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第5章 本当の気持ち
第13話
しおりを挟む“お梅が、欲しい”
お梅さんを手に入れる為に、あんな事をした芹沢さん。嬉しそうに頬を染めるお梅さん。
一人の女を絶対に手に入れる為にしていい事ではない、と勿論思う。
けれど、それほどまでに、欲しいと求められている事が、少しだけ羨ましい。
きっと私は、求められることなどない。
土方歳三という男は、大事なものは作らない。決して。
だから、そんな風に、芹沢さんとお梅さんの様に、何に変えてもお互いの存在を手に入れようとする姿は、酷く、眩しい。
八木邸の方たちと一緒にご飯を食べ、挨拶をして、前川邸に戻る。
誰もいない廊下を歩き、部屋の襖をからりと開いて、そのまま布団へ向かった。
どさりと寝ころべば、ぼんやりと薄い暗闇に天井の木目が浮く。
歳三に、求められたい。そんな願いは、とっくに鍵をかけて心の奥底に仕舞いこんだ。
私が出来ることは、一緒に鬼になること。私が望んでもいい事は、同じ場所に立つこと。
ぐっと唇を噛み締める。歳三が、帰ってきたら、話そうと決めた。
話さなくていい想いなんて、無い。
その言葉が、じんわりと胸に沁みていた。
あの時はそんなことない、と思ったけれど、時間をかけて考えて何度もその台詞を噛み締めた。
結果、その通りだと、思った。
すぅ、と睡魔が私の頭を撫でる。ゆっくりと、目を瞑った。
蛤御門で、会津藩にいちゃもんを付けられて芹沢さんが、激昂して一喝する姿。
御花畑門を守り抜くみんなが着こむ、浅葱色。
ゆうらりと眠りにつく寸前に、そんな景色が脳裏を過った。
しゃらり、と音がしたけれど、私はそのまま、眠りへと引き込まれていった。
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