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第七章 砂漠で一番のDになれ

第八話 戸を開けるときんこんかんこん♪歩いてもきんこんかんこん♪…こんな旅館イヤですよね…

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私達は宿を出て…本命に向かう。

 「さあ!行くわよ温泉へ・・・!」

 「「おー!」」

 「…おい、流れ的にダンジョン攻略じゃぐはあ!」

…真リディアを引き摺ったまま公衆浴場へ。
そのまま服を剥かれて温泉に叩き込まれる。

どぼーん!…ぷかー…

リディアは温泉に浮かんだまま放っておかれた。

 「そう言えばハクボーンには竜生館の系列はありませんでしたね」

 確かに無かったわね。

 「系列なのか?」

 「まあ姉妹で経営してるんだから系列でいいんじゃない?…なんとなく気になってきたわ。アタシーここにもあるのかな?」

 「…ありそうな気もするな…」

 「…こうなってくると…気になりますよね…」

…よし!

 「じゃあ探してみて…あったら一泊しちゃおか!」

 「「さんせーい!」」

よし!じゃあ出ますか…。

ザバア
 ブーーーッ!

 「うわっ汚な!?」

…ちょうど目が覚めた真リディアが立ち上がった私を見て…ノックアウトした。

 「あ~あ…出血多量で死ぬぞこりゃ」

それより…さすがに赤く染まった温泉には入りたくないわね。

 「…やっぱりサーチの裸だから反応するのかな?」

 「……じゃあ今から目を覚まさせてあんたの裸にも反応するか試しましょうか?」

 私が真リディアに歩み寄ると。

 「いやああ!やめてやめてごめんなさいっっ!」

 私はエイミアの制止を一切無視して真リディアを叩き起こす。

 「う、うーん…は!オレは何をしてたんだ?」

 「リディア!あっち!」

ちょうど逃げようとしてたエイミアに桶をぶつけて足止めする。
で、タイミングよく真リディアとエイミアは目が合い…。

 「すげえ…。エイミアってスタイルいいよな…」

 盛大に鼻血を…。
…あれ?

 「…あんたエイミア見て何ともないの?」

 「え、そりゃあ毎日自分の・・・を見てれば慣れるさ…」

え”っ?

 「ちょっと。さっきは何で…」

うわ、自分でも赤くなってるのわかるわ…。

 「え?あ、あれは…つーかサーチお前何を!?」

ブーーーッ

 あ、出た。

 「ちょっと大丈夫…何かさらに噴き出してきたけど…」

 「サーチ!胸!胸!」

…あ。
しっかり密着・・してたの忘れてた。

 「…見るよりも直接のほうが強力だわな…」

うるさい。


ずりずり

「おい、サーチ…」

ずりずり

「さすがに…もうちょっとさあ…」

 「…何?」

 「引き摺って歩くのは…勘弁してやれよ…」

 「惚れた女の裸見られてしかも胸を押し付けてもらえて止めに引き摺ってもらえるんだから幸せでしょうよ」

 「いや、止めのあたりはいらないと思いますけど…」

 「じゃあエイミア運んであげてよ」

 「あ、はい…よいしょ」

 「ぐはあ!えほ!」

 「…バックブリーカーで運ぶの?」

(注!バックブリーカーとは。仰向け状態で担ぎ上げて背面反らしてダメージを与える。エイミアは肩に担ぐカナディアンバックブリーカーです)

最近エイミアの『力』が上がってきてるような…?

 「で?あったのか?」

 「たぶん…ていうか間違いないと思う」

そう言って私はリルにパンフレットを見せる。

 『ようこそアタシーへ!お泊まりは旅館「新琴館」へ!』

 「…間違いねえな」

 「…今度は琴がいっぱいあるんでしょうか?」

 「…間違いねえな」

…間違っててほしい。


きんこんかんこん♪

…戸を開けただけで琴かよ。

 「琴は琴でも鉄琴や木琴のほうですね…」

 「キレイな音…」

んー…こんな音だけなら癒されていいかも…。

……きんこん

 タッタッタ

…かんこん…

「…ぃらっしゃいませー!」

……きんこんかん!

うるせーよ!
ドップラー効果伴って琴鳴らすなよ!

 「ようこそ」

きんこん♪

「いらっしゃいました」

かんこん♪

「私がこの旅館の」

きんこん♪ 

「女将をしています」

かんこん♪

うぜえ。

 「キリアと…ああ!何で鉄琴をとっちゃうんですか!?」

 鉄琴じゃなくて火箸風鈴だよ!ていうか風鈴を頭に着けて出てくるな!

 「ああ…耳元で鉄琴の音が聞こえないと…プルプル」

うわ…手が震えだした…。この人鉄琴木琴中毒?

 「返して~返して~」

…。

 「返して~返して~返して~」

……。

 「返して~返して~返して~返して~返し」

 「あーー!わかりました!どうぞ!」

これもこれでうぜえ。

きんこん♪ 

「ふう、落ち着きました。ではこちらへどうぞ~」

かんこん♪

…。

 「サーチ…泊まる場所…失敗したな…」

まったくよ。

きんこんかんこん♪

「こちらです~」

……。

 「あの…鉄琴だらけなんですけど…」

きんこん♪

「あら?お気に召さなかったですか?」

 部屋の八割が鉄琴の部屋なんて嫌だよ!

かんこん♪

「でしたら木琴の部屋へ」

いやいや!そういう問題じゃありませんから!

 「あの、できれば静かなお部屋をお願いしたいんですが…」

エイミアが要望を出す。要望というより願望だが。

 「…はい…一番お安い部屋でよければ…」

…仕方ないか。少し奮発したかったけど。
エイミアを見て頷く。

 「それでお願いします」

きんこん♪ 

「わかりました~こちらへどうぞ~」

きんこんかんこんきんこんかんこんきんこんかんこんきんこんかんこん♪

…歩くといちいち鳴る火箸風鈴なんとかならないの!?

きんこんか♪

「こちらの部屋でよろしいですか?」

どれどれ…ほう!
 落ち着いた雰囲気!新しい井草の香り!そして…見事なオーシャンビュー!
これって高級旅館の特別室並みの豪華さよ!

 「なんでこんな立派な部屋が安いんですか?」

きんこん♪

「だって…一つも鉄琴木琴が無いんですよ?」

 無いほうがいいです!
…ん?ていうことは…。

 「さっきの部屋が一番高い部屋…?」

きんこん♪

「いーえー。先程の部屋は上から三番目・・・・・・です」

まだ上があるんかい!

きんこんかん♪

「でも何故か皆さん安いお部屋ばかりご希望なさるんですよね」

でしょうね。

かんこん♪

「それでは夕食までしばらくお寛ぎ下さいね」

きーんこんかー…ん…

学校のチャイムか。

 「…しばらく鉄琴は嫌だな…」

 同感。

 「でも見てくださいよ!すっごい綺麗な風景…!」

エイミアが窓を開けて身を乗り出している。

 「危ないわよ…でもキレイね~…これで一番安い部屋なら儲けモンだわ」

 「まったくだ…あ、そうだ。リディアは?」

あれ?どこやったっけ?

…かー…んこーん

 ガラッ

「すいません~お荷物と…落とし物ですね♪それでは」

ピシャッ

 きーんこんんん…

「リディアー?大丈夫かー?」

 「きーんこんかー…ん」

あ…一番最初の部屋に忘れてきたのね。

しばらくリディアは「きんこんかんこん」しか言わなかった。
あの部屋泊まったらこうなるのね…。


 「もうすぐ夕食ね…」

 「さすがに一番安い部屋だし…」

そこまで期待はできないか。

 「でもよ…こんなに眺めの良い部屋に安く泊まれたんだ、オレはそれだけで満足だな」

きんこんかんこん以外は…という呟きは聞こえた。

 「そうね…あとは温泉を楽しみましょ♪」

 「「さんせーい!」」

 「…オレは遠慮しとく」

そうね。
いい加減、命にかかわるわよ。

きーんこーん…♪

ガラッ

「お待たせしました。お食事の準備が整いましたのでどうぞ」

さて、ご飯食べましょ。


 「う…」

 「う…」

 「「「「うまーい!」」」」

ウソでしょ…!
 何このバカ美味い天ぷら…!

 「すげえ!この刺身…!何て鮮度だよ!私、感激したニャ!」

 「…ん~♪このお肉、口で蕩けて…♪味付けも最高♪」

 「わからねえ…!どうすればおひたしでここまで複雑に絡む濃厚な味を…!わからねえ…!」

いや…これは…!
 普通に王様が泊まる宿でしょ…!

それから全員おかわりの嵐となり。
…後から温泉に入れなくなるほど平らげた。

 仕方ないので次の日の朝に露天風呂を満喫し。
いよいよ暴風回廊ゲイルストームだ。

きんこんかんこん♪

「ありがとうございました~」

 「あの…おいくらで?」

 一番安くてオーシャンビューにあの料理…正直怖い。

きんこん♪

「はい…合計で銀貨5枚と銅貨11枚になります」

 「「「「はああああああああっっ!?」」」」

え、えっと…昨日泊まった普通の宿の半額以下!?

 「あの!間違ってないですよね…?」

 「…申し訳ないです。あの程度の・・・・・部屋と料理で高いですよね?」

 全員盛大に頭を振った。

 「「「「とんでもない!」」」」


 後から聞いたんだけど…。
 新琴館は一番安い部屋が一番人気で…なかなか泊まれないらしい。私達は運が良かったのだ。
ちなみに鉄琴木琴だらけの一番高い部屋は……常連がいるらしい。


たぶん…女将さんと同じで鉄琴木琴中毒なんだろう…。

 世の中は広い。
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