ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

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第4章 歴史と現実

第5話

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それなのに、こうやって優しくしてくれる。

本当に、ありがたいの。



「これで、元気出たよ、」



そうちゃん、平ちゃん。



「いつも、ありがとう」



にこりと、笑う。

心からの笑顔を、見せよう。
こうやって私のことを護ってくれる人がいるから。

だから、私も頑張らなきゃって、思えるの。

ううん、思えなくたって、何だって。
思わなきゃ、いけないの。



「今日のご飯は何かなっと……うげ! 璃桜、ニンジン!!!」



そうちゃんが鍋を覗き込んで、あからさまに嫌な顔をする。



「ニンジンくらい食えよ、餓鬼」



そう艶のある声が耳を掠める。



「歳三」

「大丈夫か、璃桜」

「うん」



二人がお饅頭をくれたことを伝えようと、歳三のほうへ向かう。



「……璃桜はやっぱり」



ぼそりと口を尖らせたそうちゃんが何かを呟いたけれど、聞き取れず。



「……?」



首をかしげて見せたけれど、次の瞬間には、にぱーと笑って。



「……土方さん、なんでここ来たんですか?」

「なんでもねぇよ。ただお茶が飲みたかっただけだ」

「またまた~。バレバレなんですよっと」

「わ」



どんっと背を押されて歳三の胸に飛び込む形になる。



「……っ、ぶねぇ、おいこら! 総司!!!」

「きゃー! 璃桜またね~!!!」



奇声をあげて去っていくそうちゃんを追いかける平ちゃんと歳三。

さっきまで心にあったもやもやは、跡形もなく消えていて。



「単純」



そう呟いて、お饅頭を頬張る。

甘さがじわりと口の中に広がって。

涙が、ころんと、滑り落ちる。

もう、泣かない。

これで、終わり。全部。

私は結局、自分が信じていることを信じることしかできないから。



「……あま」



餡子の甘さが、包み込んでくれますように。

私の苦いところを全部。

飲み込めるように。

ただ、ひたすら、そう願った。




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