ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

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第4章 歴史と現実

第27話

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一般的にそれは、恋人や愛しい人に抱く感情と、それを伝える手段。

けれどそれは同時に、女だとか、護る対象に抱く愛情も含まれている気がする。

そして、残念ながら、歳三の想いは――きっと後者だということも。

だって、私は、やっぱりただの小姓。居候。

私は、同じ立場が、同じ目線が、同じ志が―――――喉から手が出るほどに欲しい。

涙が一粒、ころりと頬を転がった。笑いすぎて、涙腺が緩まっているせいにした。



「……あーあ、そうちゃんが笑わせるから、涙止まんなくなっちゃったじゃん」

「たまには泣くのだって、いい事だよ。……あ、そういえば、俺、為坊と遊ぶ約束してたんだった! じゃあ、璃桜ご飯づくりファイト!」



そう私に激励の言葉を残し、じゃーねー、と手を振りながら、そうちゃんは勝手場から退出した。

入れ替わるように、やってきたのは、今私が一番会いたくない人。



「璃桜」

「歳三」



さっきまでの雰囲気は何処かに消えて、いつも通り粋な立ち姿。

夕陽に照らされた鬼の副長様は、此方を見据えた。



「さっきは、悪かった」

「え……?」



その言葉に、心がパキンと割れたような気がした。どうして、私は謝られているの?

歳三の言葉で思い出したかのように、指が無意識のうちに唇をなぞる。



「おい、唇腫れるぞ」

「……っ」



貴方がそれを言うの。



「……歳三の所為なのに」

「あ?」

「何でもないっ」



あーあ、こんなことしたいわけじゃないのにな。

でもね、こうやって誤魔化してなければ、心が壊れてしまう。



「で、……何が、悪かった、なの」



全身全霊で作り出した平常心を気配に装備して尋ねれば、ぎゅっとその眉根に皺が入った。



「……最近、仕事忙しかったろ」

「うん」



何、その言い訳口調。もっと堂々と言ってよ。



「だから……まぁ、女をめっぽう遠ざけてた代償が来ちまってよ」



つまり、―――つまり。

貴方は、女なら誰でも良かったって、そういう事。

誰が目の前にいても、あんな風に。そう思って、頭が真っ白になった。





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