ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

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第4章 歴史と現実

第24話

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どうして、そんな苦しそうな顔をするの。



「…………わりぃ、無理だわ」



吐息の距離で囁いた艶やかな声の意味を考える暇もなく、そのまま、ぐっと体重をかけられる。

腕に閉じ込められたまま、押し倒された。

貴方の漆黒が、私の肩にかかる。私の亜麻色は、畳の上に投げ出される。

互いの瞳が、互いを映す。

もう、駄目だった。魔法にかけられたかのように、見つめ合い、吸い寄せられた私たちは、



―――――――そっと、唇を重ねる。



「……馬鹿野郎……」

「……とし、」

「黙れ、」

「んっ」



何度も、何度も、何度も。

繰り返し、触れ合う唇は、熱をもって、止まらない。



「…………おめぇの所為だかんな」



キスの合間の刹那に、そう囁きを落とした歳三の舌が、歯を割って私の口内を侵す。



「――――っ、は」



息が、出来ない。苦しい。心臓が、破裂しそう。脳みそが、溶けてしまいそう。

でも、それよりも、何よりも。

――――やめたく、ない。

この時間だけは、歳三が私だけを求めてくれているというその事実がぞくりと私の肌に、鳥肌を立たせる。

自身の欲深さに、恐ろしくなるけれど、自身の歓喜の感情に、目を背けられない。

こんな時間が、永遠に、続けばいいのに。

舌を絡め捕られて、自分の声とは思えない甘い声が漏れる。

歳三は、それを聴いて、ふ、と柔らかく笑った。



「……可愛く鳴けんじゃねえか」

「っ、は、…………とし、ぞ……」



涙でぼやけて、焦点すら合わない。そんな状態でその名を口にすれば、貴方は打って変わって優しい啄みを繰り返しながら、着物の襟に手をかけた。

露わになった首筋に、唇が移動する。



「……璃桜」



艶やかな音で、名を、呼ばれる。

不意に、記憶が、蘇る。



―――――――璃桜。



そう、呼ばれる夢。その奥に見えるのは―――――――




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