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第3章 史実
第15話
しおりを挟む「唯一の計算外は、私を屯所に送れなかったことでしょ?」
「………」
無言だけど、交わる視線が、私の言葉を肯定していて。
また私は、ただの餓鬼だったわけだ。
歳三と出かけられることに、浮かれて、調子に乗って。
だけど、そんなうまい話があるわけないじゃない。
「さすが、………鬼の副長ね」
悔しくて、哀しくて、もう。
涙すら、出てこない。
ぐっと握りしめた拳に視線を落とせば、血まみれで。
何時ものように恐怖は湧いてこなかった。
だけど。
この血は、壬生浪士組の、手柄として扱われる。
そう思ったら、何だか、居た堪れなくなって、私と皆との間に、また壁を感じた。
遣る瀬無くなって、ふと、家と家の隙間から街に続く道に目をやれば、見知った顔が通りかかる。
可愛らしく笑うお鈴ちゃんと、その横にいるのは、愛次郎くん。
二人とも、幸せそうに、笑っていた。
対称的に、こんな仕打ちを受けてもまだ歳三のことが好きだと思ってしまう自分が、みじめで仕方なかった。
「………帰ろ」
「璃桜……」
申し訳なさそうに眉を下げるそうちゃんに、にへら、と笑って。
「大丈夫よ、仕方ないもの。ね、歳三」
「っ」
何なの。痛そうな顔しないでよ。
貴方の、せいなのに。
如何して歳三が、そんなに痛い顔をするの。
「京の治安は本日も壬生浪士組によって維持されました~」
きゃは、と生気のない笑い声を立てて、立ち上がる。
歩き出した私に目をくれながらも、冷静に指示を出す副長。
ああ、死体、このままだといけないもんね。
もうどうでもいい。
何も、知りたくない。
何も、ききたくない。
だけど。
「あーあ、言ってくれたら、いい子だったのになぁ」
ぽつり、本音が零れてしまって。
また、みじめになった。
すべて忘れてしまいたいほどに、色濃く、哀しみを感じた。
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