくれた。ありがと、ヴィー。
 ふざけて投げキッスしたら、ヴィーが卒倒した。なんでやねん。

「……あれだけ血を流してれば……死んでるとは思うけど……」

 1m近くまで来た私は、|≪偽物≫《イミテーション》で作れる限界の長さの棒を作り、つつく。  

 ツンツン、ツンツン

 ビクビク! グェア……

「わたたたた」
 ズザザザザ!

「どうしたんですか、サーチ!?」

「な、何でもない! 大丈夫大丈夫!」

 まだ生きてたのね……! ていうかスゴい生命力。

「……口から短槍をぶち込まれて、身体を串刺しにする感じで貫通したってのに……」

 敵ながらあっぱれ。私は手を合わせてから、長い針でドラゴンの頭を突き通した。
 これで死ななかったらゾンビよね……あ、瞳孔が開いてる。

「……OK! 間違いなく死んだわ! 全員来てもいいわよー!」

 エイミアが歓声をあげながら走ってきて…コケた。
 そのままキレイに滑ってきて……私の前で止まった。

「……サーチぃ……痛くて冷たいです……」

「……エイミア、わざと? ウケ狙い?」

「わ、わざとじゃないですよ~……びええええっ」

 ……あんたの場合は、わざとじゃなくても笑いをとれるしね……。
 次にやってきたヴィーが必死に笑いを堪えながら、エイミアの擦り傷を治療していたのが、また笑えてしょうがなかった。


「リル、あんたの新技は確実に私達の中では、一番の破壊力よ」

「お、おう! これもダンジョンでサーチに相談にのってもらったおかげだ!」

 以前の長~いダンジョンの旅館で、私はリルから「|≪獣化≫《アーマード》してから≪全身弓術≫をしたらどうだろう?」と相談をされたのだ。
 だから「足を弓代わりにする感じで、両手で弦を引っ張ればスゴい威力になるんじゃない?」とアドバイスしたのだ。その後、矢を短槍に替えたりしてアレンジを加え、少し前に完成に至ったのだ。

「なるほど、それで最近はスパッツを履いていたのですね」

 ……両足を使って弓代わり……ということは、大股開きになるわけで……。
 最初に私の前で披露したとき、私がつい「おぅふ。大胆な紫」と呟いたのがしっかり聞こえてしまい……。リルはスカートの下にスパッツを履くようになった。ちえ。

「……とりあえず解体する? ドラゴンの素材だから、高く売れると思われ」

 そ、そうだわ!

「こ、これで財政問題は一気に解決よ! 素材は当然高額で売れるし、討伐証明部位を持っていけばギルドからも報奨金がもらえるし……! うふ、うふふ……あはははははははは!!」

「おーし、さっさと解体始めるぞー」

「はーい。私は尻尾からいきまーす」

「私は爪を集める」

「私は角をやります……あ、サーチ。笑い終わったら頭をお願いしますね」

「ははは……へ? ……は、はい」

 ……なにげに、一番難しい頭を私にまわしたわね……。


 それから3時間ほどかけて解体を行い、相当量のドラゴンの素材が手に入った。
 さすがにドラゴンの臭いがプンプンしてるような場所に、モンスターが寄ってくるわけもなく……平和な時間が過ぎていった。

「うわ~、血でベトベト……すぐにでも風呂に入りたいわ……」

「まったくだな。ま、あと少しで小さい村があるから、そこで宿を探そうぜ」

「そんな小さな村に温泉があるんでしょうか?」

「ある。この辺りはどこを掘っても湧くって言われるくらい、温泉が豊富な場所」

「多分ですが近くに火山があるのでしょうね。火山の麓には、よく温泉が湧く……と聞いた事があります」

 相変わらずいろんなことを知ってるわね……。

「その村へ向かいましょう。宿がなくても廃屋の1つくらい借りられれば、ずいぶんと楽だしね」

 風呂に関してはヴィーに頑張ってもらえば何とかなるし。何せ雪は大量にあるのだ。水には事欠かない。

「……ちっ。なかなか簡単には行かせてくれそうにないな。敵だ」

「……何がいるかわかる?」

「クンクン……たぶん狼だな。20~30匹くらい、いるかな」

 え~……めんどくさいな。
 単なる狼だから経験値はもらえないし、多いから厄介だし……。
 私は周辺を見渡す。少し離れた丘に雪の吹きだまりを見つけた。

「よし、あれを有効活用しよう」

 私は炎熱石を利用して作った炸裂弾を取り出す。あの鬼才道具屋が作った簡易護符シンプルアミュレットをヒントに、私が作ったのだ。えへん。

「全員下がっててよ~……ちぇいっ!」

 さっき見つけた吹きだまりに向かって投げる。

 ひゅ~~ん……ぼふっ

 よし! ナイスな場所にジャストミート!

「3……2……1……」

 ……どおおおん……
 ……ドドドドドドドドドドドドッ!!

「あ、雪崩が……」

 ドドドドドド!!
 あお~~ん……
 きゃぅぅん……
 ギャンギャンギャイーン…… 

「……よし、一掃できたわね」

「「「「…………」」」」

「……何よ、全員黙りこくって」

「……イヤな、つくづくサーチは血も涙もないヤツだな~、と思って……」

 なっ!?

「どういう意味よ!?」

「どういう意味も何も、そのまんまじゃねえか。正面切って戦ってもらえずに、雪崩に巻き込まれて死亡って……狼が不憫すぎる……」

 全員がそろって頷く。エイミアなんかちょっぴり涙してるし。

「……ヴィーまで?」

「あ、え!? そ、その……深い意味は……」

「ああ、そうなんだ……ヴィーまで……ヴィーまで……」

「ちょ、ちょっと待ってください! 私はやっぱりサーチに味方します!」

「はいはい、ありがと。じゃあ先に進むわよー」

「「「は~い」」」

「え? ………み、皆グルなんですね!? 私をからかったんですね!? ちょっと! 答えて下さいよ!! ねえってば!」

 ……全員必死に笑いを堪えていた。


 どうにか夕方には村に到着し、1軒しかない民宿に宿泊できた。
 ……ただ……。

「へ!? 温泉がないっっ!?」

「すんませんなあ……。最近なぜか、とんと湧かなくなっちまって……」

 そ、そんな……。

「な、何で急に……?」

「それがねえ……氷河の城壁アイスキャッスルが急にデカくなってきてから」

「ア……氷河の城壁アイスキャッスルが原因だとおおおっ!?」

 私はヴィーとリジーに、キッ! と視線を送る。

「今から出陣よ! 氷河の城壁アイスキャッスルを完膚なきまでに溶かしてやる!! 

「サーチ、流石にそれは……」

「一晩どころか1ヶ月くらい添い寝してあげるから!」

「リジー、行きますよ!」

「ヴィー姉!?」

「さあ、氷河の城壁アイスキャッスルに行って、生きて活きてイキまくりますよ! でも逝っては駄目です、氷を煎ってやりましょう!」

「ヴィー姉が壊れた!?」

 1時間くらいで諦めました……。 
 だけど氷河の城壁アイスキャッスル許すまじ……!  
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