唐紅の華びら

桜樹璃音

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と もだちのように肩を並べて

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次の日。しなくてはならないことを終えて、瑠衣の部屋に向かっていた。

途中、瑠衣が見ては喜んでいた花を摘んでいこうと思い立つ。
手折る時、瑠衣がどんな顔をするかな、などということばかりが脳裏に浮かんできて。

無駄に、テンションが上がったから、無意識のうちに早足になって。
そして、瑠衣のいる場所へ辿り着く。


「瑠衣」


いつものように、がらりと、扉を開いた。
けれど、いつもなら部屋の真ん中で膝を抱えている瑠衣は、何処にもいなくて。


ばらり、摘んできた花が畳に散らばる。
水気の無くなった茎は、しなりと歪んでいた。


おかしい。
直観的に、そう思う。


見つけろ。何かが、残って居るはず。


いつも、自分は瑠衣に言い聞かせていた。
もしも狙われるようなことがあれば、何か分かるようにしていけ、と。

じっと部屋を見る。
ふと、違和感を感じて、もう一度その場所を見た。


それは、食器などを閉まっている小さな戸棚。
いつもなら閉まっているはずの棚が、僅かに開いているのを見つける。


焦りに増してくる鼓動を深呼吸することで抑えようとする。

開いた先には、白い小さな紙。



「――――っ!?」



そこには、たどたどしい平仮名で書かれた、一文。




―――くらにいれられる、たすけて。





「――――っ、瑠衣!!!!」


駆けだす。この付近の蔵の場所を、脳裏で思い出す。

懸命に、近道を頭で探る。


だけど―――――瑠衣、瑠衣、瑠衣。
お前の笑顔しか―――ただそれだけしか、頭に浮かばない。


ひたすらに、走り続ける。



「畜生!!!」



俺は如何して―――何故、こんなにも弱い。

一番に護りたいものが、護れない。
こんな事で……世界を変えられるはずが無かろうが。


自分の不甲斐なさに、嫌気がさす。
護りたいものを作ってはいけない、そう思っていた。


だから、瑠衣は俺の所有物。いつだって此方から解放することができる、なんて。
そんなことを思っていた俺がちゃんちゃら可笑しい。


奪われて漸く気づいたんだ。
瑠衣は――――俺にとってなくてはならぬ存在だと。


なあ、馬鹿瑠衣。
俺は、お前に、お前の色に―――染まっちまったよ。


はは、と切れ切れの息で笑う。
汗が、口の中に入る。


酷く、塩辛い。



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