上 下
251 / 357
第十三章 帝国潰してもEんです!

第十七話 “下弦の弓”と会議…できれば私達が動きやすいようにしたいんですけど…あ、ヴィーが大活躍!…ですよね…

しおりを挟む
「…え~…これより第2回対帝国革命戦線の会議を行いたいと思います」

パチパチパチ…

…エイミアとヴィーのまばらな拍手が郷愁を誘う。

「…“下弦の弓”の皆さんも、リルも、ブスッとしないでさあ…」

「………」

「「「………」」」

「…活発な…議論を…」

「………フン」

「…何だよアイツ」
「そっちから仕掛けてきた癖に…」
「嫌な態度だな…」

…は、話が進まない…。


玄関でのバトルが終結したあと、“下弦の弓”は私の謝罪を受け入れてくれた。
フィリー曰く「罠を想定してなかった私達も悪いし、外の見張りに意識を向けすぎたし…」とのこと。
外の見張り…密偵は粗方始末したつもりだったんだけど…まだいたのかしら?

「おい」

で、問題はリルのこの発言だった。

「何よリル」

「こいつら…本当に“下弦の弓”か?」

少し鼻白む“下弦の弓”メンバー。
ちょっとリル!今のタイミングは最悪だって!

「リル、この人達はちゃんと」

「待ってください。リルさん…でしたね。あなたの疑問は尤もです。まずは相手を疑ってかかるくらい用心深くないと、冒険者として永くはやっていけませんから」

…フィリーのナイスフォローのおかげで“下弦の弓”も冷静になったようだ。

「証拠はあります。冒険者証がありますのでお見せしますね」

冒険者証それはいい。私が言いたいことは、そういうことじゃねえんだ」

「…でしたら、どういうことですか?」

するとリルはフィリーから目を逸らして、私に爆弾を投下してきた。

「こいつらがあの有名な“下弦の弓”?はっきり言って弱すぎるぞ・・・・・


ぴきぃん


…あ、空気が凍った。

「な、なんだとおおおおお!?」
「弱すぎるとは言ってくれるじゃねえか!!」
「流石にそれは聞き捨てなりませんね…!」

うわあ!フィリーまでキレかかってる!

「リル!あんたはなんつーことを…!謝りなさい!謝れコラ!」

「な、何だよ!何でサーチは“下弦の弓”あいつらの肩を持つんだよ!」

「そういう問題じゃなあああい!今は味方同士争ってる場合じゃ」

「味方!?こいつらが!?あんな子供騙しの罠・・・・・・に引っ掛かる連中が役に立つのか!?」


ぴきぃぃぃん


「…あ、さらに凍結」

「…ですねえ」

「お茶入りましたよ~」

「あんたらああああ!そんなとこでマッタリしてないで止めなさあああい!!」


「このアマ、言わせておけば…!」
「おいおい、ここまで真っ平らだと・・・・・・・・・・男か女かはわからんぞ」


びきぃ!


「…あ、凍結がヒビ割れ」

「…ですねえ」

「お茶菓子もあります」

「だああああかああああらああああ…」

「サーチの分のお茶です、どうぞ」

「あ、どうも…じゃなくて!」


「殺す!!ぜっったいにぶっっ殺おす!!」

「うわあ!男女がキレたあ!」
「男女か!?女男じゃねえか?」
「最初とは全く関係ない議論と化してますが…仕方ない!迎撃するよ!!」
「「「おうっ!」」」


「あ、やば。本格的な戦闘になりそうね」

「…止めるべき」

「じゃあ私がリルを止めます」

「あら、でしたら私が“下弦の弓”を止めます」

「止めるのよね!?『止める』の前に『し』があった気がするんだけど!?」

「サーチ姉、たぶん『仕止める』に変換される、と思われる」

やああめええてええ!!


「お前らみたいな騙りなんざ、怖くとも何ともねえよっ!」

「|≪蓄電池≫《バッテリーチャージ》、微妙にマイルド」

バリバリバチィ!!

「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!」

「なんだ!?同士討ちか!?」
「チャンスだ!何でもいいからぶっ飛ばすぞ!」
「皆、囲んで一気に決めるわよ!」
「「「おう!」」」

「…足首を一瞬だけ|≪石化魔眼≫《ゴルゴン》」

かちん
ごきっ!ぐきぐきっ!

「「「あぎゃあああああ!!!」」」

“下弦の弓”は全員同時に倒れ込んだ。
ここまで聞こえた複数の「ぐきっ!」はかなり痛そうだ。出来れば捻挫くらいで済んでくれればいいんだけど…。

「あ、足が…!って骨が折れてるぅぅ!!」
「チクショウ!何でいきなり…」
「うああ!足が変な方向に曲がってるうう!!」
「早く治療を!!お願いだから治療してえええ!!」

…2人は骨折確定。全治1週間ってとこだから…戦力外は間違いないわね。

(ヴィー!やり過ぎよ!)

(すみません…思った以上に上手くいってしまいまして…)

ヴィーは申し訳なさそうに、ケガ人の救護に向かった。
ま、ヴィーみたいな美人に看てもらえるんだから、ケガをした男共はまんざらでもないだろう。


…で、現在。
マイルドな威力のはずだったのに、しっかり焦げてるリル。

「びええ~…」

エイミアの頭にでっかいたんこぶができている。どうやら電撃の調整を誤ったらしく、キツい一発をもらっていた。

「「「………」」」

反対側に座るのは、若手No.1と呼び声高い“下弦の弓”。但し全員、足を負傷中。 
言っちゃ悪いけど…若手No.1の割りには、どいつもこいつも使えねえ。

「あの~…何か意見は…」

…リルと“下弦の弓”との間に火花が散るばかりで、誰も発言することはない。

(ヴィー、何か言ってよぉ…)

困り果てて、ヴィーに小声で意見を催促する。

(わかりました)

「何かご意見はありませんか?」

「はい!」「はい!」「はい!」

おいっ!
私の時と対応が違いすぎるだろ!

「はい、そちらの方…」

「司会進行をヴィーさんに代えていただきたい!」

「「さんせーい!」」

おおいっ!!

「…さ、賛成の方は挙手をお願いします…」

ざっ!

全員賛成かよ!
ていうかリジーにリルに…エイミアとヴィーまで!?

(サーチ姉、我慢我慢)

(リジー!何であんたまで…)

(今はヴィー姉が司会進行した方が、スムーズに進むのは明らか。我慢我慢)

ぐ…!た、確かに…!

「ヴィーさんが司会をしたほうが華がありますな・・・・・・・
「まったくだ。あっはっは」

(…ヴィー…あの2人は後で、もう片方の足も石化して)

ついでに「ぐきっ!」っと。

(…了解です)

「賛成多数で可決されました」

パチパチパチパチパチパチ!!

必死に拍手してんじゃねえよ!!

「じゃあ代わりま~す」

(ヴィー、私達が都合良く動けるよう、取りまとめて)

(はい、わかりました)

(ごめん、この借りは返すから)

「…それじゃあ議案第一号から…」


「それでは賛成の方は挙手を」

ざっ!

…すげえ、約15分で最終議案まで来ちゃった。

「それでは可決ということで…」

…ホントに私達の都合良く…ていうか良すぎる内容で全部可決された。

「よっし!それじゃあ決まった通りに動くわよ!」

私は早速フィリーの前に座り。

「じゃあサクサクと城内の情報を言ってもらうわよ」

「え!?な、何で急に強気に!?」

「え?あんた達、賛成したじゃない?実際の作戦行動は全部私達に任せる・・・・・・・・って」

「「「「…へ!?」」」」

私の背後でリジーが議事録をチラチラ見せながら言った。。

「3ページ目に書いてある。ちゃんと全会一致だった」

議事録をひったくるように奪い、覗き込むフィリー。

「………た、確かに…全会一致…な、何であなた達は手を挙げたの!?」

「「「…いや、フィリーも挙げてたし…」」」

…ヴィーが司会に代わってから、すっかり舞い上がった“下弦の弓”の男性陣は、内容を深く気にすることもなく議案の全てに賛成した。
それに釣られる形で女性陣も賛成した。
結局、その状況を鑑みたヴィーが私達に都合が良い議案をぶっ込みまくり…。
現在に至る♪

「さあ、決まったことなんだから!さっさと吐きなさい!」

「な、何よこれ!?まるで取り調べじゃないのよ!」

ヴィーが大量の書類を持って“下弦の弓”に近づく。

「すみません。現在スケルトン伯爵が怪我で療養中ですので、皆さんで書類の整理をお願いします」

「「「へ!?」」」

またもリジーが議事録を持って言う。

「今度は5ページ目。これも全会一致」

「…嘘だろ…『怪我人は後方支援に徹する案』…全会一致…」

「というわけです。サクサクと書類を処理して下さいね♪」

「「「は、嵌められたあああ!!」」」


この後。
“下弦の弓”の男性陣が、極度の女性不信に陥ったのは…言うまでもない。

「頑張って下さいね。疲れて倒れた時は、私が看てあげますから」

「「「も、もう勘弁して下さい…」」」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

【完結】番を監禁して早5年、愚かな獣王はようやく運命を知る

恋愛
獣人国の王バレインは明日の婚儀に胸踊らせていた。相手は長年愛し合った美しい獣人の恋人、信頼する家臣たちに祝われながらある女の存在を思い出す。 父が他国より勝手に連れてきた自称"番(つがい)"である少女。 5年間、古びた離れに監禁していた彼女に最後の別れでも伝えようと出向くと、そこには誰よりも美しく成長した番が待ち構えていた。 基本ざまぁ対象目線。ほんのり恋愛。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後

有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。 乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。 だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。 それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。 王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!? けれど、そこには……。 ※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

処理中です...