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第十章 優勝すればEになる?

第十七話 いた!いたよ!…と思って近づいたら……………幻滅ですよね…

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「…これが今日最後の試合ね…」

リルにおもいっっきり噛みつかれた左の太ももを擦りながら、リルに話しかける。

「…そうだな、こいつで最後だ」

私に容赦なんてカケラもなくど突かれた頭のたんこぶを擦りながら、リルが答えた…。

「ほら、サーチもリルも。仲直りの握手握手」

エイミアが私とリルの肩に手を置く。強烈な静電気を纏って・・・・・・・・・・

「「そういうのは脅迫って言うんだよ!」」

「脅迫でも何でもいいじゃないですか。仲直りのいいキッカケですよ」

……まあ…ね。
正直、リルとギクシャクしたまんまはイヤだし…。

「…ごめんリル…頭、痛かったよね…」

「……私も…悪かった…強く噛みついちまったから…」

まったくだよ。
有らぬ誤解を抱かれたっつーの。「昨日はお盛んだったんですね」じゃねーよ。
まあ、それは何も言わずに。

「じゃ、握手」

「ん、わかった…」

こうして仲直りした。まあいつもこんな感じなんだけどね。


「やっぱりサーチの考え過ぎじゃねえか?」

「そんなことはないわ。“刃先”エッジが出場しなければ公爵のメンツを潰すことになるんだから」

実際に私達の席から見えるアプロース公爵には、焦りの感情は見受けられない。
よほどの役者なのかもしれないけど…なら裏で「能無し」呼ばわりされることはないだろう。

「あれ?アプロース公爵の隣にいるの…」

「そうね。帰国したはずのドノヴァンさんね」

「あいつ…私達の脅迫を無視したのか!?」

「わかんないけど、一応報復・・はしといたわ」

「…噂流したのか?」

「ええ。ドノヴァンさんの地元に・・・

「うっわえげつねえ…」

失礼ね。効率的と言ってほしいものだわ。

「ま、いいじゃない。帰国してから大変なのは私達じゃないんだし」

『それでは本日最後の対戦となります!』

あ、始まった。

『それでは両者前へ!』

そうそう、準々決勝からあのムダな入場は無くなった。
どうやら皇帝から「飽きたからやめろ」とご命令があったらしい。  
なら最初からやるなっつーの。

「見る必要はなさそうね…帰って何か食べに行かない?」

「…ちょっと待て」

「どうしたの?」

リルは向かって左側の貴族に注意を向けている。

「あの貴族の子息ボンボン…お前が以前に戦ったスケルトン伯爵と戦い方似てたよな?」

「それはそうだろう。あの貴族の子は僕が教えたんだから」

「ひゃいっ!…び、びっくりしました!」

「あんたねえ…結構前から私達の隣に座ってたわよ……連れが失礼しましたスケルトン仮面」

「だからスケルトン仮面ではなくスケルトン伯爵なんだが…そちらの勇者お嬢さんより君のほうが余程失礼だと思うよ」

「それはそれは失礼しました…って!あんた今無視できないこと言ってたわね!」

「は、はい。確かに勇者って単語がひみゃ!」

「バカッ!そう気安く勇者勇者言うんじゃない!」

「あ~…気になさらないでください。そちらのお嬢さんが昨日“知識の聖剣”アカデミアを振り回してみえたのを目撃しただけ」

「エーイーミーアー…」

「あ、ちょっとだけ振り回してみただけです!ソレイユから言わいひゃい!」

「あんたって子は~……場所を考えてからやりなさい!!ここが敵地だってわかってんの!?」

「いひゃい!いひゃい!」

「何とか言いなさいよ!いひゃい!だけじゃわかんないでしょ!?」

「あの…その状態では喋れないのでは?」

「じゃあこうすればしゃべるの!?」

「いひゃひゃみょーーーーーーんんんっっ!!」

「…あの…」

「いつものことだから気にすんな…」

「あ、いや、よく伸びる口ですね…」

「あ、そっちか」

…スケルトン仮面はなんかゴム人間並みのエイミアの口が気になるみたい。
……なんか気が削がれたので止めよう。

「く、口があ!痛いですうぅっ!びええええっ!!」

「……勇者のイメージが……」

「…エイミアに代わってごめんね」

「サーチが原因だろ!」

…ホントにすまぬ。


「すいませんけど勇者の話はご内密に…」

「大丈夫ですよ。勇者のお供・・の方の頼みですから、聞かないわけにはいきません」

…お供って言われると複雑ね…。

「でも“知識の聖剣”アカデミアを一目見ただけで…よっぽどの勇者マニア・・・じゃないとわかんねえぞ?」

…いるんだろうな…勇者グッズを集めるオタクって。

「我がスケルトン家の初代は勇者に剣の手解きを受けました。その剣術を発展させてきたのが歴代のスケルトン家当主なのです。ですから勇者の詳しい・・・情報も嫌になる程聞かされましたよ」

「あ、なるほど。一族代々勇者マニアってことなんだ?」

「………………………否定できないのが悲しいですね」

「サーチ…お前もう少し言い方を考えろよ…」

はーい。

「それとスケルトンかめ」

「伯爵、です」

「…伯爵さん。エイミアが勇者だと認めちゃって大丈夫なんですか?」

スケルトンかめ…伯爵は辺りを見回してから、声のトーンを下げた。

「…皇帝陛下のことですね?ご安心ください。我がスケルトン家はかなり前の代から気づいてます」

「でしょうね…世界一の勇者マニアからすれば、見破るのは簡単でしょうし」

「…マニアと言われるのも複雑ですので止めてください…」

「えー」

「話が進まねえから止めろサーチ」

…はいはい。

「ま、問題無いのなら大丈夫だな…エイミアが偽者扱いされてお尋ね者になっても敵わんし」

「我がスケルトン家としても皇帝陛下にいちゃもんをつけるわけにはいきません故に」

「お互いにとって『言わぬが花』てことで…それよりさ」

私は戦っている貴族の子息ボンボンを指差して。

「スケルトン伯爵さんはアサシンの技も教えた・・・・・・・・・・のかしら?」

「!?…いえ、私が教えたのは細剣レイピアによる刺突だけ…」

私が示した貴族は。
相手の首筋を絞め上げていた・・・・・・・

「そんな馬鹿な!!僕はあんな戦い方を教えていない!」

「そりゃそうでしょうよ。スケルトン伯爵の戦い方でどうやって背後にまわるのよ・・・・・・・・!」

そう言いながら私は駆け出す。
一気に加速して貴族の子息ボンボンに迫る!

ギインッ

ズザザザ!

一撃を弾かれた私はどうにか着地する。

「…あんたが“刃先”エッジね?」

「え?ええっ!えーーーっ!?…な、なんでボクが“刃先”エッジなんですか!!」

私はこの男に近づいた・・・・ことで確信した。
間違いない!こいつが“刃先”エッジだ!

「あんた何歳?」

「え、ボクですか?…18歳です」

「ウソよ!やっぱりあんたが“刃先”エッジだ!」

「な、なんでそんな事言うんですか!証拠はあるんですか!?」

「だって!あんた!」


おっさん臭い・・・・・・のよ!!」


びしい!

…会場が凍りついた。

「…どう考えても“刃先”エッジはいい歳だから…」

「……………く……………」

く?

「…くっそおおおおっ!!オレだって!オレだってなあ!いろんな努力したんだよ!でも消えねえんだよ!加齢臭って消すことができねえのかよおおおっ!………あ」

「………あ」

…あっさり吐いた。


試合後。

「ホントか!そんな手で消せるのか!?」

“刃先”エッジに≪気配遮断≫の応用で加齢臭を消せることを教えてあげた。

「ありがとう!ありがとう!」

…そう言って“刃先”エッジは去っていった。

…憧れのA級冒険者の悩みが…加齢臭って…。


帰り道。

「…落ち込むなよ、サーチ!元気出せ、な?」

テンションだだ下がりの私をみんなが励ましてくれた。

「うん、ありがとう…」

気にしても仕方ないよね…。

「あれ?サーチ、ビキニアーマーに何か挟んでありますよ?」

え?

「ちょっと取ってみて」

「はい」

バチン!ごとっ! 

「えっ!?」

「きゃああ!な、何でトップが外れたのよ!?」

「わ、私何もしてないです!…あ、何か書いてある」

え?


『大衆の前でおっさん臭いと言われた仕返しです。では決勝で会いましょう。“刃先”エッジ


「…ぶっ殺す…」
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