ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

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第4章 歴史と現実

第11話

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今度教えてもらおう。



「璃桜、どうすんの」



そうちゃんのせっつく声にはっと我に返る。
如何しよう。



「諦める、しかないよね……」

「そうだよなぁ、」



せっかくいい案だと思ったのになぁ、と呟く声に若干の罪悪感を覚える。



「ごめんね?」



そう言って部屋を出ようとした刹那。



「何してんだ」



低い声がした。

顔を上げるまでもなく誰だかわかる、その人は相変わらず眉根に皺を寄せて私たちを見ていた。



「おい、璃桜。おめぇさっさと行けよ」



行こうと思ったもん。

そう言い返そうとすれば、目を輝かせたそうちゃんに遮られた。



「いいところに!!!」

「は? おいちょ、総司!?」



歳三の反論などものともせず、そうちゃんにぐいと押されて、歳三とともに再度部屋に入れられた。



「なんなんだよおめぇら」

「……えと、」



これは、あれだろうか。

歳三に、着せてもらえと?



「璃桜が着物一人で着れないっていうんで、着せてあげてください」

「はぁ!?」

「いやぁ、その……大和屋は、女子どもに弱いって、そうちゃんからきいて…」



その一言ですべてを悟った副長様は、大きな溜息をついて、手を出した。



「ん」

「は?」

「……着せてほしいのかほしくねぇのか、どっちなんだよ、馬鹿。さっさとしろ。俺は暇じゃねぇんだ」



罵詈雑言を受けて、慌てて小袖と帯を差し出す。

受け取った歳三は、若干目をそらし。



「脱げ」

「……っ」

「心配すんな、おめぇ何かで欲情しねぇよ」



馬鹿じゃねぇのとでも言いたげに付け加えられた一言に、イラっとした。



「……余計なお世話」



パサリ袴を畳に落とす。

晒を解きながら、襦袢姿を肩にかける。



「……できたよ」

「おう」



声をかけた私に、小袖を渡してくる。



「肩から掛けて、前だけ合わせとけ」

「うん……」



急に漆黒の眼差しが真面目になり、何処か緊張してくる。




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