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も しもそんなことができるのなら
しおりを挟む一番近い蔵に辿り着いて、扉に手をかけた。
勿論の事、扉は開かない。
開かないことで、ここに瑠衣が居ると確信する。
「瑠衣!!大丈夫か!?」
声をかけても、何も聞こえない。
扉をがたがたと揺らし続けるも、全く揺らぐこともない。
木が軋む音だけが、己の鼓膜を支配する。
「くそっ」
木目を蹴り飛ばす。
すると。
カチッ―――
小さな金属音が耳に届いた。
ハッとして、息を止めて耳を澄ます。
チャリ、ともう一度、金属が触れ合う音がする。
見えない相手を威嚇すれば、向けられる殺気が、ぐんと増す。
瑠衣、瑠衣、瑠衣。
頼むから―――――無事で居てくれ。
チリチリと皮膚に触れる空気が――――痛い。
かちゃり――鯉口を切って、構える。
――――――来る。そう思った、刹那。
ガキィィィィィィン!!!!!
扉がいきなり開き、銀色の光が一閃した。
己の刀で支えれば、痺れるような感覚が腕に伝わってきた。
支えた力で受け流し、逆に相手をひきつける。
体勢を崩した相手に、斬り込む。
紅が、舞う。
己の身体を、濡らしていく。
血のその隙間に、瑠衣が縛られているのが視界の端に映った。
「瑠衣!!!」
叫びながら、相手を斬り捨てる。
―――取るに足らねぇ。
自分の中の鬼が、顔を出す。
斬る。刺す。突く。刀を振り上げる。ただひたすらに、その繰り返し。
心が、凍る。
血飛沫が俺を染めていく。
紅く、紅く。
どのくらいの時間が経ったのだろうか。
「――――っ」
倒れている屍に囲まれて、真っ赤な中に立ち竦む、息を荒げ刀を引っ提げた俺。
そして―――
「しん、さく………」
眼を見開いて涙を溜めて、此方を見据える、瑠衣。
ふらり、近寄っていく。
俺が近づくと、彼女はびくりと体を揺らす。
ああ。嫌われたな。そう、思った。
その瞬間。
「危ない――――……っ!!」
瑠衣の声とともに、己の方から紅が、舞った。
気づいて振り返れば、下に転がっていた人間が、俺に向かって斬りつけていた。
「――――いっ」
ズクリ、熱を持って痛み出す。
剝き出しだった刀を握りなおし、再度向かって来ようとする人間を、痛みを堪えて斬り捨てた。
ごろりと転がった有機物の塊に、瑠衣がひっと声を出す。
「っ、………」
肩を押さえて、瑠衣に近づく。
「しんさ、……」
泣き出しそうな顔をした彼女に、痛みを忘れて駆けだした。
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