唐紅の華びら

き らいな人とも語り合えるのか

瑠衣は、俺の屋敷からほど近い場所に構えた小さな家に住むことになった。

必要なものを一緒に見繕う。
それですら、気持ちが高揚して。


「晋作、これは？」

「あー、いいんじゃないの」


こんな他愛のない会話が、時代の流れで疲れ切った俺を、癒してくれた。

軍議だって何だって、そのあとに瑠衣に会えると思えば、幾らだって乗り切れた。
がらりと古ぼけた扉を開けば、いつも瑠衣は俺を待っていた。


「るーい」


手招きすれば、直ぐによってくる。
かわいー……。

そんなことを思いながら、腕を掴んで。


「晋作？　――きゃ」


どさりと重力のままに倒し、直ぐに組み敷く。

瑠衣と身体を重ねる度に、満足感が身体中を支配する。


その感情は、最早、麻薬。
離れては、いられない。


「名前、呼べよ」

「え、っ―――む、むり、……っあ」

「呼べって、いってんだろ」

「しんさ、く―――」


ああ、壊したい。
俺の瑠衣。


白い肌を紅い印で穢すのも。
金色の髪を白く汚すのも。
全部、俺だけ。



だけど、世界は、こうしている間にも、回り続ける。






「畜生！！！！」


また、幕府軍にやられて、人が死んだ。
馬鹿かよ。何で分かんねぇんだよ。

もう幕府などと言っていたら、欧米諸国にやられてしまうと――――。
そうならぬように、俺は、新しい世界を創るって、松陰先生の下で―――そう決めたのに。


足掻いても、足掻いても。
この手から、世界は零れ落ちていく。

それが酷く、―――虚しくて。


「―――つまらねぇ」


己のものにならない世界に、いら立ちが募る。

だから、俺は。


「瑠衣」

「あ、晋作！」


くるくると表情の変わる此奴を。


「きゃ、や、め――――っ！」

「乱れろよ」

「や、ぁぁ、ああ！！」


心の底まで、俺の色に染めたいのだろう。


だけど、俺は気づかなかったんだ。
染めれば、―――此方も染まる。

そんな簡単な事実に。