上 下
157 / 357
第十章 優勝すればEになる?

第二話 ルーデルとデートをすることになり………まあ良いのかな………ですよね…

しおりを挟む
「…そういえばさ……」

「…な、なんだ?」

「あんた何で帝国にいるの?」

「あ、あー…例の『過去を辿る』ってヤツさ…昔に闘武大会を見に来たことがあったから」

あー、そうだったわね。
下手したら女の子に逆戻り!…の状態はまだ解消されてないのね。

「………」

「………」

焦れったいわね。

「……………で?」

「……ん?」

「どこへ行くの?何をするの?何をしたいの?」

「え!?ええ……と……」

「………」

「…何も考えてなかった」

…ダメだこりゃ。


昨日の話がそのままトントン拍子で進展し。
今日は朝からルーデルとのデートと相成った。
けど…。

「………」

…こいつ顔を真っ赤にしたまんま俯くばっか!全然しゃべりもしない!
あんだけ喜んではしゃぎ回ってたんだから、少しは計画を立ててるのかと思えば…。

「………」

それも無し。
まっったく!初めてデートする思春期の子供かっつーの!ABすっ飛ばしてヤることヤってんだから今さら恥ずかしがるな!

「………」

…とも言えないのよね。
一応前世を含めても初めてのデートなのは私も同じなのだ。
…ホントはリードしてほしいんだけど…仕方ない。

「案が無いのなら私の買い物に付き合いなさい」

「はえ?」

「はえ?じゃないわよ。行くの?行かないの?」

「お供させていただきます」

…こいつ…余裕があるのかないのかわからん…。 

「わかったわ。ただおもいっきり荷物持ちやってもらうからお願いね」

「任された!」

よしよし、その調子よ。


「…ここかよ…」

今、私達は。
武器屋の前に立っている。
そう、デートなのに。

「買い物に付き合ってくれるんでしょ!?つべこべ言わない!」

「いや、そうじゃなくて…」

…何なのよ。

「色気もくそもないな…」

うるさい!


「この投げナイフいくら?」

「銀貨1枚と銅貨5枚だな」

「えー!!ちょっと高くない?少しくらいオマケしてよオマケ」

「あぁん?これでも安い方だぞ」

「ん~…じゃあさ、何本かまとめ買いするからさ。だからオマケして!」

「うーん…」

私が武器屋の店主と値段交渉をしている間に、ルーデルも武器をアレコレと見ていた。

「ルーデルも買うの?」

「ああ。もう呪剣士じゃなくなったんでな」

あ、そういえば暴風回廊ゲイルストームの一件の時に、男の身体に戻れた反動で職業もリセットされちゃったんだっけ。

「じゃあ今の職業は?」

「騎士」

あら意外。

「じゃあ今度からは槍を使うの?」

「騎士の武器は槍ばかりじゃないからな。今は短槍を使ってる」

短槍かあ。なら馬上戦より地上戦をメインにするのね。

「短槍にちょうどいい素材あるけど使う?」

「え?何があるんだ?」

「いつぞやの竜の爪が魔法の袋マジックバッグの底に残ってたのよ。短槍2本分くらいあるからさ、あんたにあげるわ」

そう言って竜の爪を店主に渡し。

「これで短槍2本作って。柄とかの素材は任せるからさ」

「竜の爪かい。こりゃ上等な爪だな…2ヶ月待ってもらえればいいモノが作れるぜ」

2ヶ月…ちょうど大会が終わるくらいか。

「わかったわ…ルーデルは大丈夫?」

「あ、ああ。俺は大丈夫だ…代金は?」

「まだいくらとも言えんな。武器の受け渡しの時でいいぜ」

「わかった…ただ魔法の契約マジックチェックは頼むぜ?」

「あいよ」

魔法の契約マジックチェックというのは…読んだままの意味。今回は貴重な竜の爪を預けるので、武器屋側が持ち逃げしたりしないように魔術的な契約を結んで戒めをしておく…という意味合いになる。
この世界では一般的なことだ。
ちなみにもし契約を破ったりした場合は…契約の精霊に一生つきまとわれることになる。結構地味な嫌がらせをされ続けるので、普通は契約破棄なんてバカな真似はしない。

「サーチいいのか?貴重な素材を…」

「いいのよ…(あんたの存在すら忘れてたことへのお詫びだし…)」

「…?…嬉しいんだが…すっげえ悲しい気分になったのは、なんでだろう…?」

…ムダに鋭い。

「気のせいよ気のせい。ていうか私からのプレゼント・・・・・・・・・が気に入らないのかしら?」

「そんなわけないだろ!嬉しいぜ!嬉しいよ!ありがとうな…」

…おい。何で私の頭を撫でる。

「いや、俺より低いヤツってなかなかいないうぐぉっ!」

うるさいっつーの!余計なこと言うな!
腹をおさえて店内で踞るルーデルを放置して私はカウンターへ向かった。


支払いを済ませて店を出ると。

「おおい!待ってくれ!」

何か喚いてるけどサクッと無視。

「待てっての!悪かったよ!俺が悪かったから!」

…無視無視。

「もう身長のことは言わない・・・・・・・・・・から!」

ツカツカツカツカ

「サ、サーチ…?うげえっ!」

「あんたにはデリカシーってモノが無いのか!!」

「ご、ごめ゛んな゛さい…」

「たく…次行くからちゃんとついてきてよ」

「は、はい…」


その後も…。

防具屋にて。

「おい、お前のバストじゃこのインナーはがばがばんぎゃあ!」

道具屋にて。

「お前…日焼け止めなんて今さら買ったってもう手遅れがほうっ!」

…食事中にも…。

「おい、口周りにソースがついてるぞ!ガキかってんだよ…あぎゃあ!」


……ルーデルのデリカシーのない発言は止まることを知らず…。
デートの終わりにも。

「…あんたさ…女の子に嫌われてない?」

「なんでだよ?」

自覚無しかよ!

「私に言ったようなことを、他の女の子に言ったりしたらダメだ!…てこと」

「え?サーチに言ったこと?」

…こいつ…天然か?

「だーかーらー…」

イライライライラ。

「あんた散々私に腹ど突かれたでしょうが!」

「あ、ああ!ああ!サーチに言ったのて…あー、そういうことね」

…ホントにわかったのか?

「いや、大丈夫だよ。あんなこと普通の女性に言うほど俺もバカじゃない」

「…ほおう…ならなんで私にだけ言うのかな…?」

「はあ?決まってんだろ。サーチだから・・・・・・言うんだよ」

「!」

「…ていうかサーチ以外に言うことはあり得ないよ」

「………」

ゆ、油断した!
ルーデルがこんな不意打ちをしてくるなんて…!

「?…サーチ何で赤くなってんだ?」

「ななな何でもないわよ!」

わ、ヤバい!耳が熱い…!

「おお~!サーチが照れてる~♪」

こ、こいつ…!

「やっぱり俺はサーチが一番かわむぐっ!」

…強硬手段ではあるが、ルーデルの口を口で塞いだ。

「………ぷはあ!…どう?ビックリした?」

「………」

あ。今度はルーデルが真っ赤になって固まってる。

「ふん。私に不意打ちしてきた罰よ!」

…なんか私ってルーデルという名の泥沼・・に嵌まって動けなくなってる気がする…。

それと。

「あんた達。最初から最後まで尾行してたことはわかってるんだから。そのままぶら下がってなさい・・・・・・・・・


「おーい!私が悪かったから下ろしてくれー!」

「何でこんなとこに罠が仕掛けてあるんですか~…お腹すきました…びえ~」

「…私完全な巻き添え…」


…朝まで叫び声が聞こえたけどスルーした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

【完結】番を監禁して早5年、愚かな獣王はようやく運命を知る

恋愛
獣人国の王バレインは明日の婚儀に胸踊らせていた。相手は長年愛し合った美しい獣人の恋人、信頼する家臣たちに祝われながらある女の存在を思い出す。 父が他国より勝手に連れてきた自称"番(つがい)"である少女。 5年間、古びた離れに監禁していた彼女に最後の別れでも伝えようと出向くと、そこには誰よりも美しく成長した番が待ち構えていた。 基本ざまぁ対象目線。ほんのり恋愛。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後

有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。 乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。 だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。 それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。 王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!? けれど、そこには……。 ※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

処理中です...