唐紅の華びら

桜樹璃音

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し んじているものが同じなら

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その中で、俺は、あいつを手に入れる。


「高杉様、今までの無礼をお許しくださいますでしょうか」

「あ?」


無礼も何も、お前がしてきたことなんざ興味の欠片もないわ。
そう思ったが、一応口だけはほかのことを述べておく。


「ああ、まあ、色々あるだろうからな」


あー、馬鹿みてぇ。
口だけの関係なんか、止めちまいたいなぁ。


そう思って詰まんなそうにしていた俺の前に、きらりと。
金色の、光が映った。


「こちらを、高杉様に。変わった物がお好きなのでしょう?」


そう言って、引きずり出されたのは、一人の女。


此奴ら、くそだなー……。
人を物って言うなよなぁ。


そんなことを俺が思っている最中、どよめきが広間を包んだ。


金色の、透き通った髪に、真白な肌。
その唇は、着せられている唐紅の衣のように、燃えるように紅かった。


そして。


「顔を、あげろ」


ぐっと無理やりにあげられた顔には。


「っ」


純粋な水を湛えたような、深い深い蒼の双眸が。
じっと、俺を見つめていた。



「ほら、言え」

「――――高杉様、どうか、私を――貴方のものに、してください」


女は促されて、そう言葉を落とす。
その声は、思っていたよりも、低く掠れ、酷く艶っぽい。


「―――っ」


俺は、途端。
身体を滾る熱を憶えた。


は、やべ、……。
何をされている訳でもない、ただじっと見つめられているだけなのに。

一か所に、熱が集まる。
欲望で、胸が焼けそうになる。


そこから先は、よく憶えていない。




気づいたら。





「っ、は………」

「ん、や、やめて……」


腕の中に、あの女がいた。


見下ろせば、白い肌が俺を煽る。

月明かりに煌めく髪が、この世のものとは思えないほどに、美しくて。


息が、詰まる。
欲望が、膨れ上がる。そのまま、ぶつける。


「あ、っ……は」


掠れた喘ぎ声が、俺の余裕を奪っていく。
耐えきれなくて、ぐっと、腰を落とす。


「い、っ…………」


生理的な涙が、女の目じりから、つぅ、と零れて、艶やかな頬に添えている、俺の手にかかる。
冷たい感触に相反する彼女の中は、熱く、俺を包み込む。


「いた、っ………ouch……Rough is quit……Don’t do that………!」


思わず母国語が出たのだろうか。知らない言葉で泣きながら身を捩る女に、俺は。
ぞくり、―――より興奮する。


堪えようのない欲望に、突き動かされた身体は、終わりを知らない。



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